来る者拒まず
おいで おいで
午前二時過ぎ。
おいでおいで
再び始まる夜の宴。
誰が相手をするものか。
俺はもう眠い。疲れてるんだ。
放って置いてくれ。
それでも止まらない誘い。
おいでおいで
今夜は二人ともぐっすり寝ているよ。
あれだけのことがあってよく寝てられるな。
まあ疲れたからな。死んだように寝ているのも頷ける。
おっと縁起でもない。
一応は確認。うん息はしてるな? 心配ない。
怖くて寝るか? ははは…… 矛盾してるよな。
いいさ。いいさ。それだけ怖かったんだろう? 疲れたんだろう?
もう潮時さ。我慢などできやしない。
船が到着次第帰還しなければ。
それが引率者としての務めであり教師たる者の務め。
だがそれで本当にいいのか? ここまで来て引き返すと言うのか?
ダメだ…… どうしたらいいか判断できない。
今までの苦労と努力が水の泡になる。
やってきたことが全部無駄に。
やはりここは引き返すべきではない。
どうせ船などもう来やしないんだ。
我々はいつの間にか旧東境村に囚われていたのだろう。
生徒の安全と未来を考えれば戻るの一択。
しかし念願の異世界探索。アークニンから託された異世界発見も目前に迫ってる。
俺はどうしたらいい? 迷いに迷っている自分がいる。
果たして答えは出るのか?
おいで おいで
おいで おいで
いい加減しつこいな。いつになったらこの幻聴はやむんだよ?
おいで おいで
今夜は相手などできないと言ってるだろ?
相手などするものか。相手など……
あれ? 音がしなくなった。ようやく静かになった。
何だやっぱり。これは俺たちの気持ち次第。気持ちを強く持てばどってことない。
耐えれば収まるのだろう。
やはりタダの幻聴。幻覚。
そうではなく単純に夢だったかもしれない。
まったくいつもおかしな夢を見ていたものだ。
旅疲れが悪夢へと繋がったのだろう。
いや決して悪い夢と言う訳でもなかった。
知らない少女と交わるのだから。
俺って相当ヤバイ願望を持っているのだろうな。
それが夢と言う形に現れる。
ああ何て情けない。もっとしっかりした人間にならなければ。
イクヨ イクヨ
収まったと思ったら再び謎の声がどこからか。
やはり無理なのか不可能なのか?
運命には逆らえないらしい。ここは受け入れるしかない。
イクヨ イクヨ
ダメだ。来るな!
ダメだ! ダメだ! ダメだ!
イクヨ イクヨ イクヨ
襖がガタガタ言い出した。
そして半分ほど開く。
そこから青白い手が見える。
二人は反応しない。
まったく気がつかないみたいだ。
なぜだ? なぜなんだ?
二人は眠りこけている。
俺だって眠っていたいさ。
それで過ぎ去ってくれるならな。
だが部屋に入って来たんだぞ。
一か八で布団を被ってどうする?
俺だけでなく二人とも危ない。
ここは何としても死守するしかない。
女が入って来る。
髪の長い女。束ねたであろう髪を下ろして恐怖を演出している。
年はいくつだろう?
いやいやもうやめよう。
もうそう言う次元ではない。
描写してるほど呑気な状況ではない。
入って来た女。
どうやら少女のようだ。
あーあ俺ってどうしようもないな。
また訳の分からない女を召喚してしまったらしい。
潜在意識下で追い求めてるんだろうな。
長く美しい黒髪の着物の少女。
ここはいつの時代だよ?
まあ旧東境村の少女たちはそんなものか?
ミルクも家では着物だった。
クルミに気づかれないよう敢えてラフな格好で。
少女は笑っていた。
真似て笑ってみるがただ招き入れる格好に。
当然拒否すればこいつらのどちらかの布団へ。
どうする? どうする?
受け入れるか? 当然受け入れるしかないよな?
これは仕方ないこと。不可抗力なのだから。
後のことは知ったことじゃない。
それで地獄に行こうが異世界に連れられようが。本望である。
だからもちろん受け入れる。
何の迷いもなく受け入れるのだ。
布団は気持ちいい。布団は大きい。
布団は一人が限界だ。
布団はもうギュウギュウだ。
布団は布団は……
なるべく音を立てずに。なるべく声を出さずに。
なるべく騒がずに。なるべく喘がずに。なるべく動かずに。
小さな声で。小さな声で。
良いのか? 良いのか?
本当に俺で良いのか?
よしだったら協力しろ!
さあ布団からはみ出さずにだ。
服を……
良いぞ良いぞ。
きれいだ。きれいだ。
さあ音を立てずに。
シッ! 声を出さずにな。
絶対に二人に気づかれないように。
さあゆっくり。
俺は一体どんなプレーをしてるのだろう?
おかしな共同作業。
左右。上下。
さあさあ。さあさあ。
なるべく小さな声で。
もはや声を発さないぐらいに抑えて。
これで気づかれない。
ばれないように。
イクヨ
行くぞいいか?
イクヨ
うんそうだ。
ダメ!
うん。
さあ
ハア
うん
アアー
気持ち良かったぜ。
まだ……
我がままだな。だったらもう一度。
いいか? 行くぞ?
行くぞ? 行くぞ?
ゆっくっり。
さあさあ。
イクヨ
ゴー!
ふうう……
まだ?
あと何回?
これで最後にしよう。
行くぞ。
よしどうだ?
終了。
よしゆっくり。
音を立てない。
足音も立てない。
分ってるのか女は静か。
一切足音を立てない。
二人に気づかれずに。
セーフ!
女は外へ。
夜の戦いも終えゆっくり朝風呂で回復を図る。
続く