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おかしな現象

第二ゾーン(デンジャラスゾーン)

時刻は午後一時過ぎ。

今日中に第三ゾーンまで行ければ良いが。

あまり生徒たちに無理はさせられないしな……

ミラーロードを抜けここからが本番。


「いいか気をつけろ! 上空には特に注意しろ! 

いつ化け物が襲ってくるか…… 」

そう言ってる間にも遠くの方で化け物の鳴き声がする。

危ない危ない。もう少しで遭遇するところだった。

大丈夫こっちには気づいてないはず。命拾いしたな。

第二ゾーンに入って早々にあの怪物を感じることになるとは。

覚悟はできていたがいざ本番となると膝が震えて仕方がない。


ふう…… 一息吐いたか吐かないかしたところで見つかってしまう。

さっそくお出ましか。あーあ嫌になる。もう二度と会うつもりはなかったのに。

全員に鏡を用意させ化け物の攻撃に備える。

急降下する翼の生えたおなじみの化け物。

先日見た物体とよく似ている。

違うところと言えばオレンジっぽい体ぐらいなものか。


「よし落ち着けよ! 列を乱さずに慎重に。いいか? 鏡を一斉に向けるんだぞ。

今だ! 急げ! 早くしろ! 」

正面から襲い掛かる未知の化け物に向けて横一列で鏡を向ける。


うぎゃああ!

うぐぐぐ!

鏡の威力で動きを封じられる。

あと少し。あともうちょっと。

ここで油断してはダメだ。

二分近くをかけてようやく化け物を消滅させる。


これが正しい化け物への対処法。

焦らず狙いを定めれば怖くない。

ただ複数で同時にやるのがポイントだから脱落者を出さないことが大事。

隊がバラバラになった時が一番危険。

さすがに一人では化け物に対峙できない。

どんなに度胸が有ろうともその選択肢をしてはいけない。

結局我々はお互いに助け合って生きて行くしかないのだ。


ふう危なかったな。少しの間とは言えかなり疲れた。

精神的にも肉体的にも辛くきつい。

疲労が蓄積されて行くのが実感できる。

それは生徒も同様だろう。


あああ!

ミホ先生が卒倒しそうになる。

遭遇は当然のことながら見たこともなかった女性陣は完全に後悔してるようだ。

だがもちろんもう遅い。退路は断った。もう逃げ帰るのは不可能。

門番があれだけ念を押したのだからそこで気づくべきだったな。


「先生! 」

「大丈夫だ! 」

震える足をどうにか動かし次に備える。

あいつらもきっと……

イセタンとカズトにも一声かける。

「おい! どうした? 二人ともしっかりしろ! 怪我でもしたか? 」

震えるばかりで何でもないと首を振る二人。どうも様子がおかしい。

何があった? こんな時に隠し立てしてどうする? 急いで対応しなくては。


「おい二人とも? 一体どうしたんだ? イセタン! カズト! 」

強く訴えかけてもダメのようで反応がない。

一体何があったと言うんだ? 何が……


意を決してイセタンが口を開く。

「先生! 聞こえるんです! うわあああ! 」

「聞こえる? 何も聞こえんが? 」

どうしたんだ? 恐怖のあまりおかしくなって幻聴でも聞こえてきたか?

「聞こえるんです! 」

強く訴えかけるのはいいがそれではまったく伝わらない。


「おいおいそれだけで分かるか! もっとはっきり言ってくれ! 」

「声が聞こえるんです。呼んでる…… 俺たちを呼んでるんです」

訝しんでそうなのかと問うと頷く。

カズトも同じらしい。

おかしな現象もあったものだ。俺にはまったく信じられないよ。

「そうだぜ。この強烈なのが分からないのかよ先生? 」

二人は悩んでいたらしい。うーんどうも信じられないがな。

二人がからかってるようにも見えない。第一そんな暇なことする意味がない。


「いやまったく聞こえん! 済まないな二人とも」

気持ちを理解してやれないのは辛い。

「うおおお! 苦しい! 」

「誰だ? 何だ? 」

おかしくなってしまった二人。

「おいお前ら! 」

呼びかけても反応しない。

ただ妄想に取りつかれてしまっている。


「先生嫌だ! やめて! 」

「痛いよ! 痛ええよ! 」

どんどん悪化していく。もう見ていられないほど。

だが俺にはどうしてやることもできない。

ただ見守るぐらいしかない。早く収まらないとこのままでは大変なことになる。

「どうした? おい大丈夫か? 」

だがやはり呼びかけに応じない。


その様子を見ていたミルルの表情が強張る。

何か知ってるようだがどうも話したくないらしい。

無理に話せとは言わない。でも手遅れになる前に告白してもらいたいものだ。


                続く



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