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お約束

ショップエリア。

何軒かのお店が集まって小さなコミュニティーが形成されている。

鏡島の人々を陰から支えるなくてはならない貴重な存在。


「ああ先生。お店みたいなのがありますよ」

イセタンが何か発見したらしい。

よしさっそく聞き込むとしよう。

「いらっしゃいませ。ここは薬屋だよ」

どこで商売してるんだこの婆さん?

薬屋のお婆さんか?

ではお約束を一つ。


「おい婆さん! ここで商売していいと思ってるのか? 」

カズトは調子に乗ってお年寄りいじめを始める。

「へへい! お許しください! お許しください! 」

それに対してお婆さんも真剣だ。一生懸命に演技してる?

「ダメだね! ここで商売したかったら金を払いな! 」

イセタンまで続く。

「何じゃとガキが! お前たちに言われたくないね! 」

おっと我慢の限界か? 堪え切れなくなったらしい。


「では先生お願いします」

カズトがまだ続ける。もうこれくらいで良いだろう?

「へへへ…… 婆さん大人しく払わないと痛い目見るよ」

仕方なく俺も場の雰囲気を壊さないように倣う。

「分かりました。分かりました。お許しください!

お許しください! この通りでございます。それで何にします? 」

ダメだこれまでか。せっかくこれからだってのに肝心のお婆さんが飽きてしまう。

ちょうどいい暇つぶしにはなっただろうか?


「異世界に持って行く薬を揃えたいんですけど…… 何かありますか? 」

「異世界? はあそれは本当に大変だね。よしこの胃薬なんかどうだい?

この風邪薬も役に立つよ」

すべて事前に揃えていたもの。まだ使ってないので買い足す必要はない。


「もっと変わった薬ないの? 」

不満を述べる。

専門家だから少しは凄いものを出して欲しいな。

買うか買わないかは…… 待てよ。ここってイントしか通用しないんだった。

「お客さん悪いね。ここは重要度の低い薬しか置いてないんだよ。

それもすぐに売り切れてしまうがね。専門的な薬はここでは取り扱ってないんだ。

どうしても欲しいなら東常冬町で買うといいよ」

アドバイスをもらうがはっきり言って戻れるなら戻りたいよ。

でもそれが無理だからここで命がけのサバイバルをしてる訳で……

隔絶された島だから必要最低限の薬しか置いてないそうだ。


「唄子様の屋敷にはいろんな種類の薬が置いてあるよ。

でも売買はしてないから。困ったら相談するのもあり」

「分かりました。ここにある薬を全種類お願いします」

現金を手渡すが当然のことながら突き返される。

「いや悪いねお客さん。この島では現金は使えないんだ。

すぐそこに両替屋があるからそこで両替すると良いよ」

言われるまま現金をイントに替える。

すべてをイントに替えるのは危険なので一部は現金で残しておく。

薬屋に戻りイントを渡す。

この二度手間が面倒臭いがそれもノスタルジックな気持ちになる。


「お客さん困ります」

「あれ足りなかったっけ? 」

おいおい婆さん。まさか吹っ掛ける気か?

「ここです。ここにイントを入れていただかんと。常識ですよお客さん」

イントを専用ボックスに入れる。

そしてようやく受け取ることが出来た。

「はいご苦労さん」


「あれこれは何でしょうか? 」

さきほど食べた気もするが一応確認してみる。

やっぱりあれかな?

「ああこれね。これはフンだよ。万能薬だ。

食べてもいいし傷口に塗ってもいい。

それ以外にも使い方があるが主にはこれぐらいだろうね」

真っ白なフン。

明らかに鳥のフンだと思われる物体。

そんな気色の悪いものを患部に塗るのも憚れるが口に入れるなんてただの拷問。

しかし俺以外の奴は朝飯にぱくぱく食べていた。

そのフン。再びのフンである。


「うわ! 汚ねえ! 」

カズトは発狂しそうなほど。

イセタンは大人しいがどうやら耳を塞いでいたらしい。

見たくないものは見ない。聞きたくないものは聞かない。

俺たちの反応を頼りに情報を整理している。

うん実に賢い。さすがは部長だけあるな。

生き残るサバイバル術を身に着けてるようだ。

ただこれには協力者が必要。

逆に言えば一人ではこの手は使えない。


薬屋で知り得た情報は集落で得られるものと大差なかった。

「先生早く行きましょうよ! 」

現実を知りたくないとイセタンは急かす。

ところで俺たちはどこに向かっているんだ?

この辺には店が点在するので危険はなさそうだが油断すると怪物の餌食になる。


                 続く

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