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姉妹の関係

Aチームの三人はミルクの家に。

体を壊し伏せている元渡しの爺さんと再度交渉。


「旧東境村まで行ってもらえませんか? 」

丁寧に思いを伝える。

もちろん今更老体に鞭を打って連れて行ってもらおうとは思わない。

最後の挨拶と確認の意味を込めて迷惑は承知で押しかている。

「しつこいぞ! 自分はこんな体だ。もう動けん!

惨めな思いをさせるでない。ゴホゴホ…… 他を当たれ! 」

頑なな態度。頑固爺さんの本領発揮。

どうやら旧東境村まで案内するつもりはないらしい。

確かに体力的には無理だろう。だが代わりを立てれば何の問題もない。

それがクルミであろうとミルクであろうと。


ああどうしたら? お爺さんがこんな状態ではどうすることも出来ない。

旧東境村への道が閉ざされた絶望的な状況。

それは昨日までのお話。何と言っても俺たちにはまだ切り札がある。


「それでは一応確認なんですがミルクさんに頼むと言うのは? 」

「馬鹿抜かせ! ミルクにそんなことが出来るか! 技術がいるんじゃ!

技術がな! バカなことを言っておらんで早く立ち去らんか! 」

何度も咳き込む爺さん。本当に大丈夫かな?

興奮したら余計に体に障るだろう。もしかして俺たちのせい?


昨日から何度も何度もお願するが聞き入れてもらえない。

まああの体では無理なのは分かっているが何か隠してる気がするんだよな。

一応また明日も頼んでみるか。急に良くなることだって…… あり得ないが。

ただ粘る価値はあるだろう。


「あの…… 最後に一つだけ…… 」

「しつこいぞお前ら! 出て行かんか! 」

どうも元気なんだよな。動けるのではと疑ってしまう。


ゴホゴホ

ゴホゴホ

爺さん血圧が上がるぞ。気をつけろよな。

これではまるで悪徳勧誘のセールスマンのようで心が痛む。

だからって止められるかと言ったら分からない訳だが。

「ではそろそろお暇して。お爺さんが無理であれば諦めるしかありません。

でもミルクさんだっていますしそれにクル…… 」

「それ以上言うでない! 帰ってくれ! お引き取りを! 」


ゴホゴホ

ゴホゴホ

まずい悪化したみたいだ。

部屋の外で待機していたミルクが駆け寄りお爺さんを起こす。

手伝おうとするが断られる。

「お引き取りを! 」

ミルクまで強い口調で迫る。

これはさすがにまずいよな。

「分かりましたお大事に! 」

挨拶もそこそこに外へ。


「あの爺さんはもう! 」

アイが我慢の限界らしい。

「それ以上言うな! これも作戦のうちだ」

ただ単に爺さんを怒らせた訳ではない。考えがあっての行動。

「作戦? 先生どう言うこと? 」

アイには理解出来ないらしい。

だからってタオが理解してるかと言うとそれは違う。

俺の非常識に怒った様子。

当然か。ただの酷い奴にしか見えないよな?


「ねえ先生? 」

「黙ってろアイ! 」

「もう…… 勝手なんだから」

ゆっくりしていると今出て来たばかりの家から人が飛び出て来た。

慌てた様子からこれはエサに喰いついたと見て良い。

ただこれで何を得れるのかは不明だが。


「ミルクさん? 」

「お姉ちゃんに会ったんですね? 」

息を切らしている。これは相当慌ててるな。

「はい。つい昨日」

この近くにまだいるのは間違いない。

「それで姉は何と? 」

心配そうに両手をこすり合わせる。

「旧東境村へ連れて行ってやるって。

イントコイン十枚で船で連れて行ってくれるそうです」

ここは正直に話して協力を得る方が得策だろう。

ただミルクさんが心配するので昨夜の詳細は伏せる方が良い。

隣には生徒がいる訳だからな。


「そうですか。姉のことですから…… 」

そこで止まってしまうミルク。

「何か知ってるんですか? 」

「いえ…… 姉は家出中で。実は祖父と喧嘩しまして。

渡しをやるやらないで喧嘩したんですが……

そうですか。姉は町に戻っていたんですね。ありがとうございました」

ショックを受けてるでもない。ただ居場所を知りたいのだろう。

姉妹だから会いたいんだろうなきっと。


「ミルクさんは渡しをやろうとは? 」

祖父の跡を継ぐのは何もおかしくない。

後はやる気の問題だろうが。

「考えたこともありません。ただ…… 」

「ただ何ですか? 」

ミルクの心理に迫れるか?

「私も船に乗ってみたい。たまに船に乗って旧東境村へ行ってみたい。

ふとそう考える時があるんですよ」

「興味があると? 」

「いえ…… まあ興味と言いますか憧れがあるんですね。きっと」

素直な気持ちをぶつけるミルク。

それをどうして祖父に向けてぶつけないのだろう? 


               続く

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