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試行錯誤の果てに

あと少しのところで足踏み。

イセタンを犠牲にしてまで鏡の前まで来たのに。

肝心の異世界への行き方が分からない。

まさかここではないのか?

刻々と過ぎていき焦りが見え始めたメンバーたち。


ミルルが何か言いたそうに頻りに俺の顔を見る。まだ決心がつかないようだ。

困ったな…… こんな時に出し惜しみする気か?

「このままではここで夜を明かすことになるんだぞ。いいのかそれでも? 」

ミルルを責められないので皆に強く訴える。


野宿は誰しも嫌だろう。特にこんな化け物がウヨウヨしてるようなところでは。

オチオチ寝ていられない。いくら見張りをつけてもそれは変わらない。

落ち着いたところでぐっすり寝たいよ。

だからと言う訳ではないが今こそ異世界の扉を開くべきだろう。

異世界がどんなところか知らないがここよりはましだと思いたい。


「青井先生…… この際ですから溶かしてしまいましょう」

ミホ先生の提案はユニークで面白い。

叩いて割れないなら溶かしてみる。うん悪くない発想だ。

「それはいいアイディアですね。さっそくやってみますか」

ごそごそとバックパックから道具を取り出す振りをしてミルルの言葉を待つ。


もちろん鏡を溶かすような危険な代物は持ってきていない。

思いつくのは酸ぐらいだがまさか誰か持ってたりするのか?

それと身近なものではライターか?

俺はタバコを吸わないので持ち歩くことないが異世界探索には欠かせないもの。

こんなこともあろうかと胸ポケットに忍ばせてある。


ただライターで炙ったぐらいで鏡って溶けるっけ?

そもそも草木にでも燃え移ったら後が大変だ。

酸にしろライターにしろ使うつもりはない。

あくまでこれはミルルから話を聞くための道具。

そのミルルに焦りが見え始めた。


「あの…… 青井さん…… 」

ほら堪らずに告白しようとする。

「もう君はわが隊の一員だ。隊長と呼んでくれ」

「それでは隊長。恐らくあの鏡は溶けないと思いますよ」

自信なさげに意見を述べる。


「それはなぜだい? 」

「なぜってそれは…… 島中の鏡は耐熱性で熱に強く作られているんです。

だからこの鏡も恐らく同じかと……

もちろん冷やしたり凍らせたりしても意味がありません。

ここの鏡は特に頑丈に作られているかと。

少しの温度変化でどうにかなるようなものではないのです。

今は無駄なことに時間を割くべきではないかと」

静観せずに情報提供してくれたことは感謝する。

だがこれは島の者なら誰でも知ってること。

もっと重要な極秘情報を握っている気がするんだよな。


「ではどうすればいいと? 」

もうここはミルルに頼るしかない。

それでダメなら今日はここまで。ここで大人しく野宿することにしよう。嫌だが。

「さあ。それは私にも…… そうだ固定されてるって言ってましたよね? 」

「ああそうだ。何か思い当たることがあるのか? 」

首を振るミルル。

どうやら出し惜しみはしてないらしい。

ただ単純に地元の者の方が何かと詳しく閃きやすいだけなのかもな。

我々だけでは一生たどり着かない答えを導き出すことも。

それがミルルに期待する役割。


「隊長の感触ではどうでしょう? 」

「感触か…… まったく動かなかったよ。今の我々の力ではどうすることも……

それこそあの化け物に協力してもらうぐらいだが無理だろう」

我々を捕食する化け物ならこの固定されたものだって簡単に動かせるはず。


午後六時過ぎ。

日が暮れ始める。

三十分もしないうちにこの一帯は闇に沈む。

急がなくてはならない。

「何か…… 何かないか? 」

皆を順に見渡すが誰も目線を合わせようとしない。

まったくこんな時に人任せとは何を考えてる?

俺はただの英語教師だから当然万能な訳でもない。


「だから先生! やっぱり溶かそうよ」

アイとタオがミホ先生の案を再度提案する。

「だからそれは無理だってミルルが…… 」

「やってみなければ分からないでしょう? 」

強気の二人。何か根拠みたいなものがあるのか?

「なぜそう思う? 」

「面白そうだから。悪い? 」

ダメだこれは。頭が痛くなりそう。


「却下! 他にはないのか? 誰か思いつく者は? 」

「いっそのこと全員で突っ込んでみると言うのはどうでしょう? 」

やけくそワイルドカズト。強行策で場をかき乱す。

大した理論に基づかない投げやりの提案になど付き合ってられるか。

もう本当に時間がないんだぞ?


試行錯誤するも解決策が見当たらない。


                続く

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