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ミホ先生へのお願い

旧東境村での二日目を終えようとしている。

現在ミホ先生と二人っきり。

これはチャンス到来。

とにかく当たって砕けろだ。


「仕方ないですよ青井先生。まだ島に来て二日目ですから…… 

それにしても私たちはいつ帰ることになるんでしょうか? 」

ミホ先生の素朴な疑問。俺だって知らない。

知ってるのなら逆に教えてもらいたいくらいだ。

神のみぞ知るって奴だな。


もちろんただ帰るだけならば六日後のクルミの船に乗せてもらえばいい。

そこから二日掛ければ最寄り駅に戻って来れる計算だ。

だが異世界に行ってしまえばまったく読めない。


「ミホ先生! 本来ならとっくに帰ってる頃ですが船が来るのは早くても来週。

その時までに異世界を発見出来なければ諦めて帰ることにしましょう。

夏休みが終わるその前に」

そうなったらそうなったでどっちみち保護者にお詫び行脚しなければならない。

もう警察呼ばれてるかな? しかも俺が指名手配されてたりして。

うわ…… そう考えると帰るのが怖くなってくる。

別にまだ失踪した訳ではないけどね。

「そうですね。私も賛成です。今がとても夏だとは思いませんが。

私たちには引率者としての義務がありますから。判断せねばなりません」

うーん判断か……

果たして俺に判断出来るのか?


「まあこの島に閉じ込められたとも言えますね。何も起こらなければいいが……」

鏡島に閉じ込められた我々はどうやって活路を見出して行けばいいのか?

旧東境村に着けば自ずと異世界まで行けると信じていたのに。

どうやらまだまだ試練がありそうだな。

しかし閉じ込められたはさすがに表現がオーバーだった気もする。

いくら大人でもミホ先生も今は神経質になってるはずだ。

もう少し慎重にそして言葉を選ぶべきだったかな。


「青井先生怖いこと言わないください。ただでさえ極限状態なんですから。

大人がこうなら生徒はもっと何倍もの恐怖と不安を感じてると思います。

生徒たちのサポートも最優先で考えなくてはいけませんね」

二日目で慣れて来たとも言えるがやはり生徒たちには動揺が広がっている?

気をつけてあげなければならない。


「ああ細かいことはよろしいのではないでしょうか? 

さあもう寝ましょう。明日も早いですから」

「ミホ先生…… 一緒に…… 」

ダメだ。出かかっているのだがどうしても言えない。

これではただの情けない男だ。言ってしまえ。言えば気が楽になる。

恥ずかしがってどうする? 俺たちは付き合ってるはず。

でもそれは俺が勝手にそう思ってるだけあっちは何とも思ってない。

せいぜいが仲のいい同僚ぐらいにしか見てなかったら彼女を傷つけることに。

その上赤っ恥を掻くことになる。もう十分大人で教師としても立場も名誉もある。

小さなプライドだってある。だからどうしても積極的になれない。


それとは別に本当に怖いのだ。

昨夜のようにどこからともなく女のささやき声がしたら卒倒ものだ。

でもどうせ信じてもらえない。

俺だって夢だってスタンスは変えないがでも万が一にも今日も。

もし狙いが俺ではなく生徒たちにあるならどうだ?

要するに狙われてるとすれば俺にはまた止めてやれる自信はない。

何しろ自分のことで手一杯だからな。


「その…… 寝ませんか? 」

もじもじしながら誘ってしまった。ああ情けない。

何て最悪なんだろう。自分でもそう思うのだからミホ先生は怒る?

「何を冗談を言ってるんですか? こんな時に! 」

ダメだ。このままでは本当に嫌われてしまう。

「しかしもう身が持たない。いえ何か一人では……

無理な気がして…… 済みません。ははは…… 俺何を言ってるんだろう? 」

結局謝ってては意味がない。


「ふふふ…… 青井先生も怖いんですね? 私も物凄く怖いんです。

でも大丈夫でしょう。もしもの時は二人がついてますから」

ミホ先生はそう言うがだからこそ心配なんだよな。

それではと言って自分の部屋へと帰っていく。


余計なことを言わなければ良かった。

やんわりと躱していたが内心嫌な思いをしていたかもしれない。

だがもう止められないのだ。自分では決して止められない。

それが分かっている。分かっているからこそ辛い。


                 続く

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