表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/246

常冬村編 完結

レストラン『エターナル』

タオとアイと早めの昼食を取る。


この町でレストランはここだけなので客が集まるのはよく分かる。

しかし主人一人ですべてを管理してるせいか料理が出るまでに相当時間を要す。

ケチケチせずに人を増やせばいいのだろうがそうも行かないらしい。

上質なものをと仕入れに金を掛け過ぎて前に大赤字で店を潰した苦い過去がある。

その経験からなるべく経費を抑えてると語ってくれた。


「どうぞ」

ようやく食事が運ばれてきた。

景気づけに何でも好きなもの頼んで良いと言ったのにサラダとシーフードドリア。

デザートにバニラアイス。

遠慮した訳ではないだろうがタオも同じものを注文。

俺もせっかくなので合わせることに。でもアイス?

ここは常冬地方とあって昼であろうと冷え込む。

そこにアイスとはよく置いてあるな? そしてよく頼むな?

冷えた体をドリアで温めアイスで冷やす。ここではこれ以上の贅沢はないかもな。

確かに今は夏だからアイスを食べたくなる気持ちも分かる。

でもせっかく温まったものを台無しにする暴挙。見ていられない。


カチャガチャ

ガチャガチャ

忙しなく音を立てるアイ。

さすがに聞いていられない。

「こらアイ! 静かにしろ! 皆見てるぞ! 」

「先生もお静かにお願いします」

アイを注意したら逆にうるさいとタオに叱られる。

俺が悪い訳ではないのにな……

大体こんなところに知ってる者などいやしない。

羽目を外すのは論外だが少しぐらい騒いだって問題ないだろう。

つい子供みたいに感情的になる。ただ実際は子供よりも大人の方が感情的だが。

「もう先生だって人のこと言えないじゃん」

「俺は良いんだよ。お前のことを思ってだな…… これも教師の仕事だ」

「私だって先生のことを思って…… 」

そう言って照れて見せる。何て可愛らしいのだろう。

うん百点だな。よし次のテストもオマケしてやるか。

次のテストがあればだけどね。


食事を終える。

「あーあ美味しかった」

「久し振りの洋食だもんね」

呑気に感想を述べる二人。のほほんとした平和な世界。


「おいお前ら! 食べ終わったら早く行くぞ!

こっちは予定が詰まってるんだからな。グズグズするなよ。

ほら客だって詰まってるだろ。よく見てみろ。

腹の中だって詰まりに詰まってるぞ。ははは…… 」

あれおかしいな? こんな冗談言ってる時じゃないんだがな。

ついふざけてしまう。悪い癖だな。

「先生最低! 」

当然返って来るお決まりの言葉。アイに言われるとグサッと刺さる。

「そうですよ。下品ですよ先生! 」

タオに言われてもたいして…… ダメだ。そんな風に言わないでくれ。

ただの冗談じゃないか。真に受けるなよな。


「おっと悪い。ここで待っててくれ。先生トイレに行ってくるからな。

暇ならイントを持ってそうな人に聞いて回ってくれ。ただし無理はするな」

うわ漏れる!

トイレはとんでもなく混雑している。

やはり昨晩みたいに近くの草むらで…… そんな訳にはいかないか。

二人に見られでもしたらシャレにならないからな。


コンコン

コンコン

念の為にノックを三回。一定の間隔で。

そうすると急いで返ってくる。

五分過ぎてようやく出てきやがった。

こっちは漏れそうだと言うのに呑気に五分以上粘りやがって。

出て来たら出て来たで無言で睨めつけてくるし。何て非常識な奴なんだ。

まあいいや。この際細かいことはどうでもいい。


ふう…… すっきりした。

「一時はどうなうかと思ったよ。君たちもついでにどうだい? 」

おっとついセクハラまがいのことをしてしまう。

「結構です! 」

語気を強めるタオ。

何かあったのか? それとも単純に下品だから? 

ああ。お願いだから俺を見放さないでくれ。良い先生でいるから。


「もう最低! 」

「そうそう。そうだよね」

レストランを出ても愚痴は止まらない。

トイレに行ってる間に一体何があったのか?

いくら聞いても答えてくれない。

ただ最低を繰り返すばかりのタオ。

一体何にそれほど怒っているのか?

まったく分からない。

ただ機嫌が悪いだけなのか?

どの道早いところタオの機嫌を直さなければな。


レストランを後にする。


さあ残るイントは一枚。今日中に何としても手に入れなければ。

それにしてもクルミは今どこにいるのかな?


<常冬村編> 完


次回から旧東境村編スタート。


                旧東境村へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ