新世界より
朝を迎える。
早くせねば生徒たちに見つかってしまう。
いくら二人を追いかけただけと言っても通用しないだろう。
急いでかつ慎重に。気づかれたらお終いだからな。
どうにか寝床へ。
よしよし二人とも戻ってるな。これで一安心だ。
ふう危ない危ない。気づかれてないよな? さあ寝るとしよう。
おやすみなさい。
こうして眠りにつく。
「先生! 」
うーん実に気持ちの悪い最悪の朝だな。
どうも昨夜の記憶が曖昧なんだよな。
二人が突然起きたので後をつけたはずだがいつの間に戻ったのかな?
確か女の声がしたような…… うーん覚えてない。
思い出そうとすると割れるように頭が痛い。
脳が思い出すなと指令を送っているのだろう。
まあとにかくその後は何事もなく布団を被って震えて寝たで合ってたかな?
「もう朝か? 」
「いつまで寝てるんですか? 」
なぜかミホ先生がいる。
「さあ先生! 朝ですよ。飯に行きましょうよ」
カズトが無理矢理布団を剥がし強制的に起こされる。
カズトの奴め先日のことは反省してないか忘れたな。
「あらあら青井先生お疲れのようですね」
ミホ先生が労わってくれる。
でも昨日はただ寝てないだけな気がするが。
いや待てよ。昨夜のことは夢だったのかな?
「そうか。あれは夢だったのか。よし皆行くぞ! 」
「はあ? 先生何を言ってるの? 」
どうやら昨夜のことは全部夢だった。ただの夢だったんだ。
それはそうだ。あんなおかしな展開普通あり得ないよな。
朝食は集落での食事と似たり寄ったりで特に変わったものは…… あった!
あの変なものは恐らく…… いやよそう。フンであるはずがないんだ。
ここの名物のフン料理。確かクルミが教えてくれた。
それにしても気づかずに皆よく食べてるよ。
ミホ先生など止まらなくなるほど食べている。
俺の分まで食べるんだから何て食欲だ。
しかしあれが何で出来てるか知れば卒倒するに違いない。
だからそっとしておくに限る。
おっと…… 俺は一体何を考えてるのだろう?
アイも美味しそうにモグモグと笑顔が溢れる。
これはもう諦めよう。
見なかったことにしよう。知らなかったことにしよう。
俺は知らない。俺は見てない。
朝食を終え探索を開始。
チーム分けをする。
今回は男女に別れて。
ミルルもいるし案内役の鏡子もいるんだから安心だよな。
どちらかと言えば男三人のこっちの方が心もとない。
「さあ行こうか二人とも」
「オウ! 」
元気な奴らだな。ははは……
俺は今寝不足な上に土曜日の昼状態。
どうしたんだろう? 何だからちっともやる気がでない。
「それではミホ先生。生徒たちをよろしく。
それから話を聞けるだけ聞いておいてくださいね」
「お任せください。こっちにはミルルもいますから。
心配いりません。青井先生こそご気分が優れないようですが…… 」
どうやらミホ先生は微妙な変化に気づいてるらしい。
だがこれは問題ない。いつものことだから。
それよりもどんどん自分をコントロール出来なくなっている方が遥かに問題。
なるべく集団行動を心がけるよう注意してから別れる。
ミラーロードへ。
一キロ近く続いてるミラーロード。
昨日と反対の方角へ向かう。
ミラーロードの終着点には大木がある。
樹齢何年だろうか? 立派な大木だ。
年輪を確認すれば大体のことは分かるんだろうが面倒だしな。
邪魔なものもあるしな。
そこにはしめ縄が施されている。
恐らく異世界から流入する化け物を外へ出さない儀式の一環だろう。
後で鏡子さんに詳しい話を聞くとするか。
「でっかい! 」
カズトが大木を見上げて感想を述べる。
イセタンはその大きさに言葉を失っている。
「樹齢はどれくらいでしょうかね? 」
イセタンは俺が分かるものだと期待の目を向ける。
今はそんなのんびりしてられないっての。
腐ってなければ役割は果たしてるはずだ。
この新世界ではね。
「それは…… 専門外だ。俺は英語教師。
社会科の教師にでも聞くんだな」
「社会科って…… 理科では? 」
くそ! 痛いところを突いてくる。
これでは俺がまるでバカみたいじゃないか。
「そうだよ先生。理科に決まってるでしょう? 」
「うるさい! どっちでもいい。社会科のおっさんでも知ってるっての」
基本的なことは俺だって知ってるんだから。
「もう先生。怒ってまあ。大人げないですよ」
カズトは浮かれている。
「うるさいぞカズト! お前たちは異世界でも探してればいいんだよ! 」
つい大声を出してしまう。
まったく俺は何を考えてるんだ?
どこに怪物が目を光らせてるか分からない。
慎重にも慎重に。
「ああ先生。お店みたいなのがありますよ」
イセタンが何か発見したらしい。
よしさっそく聞き込むとしよう。
続く