皆で手をつないで異世界へ
光の道の終着点には扉が。
ついに異世界の扉は解き放たれた。
「ほらお前たち。手をつなげ」
「先生…… 」
「恥ずかしがってないで早くつなげ! 」
異世界に入る条件は揃っているはず…… いまいち自信はないが……
試すしかない。それで無理なら悔しいが諦めて帰る。
「先生と! 」
アイが左手を掴むと負けじとタオが右手を取る。
「ちなみに二人とも…… 」
耳元でこっそりと最終確認をする。
そうするとダブルビンタを喰らう羽目に。
「青井先生大丈夫ですか? 」
「ははは…… 教師とは因果な商売ですね。ちなみにミホ先生は…… 」
そこでストップ。
危ない。危ない。同じ過ちを繰り返して堪るか。
安全策として最年少のミルルを一番左に。正直なタオを一番右に。
ミルル、カズト、イセタン、ミホ先生、ミコ、アイ、サプロウタ、タオ。
この順番で手をつなぐ。
さあこれで準備は整ったぞ。
一つ深呼吸してから歩み出す。
「よし行くぞ。異世界へ! 」
「おお! 」
全員で一歩を踏み出す。
白い光の道を抜け扉を超えると。
それは…… 夢にまで見た異世界。
異世界であった。
出発してどれほどの日数がたっただろうか?
もう正直覚えてない。一週間だろうか? いや十日は過ぎたかと。
ようやく異世界にたどり着いた。
もう迷いも不安もない。
希望と夢を持って異世界へ。
異世界探索隊メンバー。
異世界探索部三名。
イセタン。カズト。ミコ。
タピオカ部二名。
タオ。アイ。
引率二名。
サプロウタ。ミホ。
その他一名。
ミルク。
以上合計八名。
異世界へ到達。
全員が一斉に喜びの声を上げる。
そして手を取り合って大はしゃぎ。
ミコが異世界到達の舞を披露する。
ミホ先生がつられて踊りだす。
そこにアイとタオが加わる。
ミルルが控えめに見守る。
「ほらミルルもおいでよ」
堪え切れずにミルルも踊りだす。
イセタンとカズトはやさしくハグ。
その光景さえ神々しく見えるのだから不思議なものだな。
「もう先生も! 何を浸ってるの? 」
「いやその…… 」
「何を照れてるんですか先生! 恥ずかしがらずに早く! 」
アイとタオに強引に引っ張られていく。
こうしていつまでもいつまでも踊り明かしたのだった。
と言うのは冗談で次へ進む。
異世界への一歩を踏み出したメンバー。
「あれー? 明るいよ」
アイが誰に言うでもなくつぶやく。
「本当だ! 」
「青井先生どう言うことでしょう? 」
ミホ先生はミコの長い舞から抜け出し辺りを見回す。
ようやく落ち着いたかな?
ミコはそれでも相変わらず舞い続けている。
もう好きなだけ舞わせておこう。
「異世界ですからね。こう言うこともあり得ますよ。
時差ってところですかね。
それともずっと明るいままで日が落ちることは永遠にないなんてことも…… 」
もちろん予測に過ぎない。すべて適当だ。
「それはあり得ません。異世界にだって太陽も月もあります。
ここは何と言っても地球ですから。
基本的には私たちの世界と変わりないと聞いています。
ですから今は昼なんでしょうね。この世界では」
「ミルルさん…… どこからそのような話を聞いたんですか? 」
ミホ先生が驚いた様子でミルルを問いただす。
まさかミルルがすべてを知ってるなどと言うことあり得るのか?
ミホ先生でなくても真っ先にその疑問が浮かぶ。
結局ミルルと言う存在がよく分からなくなっている。
偶然出会っただけの彼女。まさか知らず知らずのうちに導かれていたのか?
ミルルは一体何者なんだ? クルミの妹ではないのか?
あの爺さんの孫娘ではないと言うのか?
異世界にたどり着いた今ミルルへの疑念が深まる。
初めからおかしかなところがあった。
一緒に船に乗り旧東境村に行こうとしたのも今思えば不自然だ。
クルミに気付かれないようにと言うのも今考えればおかしい。
出会ったその日からどうも変だったミルル。
ミルルなどと言うおかしな呼び方で誤魔化されてた気がする。
それもすべて俺たちが親しみを込めて勝手に…… 原因は俺たちにある。
ミルル…… 君は本当に何者なのだ?
おっとどうでもいいか。敵でなければ何の問題もない。
異世界にたどり着いた今すべてどうでもいいこと。
ミホ先生とのこともアイの告白の件もイセタンの耳から来る体調不良も。
カズトの異常性もアークニンの策略も。すべて過ぎたこと。
もう元の世界である過去を捨て異世界である今を生きるべきだ。
続く