ミルルの気持ち
怪物が二匹同時に襲来。
イセタンとカズトが抜け戦力ダウンのところに二匹ではさすがに辛い。
危うく全滅するところだった。
だがどうにか怪物を消滅させることに成功。
危機は脱した。
これで二回目なのでもう皆慣れてきたのか落ち着いて対処している。
化け物の倒し方もコツを掴んできたようで安心して任せられるように。
だが集団でできたことが個人でできるかと言うとそれは違う。
決して集団を離れてはいけない。迷子はここでは命取りだ。
「痛たたた…… 」
「どうしました青井先生? 」
異変を察知する能力に長けたミホ先生。心配そうにこちらを見るので首を振る。
「ははは…… 大丈夫。大丈夫。ただのかすり傷ですから心配いりません」
一度では消滅できずに逃げ出そうとした際に化け物が迫って来た。
その時につい慌てて鏡を落としてしまった。
どうやらその時に鏡で擦ってしまったらしい。
血が少し噴き出たのでミホ先生に診てもらう。
「これで大丈夫ですよ」
うん問題なく先に進めそうだ。
今一つ分かったことがある。
こいつらを消滅させるには少なくても三枚の鏡が必要。
一人で二枚使用できたとしてもなるべく人数は多いほうがいい。
集団で襲って来たらお終いだからな。
ただそれほど仲間意識がある訳ではないので群れることもなくバラバラ。
そこだけでも助かっている。
問題は例外もあると言うこと。余裕はないだろうな。
再びミルルの様子がおかしい。
戦いに嫌気がさしたとも見えるがどうだろう?
オキシドールと絆創膏で処置してもらいこれで問題ないよな。
ただのかすり傷だしな。
「待ってください! 」
もう我慢できないとミルルは懺悔する。
「ミルルどうしたの? 先生なら大丈夫だって」
呑気なアイ。何も気にしてない?
「青井さんごめんなさい! 」
「どういう意味だミルル? 」
「私はあなた方を見捨てようとしてた。でもそれはできない」
相当真剣な表情のミルル。一体何を言ってるのだろう?
「済んだことだから大丈夫だよミルル」
「聞いてください! 」
「ミルル…… どうしたんだ君は…… 」
驚きつつ先を促す。
「青井さん。あなたの傷は浅い。
でもあと三十分もすればそこから徐々に腐っていく。
放っておけば間違えなく命を落とします。
たとえ傷口を丁寧に洗い消毒したとしても」
ミルルは俺の傷が化け物によるものだと勘違いしてるらしい。
これはただの鏡で擦っただけなんだけどな。
「だったらどうしろと? 」
どうやら化け物に触れるとそこから腐っていくそう。
何て恐ろしい…… ミルルがいなかったら命を落としていたかもしれない。
そう言う意味でミルルは命の恩人だろうな。
「簡単なこと。あなた方が持っているフンを火で溶かし患部に塗ればいいんです」
「ははは…… ミルル大丈夫だって。誰も奴に触れてない」
「済みません…… 俺は少し触れたかも…… 」
「待ってくれ! 俺だって! 」
見ていたがそんなことはなかった。
イセタンもカズトも距離が離れていた。
それなのに感じるということは恐怖でおかしくなっているのだろう。
何にせよまだ余裕がある。好きなようにすればいいさ。
ただしこれ以上パニックを起こすな。
ミホ先生が診て回る。
俺も不安になったので傷口に塗ってもらう。
これで安心だ。
「これで一時間もすれば何の問題もなく傷跡もきれいに消えるはずです」
「ありがとうミルル」
ミルルの告白で一度はパニックになりかけたが皆感謝してるようだ。
「ごめんなさい! 私どうしても言いづらくて」
感情が爆発したミルルはなぜか俺に抱き着いて涙を流す。
「まあ過ぎたことさ。気にすることじゃない」
一番詳しいミルルを失えない。
でもなぜ黙っていたのだろう?
まさかまだ俺たちを信用してないのか?
「ごめんなさい! ごめんなさい! 」
落ち着いたと思ったらこうだからな。一体どうしてしまったんだろう?
ミルルの今の気持ちを聞いてみる。
「なぜ黙っていようなどと? 仲間じゃないか? 」
もはやミルルは異世界探索隊のメンバー。大事な大事な仲間。
泣き止むとようやく話してくれた。
続く