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ついに男を追い詰めた。後は大人しく吐いてもらえればいい。

「だからあんたの存在はどうでもいいんだって!

それよりもあんたはアークニン探索隊の生き残りか? 」

追及を続ける。これで折れればいいのだが……


「いやその…… 」

「はっきりしてくれ! 」

「まさか…… お前らは追っ手か? 」

どうやら男は我々をアークニンが放った刺客と勘違いしてるらしい。

このメンバーではさすがにそれは無理があるだろう?

ただの生徒と教師だぞ? しかもガイド付きの。どう見ても観光でしょう?

「違いますよ。我々は高校の合宿で来ただけです」

「嘘つけ! 合宿で来るようなところか? ここは観光地ではないんだぞ」

怯える男。本当に情けない。


「そうだって言ってるだろうがおっさん! 」

ワイルドカズト登場。

早く退場させないと危険だ。

「確かに…… だったらまさか本当に仲間なのか? 」

「はい。アークニン博士から合流するように言われました」

証拠にアークニンの不気味な顔写真入りの異世界想像図を見せて納得してもらう。

これはお土産で買った恐らくこの世界に一点しかない限定品のはずだ。

普通の人は作らないし買わない。

いや…… 俺は普通ではなく立派な教師だからな。


「女の色香にやられ隊を外された。そうですよね? 」

全然認めないので勝手に断定して進める。

「だってよ…… 」

「お金もなく戻り方も分からずに時が過ぎた。

いつ船が来るかも見当がつかず諦めてここで商売を始めた。

恐らく当主の唄子様も知った上でお見逃しになってるんだと思いますよ」

「ふざけるな! さっきから大人しく聞いてれば舐めた事ばかり抜かしやがって!

もう知るかよ。さっさと帰ってくれ。ほらは早く帰れ! 」

どうやらからかい過ぎたようだな。でもすべて真実なはず。

なぜ受け入れようとしない?


「あのね。これはチャンスなんですよ」

辛抱強く交渉に臨む。

男の協力は不可欠だから。多少の無茶のお願いだって受け入れるつもりだ。

「チャンス? ははは…… チャンスと来やがったか。もう無駄さ…… 」

すでに諦めここの生活に馴染んでるのだからそうっとしておくのが人情。

とは言え貴重な生き証人。頼らざるを得ない。それはあちらも同じはず。


もしこの島から脱出したかったらクルミの船の日時を教えてやればいい。

ただ果たして無事に帰してくれるか。その保証はできないが。

それはここだけでなく旧常冬村でも同じ。

相当な悪さをしてきた訳だからな。見かけたら命はないだろうな。

大体クルミが許してくれかな?


「もう分かりましたよ! だったらこれに見覚えがあるでしょう? 」

バックパックの上の方を手探りでつかみ取る。

そしてカウンターテーブルに置く。

「これはおいくらでしょうか? 」

「何だよ。これは隊長の…… しまった! 」

間抜けにも反応する。後悔してるのか天井を見上げる。

いやいや随分前から分かっていた訳で気にする必要はまったくない。

そう言っても聞いてやしないか。


「どうやらお認めになられるようですね? 」

「ああ全部認める。俺が間抜けだったんだ。

あともう少しで異世界と言うところでつい抑えきれなくなってな」

「何だ先生と変わらないよ。気にしない。気にしない」

アイはまた俺を嵌めようととんでもないことを。俺がいつ手を出したってんだ?

もちろんほぼ毎日だけどね。クルミから始まって屋敷でも。

でもそれはイセタンとカズトを守るため。これも教師の立派な勤め。

もちろん誰かに分かってもらおうとは思ってないが。

とは言えなぜアイがそのことを知ってる? まさか意外と頭がいい?

ははは…… そんなはずないよね。安心のバカな子設定なんだからさ。

まあ今はそんなことどうでもいい。問題は男の方だ。


「では認めるんだな」

「そうだ。隊長は元気にしてっかな…… っておい! 」

突然ミコが踊りだす。

異世界へまた一歩近づいたことを記念して舞を披露。

外でやれよな。ここだと商品があって動きづらいだろうが。


「それでこの束が何だって言うんだ? 」

「まだとぼけるつもり? いい加減にしてよ! 」

タオがキレる。時間が掛かってしょうがないといつも冷静なタオも焦ってる様子。

「そうですね。では私たちはもう戻りましょうか。それではごきげんよう」

ミホ先生まで突き放す。


まったくどこまで往生際が悪いのだろうこの男は?

追っ手でもなければ唄子様の差し金でもないのに警戒してばかり。

仲間を信用しないでどうする? 俺たちを信用しないでどうする?

疑心暗鬼に陥ってるのは分かるが時間が掛かり過ぎだ。


               続く

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