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視線! 怪物ではない何か

俺としたことが帰り道を示していなかった。間抜けにも何の目印も残さなかった。

失態だ。これは探索隊としてはあまりに愚かな行為だ。

音につられてそこまで気が回らなかった。

大体下など見てるはずがない。常に上を警戒していたのだから。

もちろんすべて隊長の俺の責任だ。考えが甘かった。

もはや戻るに戻れない状況。その状況を作ったのは紛れもない俺。

生徒たちに責任はない。


「そうですか…… 分かりました。私も異世界探索隊の一員です。

とっておきの秘密をお教えしますね。これは祖父から教わったことです。

恐らく旧東境村でもごく限られた者にしか知られてないはずです」

おおトップシークレットって奴だな。

どうやらミルルはここに来てようやく我々を信頼してくれたらしい。

純粋にうれしい。信じてくれたことが何よりうれしい。


「ミルル…… 君は何を? とにかくありがとう。感謝するよ」

「今青井さんが手当てに使ったフンは万能薬で何にでも効きますし役に立ちます」

「確か集落のばあちゃんがそんなこと言ってたような…… 」

「はい。昨夜のおかずのように食べれば元気で健康的に。

薬として使えばたちまちよくなると言われる優れもの。

自然なものは高く売れますし獣たちにも有効です。

それからたいまつとしても使えます。ほら一つ燃やしてみてください」

どうも疑わしいがとにかくミルルの言う通りにしてみる。

ただの嫌がらせな訳ないしな。


着火!

この着火音が堪らないんだよな。癖になる。

「ほら明るいでしょう? 」

「ああ本当だ? 明るい。明るいな。夜にはもってこいだ」

時刻は三時を回った。

あと三時間もしないうちに辺りは闇へと変わるだろう。

第二ゾーンが第一ゾーンと同様であればだが。果たしてどうだろう?


「それでミルルさん。これが何か? 」

ミホ先生の疑問に素早く答えてやるミルル。

「フンを燃やしたいまつとして使えば化け物は近づいてきません。

もちろん獣たちも火を恐れて手出しできません」

フンは万能薬なのはこう言う面もあるのだろうな。


「でもどうして? 」

ミホ先生の追及が止まらない。

困惑するミルル。

「実は私にもよく分からないんです。これについては祖父が教えてくれたので。

実際に試したことがなかったものですから」

ミルルは旧東境村に行くことを想定して幼い頃からいろいろ教わったのだろう。

その都度思い出し教えてくれているらしい。ちょっぴり不安だけどいい案内役だ。

余計なことを教えないところも気に入った。


ふふふ…… これなら俺の恋人にしても問題ないだろう。

おっと…… 俺は何を考えてるんだ? これはもちろん冗談だ。


「分かった。ありがとう。これで邪魔者は居なくなる訳だ。

よし試しにやってみよう」

うん何だ? 変な視線を感じるぞ。

もしかしてミホ先生の厳しい目? 

タオの美しい瞳?

アイの睨む顔?

カズトの冷たい視線?

どれも感じない訳ではないがそれとは違う。

違う。もっとこう野性的な激しい何か。

どう言えばいいかよく分からないがとても嫌な予感がする。


ガサガサ

ガサガサ

何かがいる? 音が近づいてくる。

こちらへ向かって来るぞ。

一体何が? 何が迫ってると言うんだ?

黒い全身を輝かせ突進してくる謎の生物。

恐らく戦い慣れた今までの怪物ではないだろうな。独特のオーラを放つ何か。


ついに正体を現した。

黒ずんだように見えたが実際は黄色か?

これは…… トラ? トラだ!

トラが襲ってくる。


今さっき消したたいまつでは効果がない。

急いで火を着けようとするが焦ってうまく行かない。

焦り過ぎてライターを落としてしまう始末。

もう火をつけている暇はない。

どうする? どうする? どうすればいいんだ?

もはやパニック。

どんなに早く逃げようとも奴は追いつくに違いない。

追いかけっこをして体力がなくなったところで捕らえる算段だろう。

だがそうは行かないぞ。

まったく情けない。人間とトラとでは勝負にならない。

スピードが全然違うのだ。

ロックオンされたらもうお終いだ。


「うおおお! 」

大声で威嚇。トラにも多少効果があったようだ。

一旦ひるみ立ち止まったところで手に持っていた鏡を向ける。

これでトラが驚いて逃げてくれればいいのだが。


果たしてトラ退治は成功するか?


             続く

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