狙われた二人
トラブル発生!
二人が向かった方へ何も知らない女の子たちが中へ入って行く。
そもそも男子禁制の島。限られた男性しかいない。
彼らは家も与えられておりこの屋敷に来るのも用がある時だけ。
だからここに男子が来るのは例外中の例外。
我々のような旅行客ぐらいだがそれも何年かに一度のペースだとか。
風呂が重なることも稀。今までは目立ったトラブルはなかったらしい。
二つに別れてるのはただ人が多いので分けて入るようにしてるに過ぎない。
だからこの子たちが間違ってるとも言えない。そう言う問題ではないと。
昨日一昨日来た異郷の者である我々に遠慮することもない。
彼女たちにはあまり関係ないこと。
元々男風呂表記などありはしない。
この手の話はすべてミルルを通して鏡子から聞こえ伝わる。
だからわざとなどと言ってはいけない。
次々に二人の方へ。
これはまずい。急いでトラブル回避に向かう。
危ない危ない。まだ着替中で何とか間に合った。
「ちょっと何ですかあなた? 」
「済みません。こちら男風呂になってるみたいです。だから…… 」
「はああ? そんなの聞いてない! ふざけないで! 」
「そうよそうよ! 」
不機嫌な態度を見せる少女たち。
聞いてようが聞いてなかろうがそんなことはどっちでもいい。
嫌がる彼女たちを女風呂の方へ誘導。
危うく大惨事になるところだった。
それを直前でどうにか回避したのだ。
感謝されど文句言われる筋合いはない。
これ以上のハプニングもトラブルもいらない。
ああやはり俺は先生なんだろうな?
普通の男はこんな何の得にもならないことはやらない。
捕まるリスクを背負ってまでこんな危険な賭けはしないさ。
そうかもう充分なのかもな。
これ以上はマイナスになれどプラスにならない。
こうして朝のハプニングは無事に解決されたかと思われたが……
どうやらまだ続くようだ。
ここは高級温泉施設かよ? どれだけいるんだ?
それとも旧東境村ではお風呂は朝に入る習慣でもあるのか?
どちらかと言うと俺は朝よりも夜入るのが好きだな。
確かに旅行の時は一日二回入ることだってあるだろうがある意味ここは異界の地。
のんびり風呂に浸かってられない。
いや待てよ…… 癒しを得るために逆に二回入るのも悪くないか。
おっと自分で納得してどうする。
来る者来る者に隣へ行くようにと説得する。
どちらにとっても正しいこと。
さすがに朝からやることじゃないしな。ここは自重して欲しい。
俺は教師として侵入者から生徒たちを守る。
それが使命だと勝手に思っている。
ふふふ…… それにしても気づかなかったが下手したらミホ先生たちと鉢合わせ。
ああ恐ろしい。恐ろしいな。えへへへ……
捌くところはまるで風呂屋の主人ってところだな。
それにしても疲れるぜまったく。
だがおかしくないか? 果たしてこんなに来るものだろうか?
明らかに狙われ出した二人。一体なぜ?
まさかとは思うが二人がなかなか引っかからずに焦って実力行使か?
三日目からレベルを上げたと見てまず間違いない。
これではこの屋敷も危ないな。まったく違う意味でだけど。
「そっちは男風呂だよ。隣に行ってね」
こう言われては渋々従うしかない。
ただの思い違いだといいんだが。実際毎晩のように誘われてるからな。
危ない危ない。生徒を守るのが教師の役目である。
粛々とこなす。
そう言えばアークニンが何か言ってたような……
アークニンの有難くないお言葉を思いだす。
大体あいつが元凶なんだからな。
どんどん我々の夏休みが削られて行く。
彼女は……
うん? そうか思い出したぞ。だから俺はこんな目に。
よし二人を何としても魔の手から逃れさせねば。
実際はそうでもないだろうが。
そんなことはこの際関係ない。
これが恐らく俺に課せられた使命。役割だ。
理解したぞアークニン。もちろんお前の思い通りにはさせないがな。
「そっちは男風呂だって! ダメだって! ほら行かない! 」
まだ生ぬるいな。
ここはもっと強引に行くべきだな。
「そこ! 」
何となく見たことあるなと思ったら。
タオとアイの美少女コンビだった。
「もう何をしてんの先生? こっちに来る? 」
そう言って笑う。まったくこっちの気も知らないでこいつらはまったく。
あーあ嫌になってくるぜ。
「うるさい! 誰が行くもんか! 」
そう思いつつも妄想してしまう。ああ何て情けないんだろうか?
自分が恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。
続く