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聖地・エンジェリックハウル

アイが見つけた新たな手掛かり。

神殿の柱に刻まれた文字を解読する。

「どれどれ…… 」

取り敢えず一文字一文字書き取っていく。

どうやらこの異世界のことを指してるのではないか?


「先生? 」

「エンジェリック…… 」

「エンジェリック何ですか? 」

「ハウル…… エンジェリックハウル! 」

「おお! 」

二人が同時に驚く。


「それで先生。エンジェリックハウルって何なの? 」

アイは無邪気だ。それに対してタオは厳しい顔。まるで睨んでいるかのよう。

「恐らく異世界のことか? 神殿のことか? この地域のことか?

まだはっきりしないし誰がそう決めたかも知らないが我々は従うのみ。

エンジェリックハウル。

ここは聖地・エンジェリックハウルだ! 」


エンジェリックハウルか…… その名に一つ心当たりがある。

ただそれは決して楽園には相応しくない悪い印象がある。

ははは…… そんな生温いものではないか。

とにかく新発見が二つもあった。

墓の存在にしろ名前にしろこの世界の解明の手掛かりとなるだろう。


さあそんなことよりも早く祝杯を挙げるとしよう。

本来この世界に到着したらすぐに飲む干すべきものなのだから。

残りのメンバーを呼ぶ。

「おーい皆集まってくれ! 良いものがあるぞ。さあこっちに…… 」

生徒に浮かれ過ぎだと言った手前気を付けていたがやはりめでたいからな。


「やめろ! やめろって! 」

「ダメ! 絶対にダメ! 」

「うるさい! 大人しくしてろ! 」

不穏な空気を感じ取る。

一体何があったと言うんだ? どうも言い争いをしている。

これは急いで止めなければ大変なことになる。


「ダメだって! それ以上動かないで! 」

「黙れ! 黙れ! 黙れ! 」

「何を言ってるのカズト君? 」

どうやらカズトがまた何かやらかしたらしい。

異世界に来てまで一体何をやってるんだ?

ワイルドカズトの暴走がとまりそうにない。


「おいカズト何をやってる! ミホ先生を困らすなよな。ははは…… 」

さすがにふざけてるんだよな? 本気じゃないんだよな?

ふふふ……

不気味な笑い声。話からしてカズトだろうな。

ふふふ! ははは!

大笑いを続けるカズト。さすがに異様な雰囲気。

これは一体どういうことだ?


モヤで隠れていたカズトが見えた。

何と手には光るものが。

「やめろカズト! 」

「ダメよ。カズト君」

「ダメ! 」

イセタンもミホ先生もミルルも止められない。

「先生俺閉めてきますね」

戸締りでもしようと言うのか? 訳の分からないことを発するカズト。


「おい冗談だろ? それ以上はダメだ! 」

必死に止めようとするイセタンを振り切って扉へ一直線。

「カズト君馬鹿な真似はよしなさい! ダメよ絶対!

いけない早く元の方へ! 絶対にダメ! 」

ミホ先生絶叫。それでも届かない。


俺はただ茫然と見守るしかない。

何が起きたのか? どうしてこうなったのか? ちっとも理解できない。

理解が追い付かない。


「どいつもこいつもうるさいんだよ! 近づくんじゃねいぞ! 」

「早く戻して! お願い! 」

ミルルの悲壮な叫び。

「ははは! うるさいんだよ! もう遅い! 」

「なぜ? 」

「なぜだと? 」

「そうだぞカズト。今すぐ謝ってしまえ! 」

せっかくの異世界発見の快挙に水を差すような暴挙。


「先生は分かるよな? 」

「俺は…… お前を信じる! 」

「ははは! 馬鹿じゃないの? 」

「カズト君どうしてこんなこと? 」

「うるさい! お前らには分からないさ。なあそうだろ皆?

なぜかなど分からないだろ? 俺はこの瞬間を待ち望んでいたのさ」

もう元のやさしいカズトはいない。

もはや狂人。俺たちはカズトを甘く見過ぎていた。

どうなるか火を見るより明らか。奴の狙いは恐らく……

そこまでのバカだとは思わなかったがな。


「どう言うことだカズト? 」

「そう怒らないでくださいよ先生」

「ふざけるな! どう言うことだと聞いてるんだ! 」

もう怒鳴りつけて冷静さを取り戻させるしかない。

だがカズトは未だに反抗的な態度をとり続ける。


「聞いてるだろうがカズト! 」

「こう言うことだよ! 」

そう言うと全速力で向かって来る。

予期してない事態で体が動かない。

足も手も動かない。このまま奴の刃に餌食になるのか俺?


「何をしてるカズト? 」

「運が悪いですね。ちょうどいいところに立ってるんだもんな。

先生さようなら! 」


うおおお!

きゃああ!

悲鳴と怒号が鳴り響く。

パニック状態。


                  続く

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