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灰色の果実

<異世界探索編>

第三ゾーンへの鍵を手に入れ第二ゾーンの合言葉も分かった。

これでもう準備万端。

ついに異世界探索隊動き出す!


「お待ちください! 」

鏡子が息を切らし追いかけてきた。

どうやらお見送りをしてくれるらしい。

「唄子様よりお言葉を預かっております」

「ああ鏡子さん…… 」


『もう戻れぬものと思え! お主らで楽園を築きあげるのじゃ! 

お主らは選ばれし者であり許されし者。恐れずに進むがいい(だよ)』

唄子様よりありがたいお言葉を頂戴した。


この島の支配者から異世界探索のお墨付きを得た。

これで少しは勇気が出ると言うものだ。

我々は間違っていなかった。やってきたことは否定されるものではない。


「ありがとうございます。唄子様にもよろしくお伝えください」

「はい。それでこれは私から…… ミルクも行くんだ? 」

「うん。私も立派な異世界探索隊だから。鏡子ちゃんも元気で」

二人は抱き合う。


「失礼しました。これは私からです」

そう言うと小袋から強烈な臭いがする物体を取り出す。

女性陣に手渡されていく。

「俺たちは? 」

我慢できずにカズトが騒ぎ立てる。

「申し訳ありません。五個しか用意できなかったもので」

「それでこれは一体何ですか? 」

「これはこの島で収穫された果実です」


「うわああ! 」

腐ったような臭いと灰色の不気味さにアイとタオが騒ぎだす。

「ちょっと失礼ですよ…… くさ! 」

あの上品なミホ先生も我慢できずに叫んでしまう。


「これは失礼しました。もちろん食べられません。

この島で取れた果実はこんな風に灰色で腐ってしまうんです。

島の者は『灰色の果実』などと呼んでいます。

気休めでしかありませんが化け物との遭遇が減ると言われています。

どうぞお守り代わりにお持ちください」


こうして灰色の果実をゲット。

ポケットに忍ばせるといいそうだ。


「それで俺たちには? 」

カズトが催促する。恥ずかしいなもう……

「ほら皆さん」

鏡子が促すと女性陣が何かを取り出し始めた。

何だ一体? 俺たちに秘密にしていたことがあるらしい。

とても恥ずかしそうだ。


鏡島での思い出。

彫刻教室。

鏡子に散々連れ回された挙句最後に連れてこられたのがここ。

「これをどうぞ」

彫刻刀を渡される。

「鏡子ちゃんこれって…… 」

「皆さん異世界を目指してるんですよね? 」

「はい! 」

「でしたら今渡す木片で顔を彫ってください。道中の安全を祈願するものです。

この島での思い出にもなりますから。それでは先生お願いします」

有無を言わせない鏡子。専門家の指導のもと人形作り開始。


「では注意事項です。強い思いや念をのせ彫るものなので自分ではなく異性を。

思い人を念じて彫ってくださいね」

「だったら私先生! 」

「抜け駆けはずるいよタオ! 」

「そうです。青井先生は私が! 」

揉めに揉める。お互い譲れないそうだ。


「あれ…… ミコちゃんもうできたの? 」

三人が言い争いしてる間にミコが完成させてしまう。迷いもなく素早い。

「うん。先生の顔。似てるかな? 」

いつになくご機嫌なミコ。


「嘘…… だったら私も! 」

「ちょっと待って。彫る相手を決めましょう」

ミホ先生が仕切る。

「ごめんなさい。タオさんはイセタン君をお願い。

部長同志。多少の縁があるでしょう? 」

「そんな私…… 」

「お願いね! 」

「ハイ…… 分かりました」

渋々了承するタオ。

「ミルルさんはカズト君をお願い」

「いいですよ」

ミルルは大して思い入れがないので素直に従う。


「ミルルさんならカズト君も大喜びするでしょう。

それで私は仕方ないので青井先生にしますか」

「うわミホ先生ずるい! 」

タオは納得いってないようだ。

「ほら静かに。けがをしますよ」

騒がしいので注意される三名。

もうミルルも完成したらしい。


「先生は何を作ってるんですか? 」

「子供たちに頼まれてヒトデを彫ってるんですよ」

「だったら私も! 」

アイが叫ぶと釣られて皆もヒトデ作りを始める。

こうして秘密の工作を終える。


現在。

「先生これを! 」

「受け取ってください青井先生! 」

「アイもあげるよ! 」 

「何だこれ? 呪いか何かか? しかも三個も」

うわまずい…… つい本音が…… 何だこの重苦しい雰囲気は?

「冗談。冗談。ありがとうミコ。ミホ先生も。アイも。嬉しいよ」

ふう危ない危ない。俺の人間性が疑われるところだった。

しかしプレゼントもらうのは…… ああ三ヵ月ぶりか。


「えへへへ…… 」

タオとミルルが二人にプレゼント。

しかし二人ともだらしないな。一言もなく笑ってるだけとは。

まあこんなものか。


少々重いし荷物にもなるが大事にポケットに入れておこう。


「では鏡子さん。お元気で」

「はい。お気をつけて! 」

「忘れ物はないな? よし出発だ! 」

「おお! 」


こうして鏡子に見送られながら第二ゾーンへ。

異世界探索隊は再び旅立つ。


                続く

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