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合言葉を知る者

「ちょっと…… ちょっと待ってくれよ! 」

「ハイ何か? 」

「本当に? 本当に俺は帰れるんだな? 」

「しつこい! 何度も言わせないでよおじさん! 」

常に失礼な態度のアイ。この男にはちょうどいいか。


「俺だって故郷に帰りたいんだ。でも誰も教えてはくれない。

ここの生活はそれは悪くないさ。館に行けば選び放題。遊び放題だ。

だが外にはとんでもない化け物がうろつく恐ろしいところでもある訳だ。

おちおち寝てられもしねえ。昨日だって目撃したぜ」


生き残りのくせにその程度のことで恐れるなよな。

第一ゾーンにいればまず心配はないはず。

昨日の衝撃は俺も忘れられないし消えない記憶として刻まれているだろう。

それはカズトもイセタンも。だから気持ちは分かる。

しかし昨日のは稀な出来事で第一ゾーンにいる分には恐らく問題ないはず。


「先生…… 」

イセタンとカズトが震えている。うわ…… 思い出させやがって。

もし恐怖が伝染したらどうする? 

最悪なのは何も知らないミホ先生たちに真実が知れ渡ること。

ここはどうにかごまかすしかない。まったく骨が折れるぜ。

「大丈夫。大丈夫だ。気にするな。もう忘れろ! 」

励ましてどうにか忘れさせる。

自分も冷静に冷静にと落ち着かせようとするがうまくいかない。

まだ目撃も遭遇もしてない女性陣はキャアーとふざけられるだけの余裕がある。


「お願いですから協力してください。

そうすればすぐにでも帰り方をお教えしますから」

船がいつ来るかは大体分かってるつもりだ。鏡子に頼んだっていい。

「恩に着るぜ先生」

いつの間にか先生呼び。

俺は生徒たちの先生であって得体のしれないこの男の先生ではない。


「正確な情報をお教えします。ですが一つだけ懸念事項が。

この島の者が果たして見逃してくれるでしょうか?

そこまでは責任は持てませんよ」

一応は忠告した。もし万が一失敗して捕まっても我々を恨んではいけない。

さすがに見張りがついてるとは思えないが。

「分かってるって。そこまでしてくれれば文句ない。あとは隙を突けばいい」

「付け加えるとイントが十枚必要になります。ご用意できますか? 」

「承知した。よし協力してやる。何でも聞いてこいってまた…… 」

再びミコが舞を披露。

喜びを表現するために踊り狂う。

さすがにこれ以上は危険なのでミホ先生がストップさせる。


生徒たちには知られたくないこともある。一人で男と対峙する。

皆には奥の休憩室で休んでいてもらうことに。

「ふん。それで先生。何が知りたい? 」

「あれから探索隊はどうなったんでしょうか? 」

探索隊の行方が気になる。

「さあねえ。異世界を見つけたんじゃないの? まあ俺には関係ないけどね」


「この紙束はどこで? 」

「ああ隊長とは昔からの長い付き合いでよく相談を受けていたんだ。

そん時に変な紙束を見せられてよ。

どうやら隊長はアークニン博士の目を盗んで研究所から持ち出してたようだ。

実はヒントを与えたのは俺なんだ」

いい加減なことばかり。確かめようもないからって適当なことを抜かす小物。

あまり当てにならないな。


「そうだ。合言葉を知ってますか? 」

デンジャラスゾーンと恐れられる第二ゾーンに行くには合言葉がどうしても必要。

確かこの島に関する言葉だと言っていたような気がする。

もしここで分かればすぐにでも第三ゾーンまで行ける。

何と言っても唄子様から第三ゾーンの鍵は預かってるのだから。


そう言えば一つ気になることが。

俺の持ってる鍵で第三ゾーンに行けるとしてどうやって?

少なくても我々は戻ることは無いかもしれないのだから。

それは先に行ったこの男の仲間も同じ。

どうやって鍵を回収するのか? そんな危険な回収屋みたいなのがいるのか?

いろいろ考えてみるが想像の範囲を超えることはない。

直接唄子様に聞くのがいいだろう。


「合言葉? 合言葉ね…… 教えてやってもいいが高いよ先生」

まさか交渉する気か? しかも金まで取ろうとしてないか?

まったく本当にどうしようもない奴だな。

なぜまだ自分の置かれてる立場が分からない? 

本当に困った人だな。


               続く

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