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イタズラ

生徒たちを観察するのも悪くない。

悪趣味などではない。立派な仕事。これが後々効いてくる。


「本当にいつもいつも! 」

怒りを露わにした生徒たち。どうしたのだろう? 何か変だ。

ただ騒いでる。騒ぎたい以外にどんな感情なのか?

「どうしたお前ら? 」

つい彼女たちの世界へお邪魔してしまう。

無視されるだろうな。

気持ち悪いと悪気なく面と向かって吐くだろう。

上品かどうかや教育とは無関係に。


「どうしたじゃないですよ先生。いつもいつもタイミングよく現れて! 」

怒りに震える少女たち。もちろん俺の生徒だ。

一体俺が何をしたと言うんだ?

責め立てられ返す言葉が見当たらなければ大人しくしている。

それでも無理なら繰り返す。


ごまかすぐらいどってことない。

俺は大人で彼女たちは子供。

発育の良い見た目に反してまだまだ幼い。

それを隠そうと必死だからつい生意気に反抗的な態度を取ってしまう。

良いのかそれで? 俺は教師なんだぞ?

内申書に影響しないとも限らない。

こんな風に脅せば最低と失望されてしまう。

俺は別に生徒にどう思われようと構わない。

俺の好きなようにする。それでついてこなければそれまで。

元々俺には向いてなかった。そう思うしかない。

残念だがこれ以上は続けられないだろうな。


「どうした? 」

繰り返すしかない。

彼女たちのことがいまいちよく分かっていないのだから。

分かりたい? いやちっとも。

たかが生徒の気持ちなど分かってたまるか。

俺が生徒たちの気持ちを推し量るのではなく彼女たちの方から。

それが本来教師と生徒のあるべき姿だろう。

そもそも知りようがない。

心の奥深くにしまい込んだ感情はそのままにして皆に合わせる。

感情に流される生徒たち。


「早く! 」

もう命令口調だ。さっきまでお願いしていたはずだが。

もう先生と生徒の関係は破たんしたと言うのか?

まさか今日は土曜日なのか?

「早く! 早く! 」

まるで子供のような扱い。

俺は教師だぞ? 立場が逆転している。

いつもこうだ。どうして俺を敬わないのだ?


「分かった。分かった! 」

「ほら早く! 」

この応酬が続く。俺が止めればいいのだがそれでは教育にはならない。

俺が悪いのなら謝りも従いもするがまだ何一つ分かってない。

俺が何をした? いや俺が何をしたように見えた?

実際にしたのとそう見えたのでは雲泥の差がある。

弁解の余地がある限り俺は戦う。


「もう早く! 先生早く! 」

急かしに急かし続ける無礼な生徒。

いくら可愛い教え子でもこれは我慢ならない。

いやしてはいけないのだ。もちろん時と場合によるけれどな。

「まったくお前たちは困ったものだ」

「うるさい! 」

あれ? 反撃に遭ってしまった。

くそ! 舐められたものだ。



コツコツ。コツコツ。

確実に聞こえるように派手に足音を立てて階段を上る。

これが俺のスタイル。

と言ってもこだわりがあるとかそう言うのじゃない。

こだわりがまったくないと言う訳ではないが一番は俺の存在を認識させること。

この俺がいつも通りの時間にきちんと足音を立ててやって来た。

これ以上のことをしてやる必要がない。これで充分。


ガラガラ

そしてなるべく強く仮に足音に気づかなかったとしてもここで気付けるように。

態勢を整えるまでの猶予は与えてるつもりだ。

厳しいか? いやそんなことはないはず。

毎日ほぼ同じ時間に入るのだから避けようがある。


きゃああ!

いやああ!

だがなぜか悲鳴が上がる毎日。

足音と悲鳴はセット。

俺は間違っていない。

これは俺の問題ではない。

俺を慕う生徒たちが悪い。


しかし最近の子は何を考えてるのか本当に分からくなって来た。

世も末。世紀末だろうか。

いやその世紀末も随分前に騒いだ記憶がある。

結局世紀末騒動は一体何だったのだろう?

毎日毎日飽きもせずに悲鳴を上げるおかしな生徒たち。

難しいことは何一つないはずなのに彼女たちは失敗を繰り返す。

成長しない生徒たちを見てると呆れる。


だがそれ以上に一つの疑問が湧いて来る。

これは不可抗力とかそう言うレベルではない。

ただ分かっていてやってるのではないか?

わざと俺を試すように。目的がいまいち掴めないがこれもいたずらの一環。

コミュニケーションの一つとして許容しよう。

もちろんそのことを直接的にしろ間接的にしろ聞くのは簡単ではない。

馬鹿正直に質問したところできちんとした答えなど返ってくはずがないのだ。


                 続く

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