自滅! 窮地のサプロウタ
もはやミルルは異世界探索隊のメンバー。大事な大事な仲間。
落ち着いたのかどうにか泣き止むとぽつぽつと語りだす。
「確かに私は旧東境村に行きたいと心から強く願いました。
それを叶えてくれた皆さんには本当に感謝しています。
ですが私には使命が……
地元の者はよそ者を異世界から遠ざけるよう幼い頃からそう教育されています。
それは皆さんここに来て実感してるかと思いますが…… 」
「ああ…… あれね。あの執拗な嫌がらせはそう言うことだったのか?
安眠を妨害するあれだろ? 困るよなまったくははは…… なあ二人とも? 」
イセタンとカズトに同意を求める。
ミホ先生の報告からも女性陣はそのような悪質な嫌がらせ等を受けてないと聞く。
どう言う理屈か俺たちがターゲットになっている。
俺たちと言うか二人だが。
「いえそんな記憶は特に…… 」
忘れているようだ。
おいおいよく思い出せっての! とても重要なことだぞ。
「ああ部長の言う通りだ。何もなかったと思うぜ」
カズトまで否定しやがった。
二人は裏切った? いや違う。気づいてないのだ?
その分を俺が受け止めたからな。
まったく俺の苦労も知らないで呑気な奴らだ。
「先生何それ? 怪しい」
アイの追及。
「ははは…… 何を言い出すのかなアイちゃんは? 」
「ホラ怪しい! 」
バカなくせにそう言うところは鋭いんだよな。嫌になるぜ。
「いや違うって…… ねえミホ先生」
「私も初めて聞きますが! 」
ご立腹のミホ先生。何をそんなに怒っているんだ?
これはまずい。頼る相手を間違えた。いや理解してくれる奴などここにはいない。
夜は疲れて寝てるからな。暗闘していたのは俺一人と言う現実。本当に苦労する。
「おいタオ…… 」
唯一の味方のタオ。いつも言うことを聞いてくれる真面目な生徒。
「自滅ですね。先生」
呑気なこと言ってないで助けてくれよな。
どんどん立場が危うくなっていく。
もしかして追い詰められてるのか俺?
「ごめんなさい。何も言えなくて……
それにこんなことにまでなってしまって…… 」
申し訳なさそうに俯くミルル。そして再び語りだす。
「幼い頃から行ってみたいと言う願望が。
でもそこはものすごく恐ろしいところだから決して近づくなと。
それでもどうしても行くようなことがあれば屋敷に留まれと。
第二ゾーン以上には絶対行ってはダメだって。
小さい頃から祖父に口を酸っぱくそう何度も何度も言われてる。
化け物が出ると脅かされて育ったの。もう怖くて怖くて。
その話をする祖父もそれはもう怖くて怖くて」
そう言って思い出したようにガタガタ震えるミルル。
「もうここは第二ゾーン。そうかミルルは嫌がっていたんだね。
それを俺たちが強引に? 」
「違う! そうじゃないの! 私の話をよく聞いて。
今まで異世界に行けた者は二組と言われている。
あなたが大事にしてるその紙束。
それは恐らく初めて異世界を発見した者によって書かれた地図だと思うの。
今考えればそれを頼りに少し前にも異世界を発見したであろう者が。
でも結局二組とも未だに行方不明。
その地図が本物なら最初の人は違う扉から元の世界へ戻った。
これはすべて私の勝手な想像に過ぎないので否定して構いません。
当然そのどちらも渡しに乗ってここ旧東境村へ。
そして決して他言してはならない秘密まで。その一つが耳の異常なんです」
覚えがある。激しい夜が過ぎ朝を迎えると耳が聞こえ辛くなることがあった。
それ以前に港付近になると急に我を失うことが何度か。
体に異常を来してるのは間違いない。
「絶対他言してはいけない秘密? まさかそれを我々に教えてくれるのかい? 」
それは願ってもないこと。
ミルルの気が変わらぬうちに聞き出すべき。
「でも本当にいいのミルル? 」
タオがよく考えるように忠告。
おいおい何を決心を鈍らすようなことを?
今は揺さぶらずにただ耳を傾けていればいいんだ。
「うん。無理しない方が絶対にいいって! 」
アイは適当だ。これは何も考えてないな。
なぜ思い留まらせるようなことをするんだ? もう訳が分からない。
「それは私だって教えてもらいたいですけどね…… 」
ミホ先生までもが慎重だ。いや今はそんな時ではないはず。
どんな情報でも得るに越したことはない。それが分かってるくせに足踏み状態。
困ったな……
続く