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アイの習性

「やっぱり思い出せません! どうしても無理です! 」

泣きそうになってしまい居た堪れなくなる。

おっと協力者であり隊のメンバーを疑ってどうする?


「もう先生! 」

アイが生意気にも意見する。

「分かったよ。分かったって」

「お役に立てずに申し訳ありません」

「いやいいんだミルル。済まない…… 焦り過ぎだな俺? 」

「先生! 」

「そうですよ青井先生! 」

ミホ先生まで…… これは困ったな。でもとても重要なこと。

多少強引に迫ろうとも許されるはず。合言葉さえ分かればいいんだから。


「しかしうちの子はアイを筆頭に頭が良くないからさ…… 」

「先生! 本人目の前で言わないでよ。それに私はそれほどバカじゃない! 」

そうなんだよな。バカな子ほど自覚に欠ける。

信じられないがあの成績で自信があるらしい。


ここは無視して続けよう。

「ああそうだ。イセタンは医者の息子だよな? 

学年でもトップクラスの優等生だと聞いたがどう? 」

何でそんな天才が異世界探索部などと言う怪しげなクラブを作ったか疑問だが。

天才の考えることはよく分からない。何か隠してる様子もないし。

ミコ同様に異世界への熱の入れようは尋常ではなかった。

「いえまったく思いつきません」

そう言って申し訳なさそうにするが知識ではないからなこれは。

イセタンは俺からしたらただの素直な生徒だ。


「だったら逆にアイ」

バカな子代表の発想力に賭けてみる。賭けて成功した試しはないが。

「どうして逆なの? 私そこまで頭悪くない! 先生は何も分かってない! 」

そう言って大げさにタオに泣きつく。まさか傷ついた?

顔が笑ってる。大丈夫大丈夫。噓泣きだ。まったく心配させやがって。

アイは反論するが成績は英語以外がからっきしだからな。

英語だって俺のえこひいきがあるってだけで目も当てられない。


うんうん。頭の悪い子の可愛いところはバカの自覚がないところだな。

足りないのではなくまったくないからな。

自分のことを思いっ切り棚上げして自分より優秀な者を批判する習性がある。

それを見ているのが俺は好きだ。

おっと俺は何て教師にあるまじきことを考えてるんだろうか?

これでは本当に教師失格ではないか。


「だったらカズト」

「分かりません! 」

「おいおい少しは考えてくれよ」

「だったら先生が考えればいいだろ? 」

いつからそんな正論を吐く生意気な子になったんだ? 先生悲しいぞ。

そんなにすぐ諦めてはいけない。ネバーギッブアップ!


「おいおい二人とも少しは考えてくれよ。異世界に通じる大事なものなんだから。

もう少し真剣になろうぜ。皆もそうだぞ」

ああそうか。二人は外に出ると上空が気になるあまり何も考えられないようだ。

ほら今にも。前を歩くミホ先生が立ち止ったのを察知できずぶつかりそうになる。

あーあ見てられないよ。可哀想に昨日のことが相当ショックだったんだろうな。

それは俺も同じだが上ばかり見ていては落とし穴に気づかない。


ただこれだけの集団で動くと化け物に察知されやすくなる。

その上大人数の安心感から余裕が生まれ隙もできやすい。

誰かが気づくだろう。誰かが知らせるだろうと。

その結果襲撃されることになる。

そうなったらもう誰かが捕まるだろうや犠牲になるだろうに変化するのかな?


「ミコは? 」

ただ首を振るだけの存在感の薄いミコ。

「青井先生…… どうしましょうか? 」

すぐに俺に頼ろうとするのは何も生徒たちだけではない。

俺は単なる英語の教師でただの引率の教師。

そんな大層な力は秘めていない。

ミホ先生に分からないことは俺にだって分からないさ。

何でも俺に頼らずに自分で少しは考えて欲しい。

おっと…… そんなことは口が裂けても言えないよな。


「青井先生この後どうしましょうか? 」

何だ予定を聞いてたのね。偉そうに意見しなくてよかった。

「そうですね。取り敢えず花屋と貴金属店があれば回ってみようかと」

比較的安全な店が並ぶエリアへ。

「そうですか。私たちは話し合ってから決めようかと」

どうやら予定を決めてないらしい。

まあ俺もほぼ出たとこ勝負だけどね。

これでいいのかと言ったら間違ってる気もするが。

何と言っても当てがない以上適当に動き回るしかないのだ。

とにかくできるだけ多くの情報に触れておきたい。

取捨選択した上で合言葉を…… 果たして見つかるか?


「私はここで失礼します。じゃあねミルク」

ミラーロードを抜けたところで鏡子と別れる。

合言葉についてはやはり何も知らないらしい。

出来たら合言葉を知る者に繋いでくれたらいいのだが。


                続く

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