戦利品 期待するぞ
まずは昼食でエネルギー補給だ。
洋食がいいか中華がいいかそれとも……
もちろんこんな山奥では和食の一択しかない。
港近くの食堂で海鮮丼を頂くことに。
この辺ではここのみで三時を過ぎると店を閉めてしまう。
だから急いで掻き込む。
「先生。天ぷら食べきれません! 」
一人ナマが苦手なタオが天ぷらを注文。思った以上に多いと寄越そうとする。
「うわ…… 混じるだろうが! よせって! 」
なぜか海鮮の上に勝手に乗せる暴挙に出る。これって何丼?
「気にしないの先生。ほらほら」
「アイお前も! 漬物ぐらい飲み込め! 」
「へへへ…… 皆。先生が食べてくれるって! 」
嘘だろ…… もう満腹なんですけど」
こうしてただでさえ怪しげな海鮮丼に色んなものが混じっておかしな食い物に。
「先生美味しかったね」
「ああ最初はな…… 」
「先生! 」
俺たちが昼食を終えたところで問題の二人が戻って来た。
息を切らし飛び込んでくる。
だがなぜかミホ先生でもなくアイたちでもなく俺に向かってダイブ。
どうやら心を入れ替えたらしい。
仕方ない。受け止めてやるか。
「ははは! お前たち! ははは…… 」
「先生…… 俺たち戻って来たよ」
「そうか。そうか。ははは…… 」
おっとこれ以上は危険だ。何と言っても視線が刺さる。
食ったばかりだしな。
あれから一時間半と言ったところか。意外にも早かったかな。
まさか手を抜いてないよな? いやいや俺が信じないでどうする?
仮にそうでもどうにか見えないように誤魔化したはずだ。
「先生! ご迷惑を掛けました」
本当最後の最後まで迷惑掛けといてよく言うよ。
「そうだな。罰として昼は抜きだ! いいな? 」
厳しい措置だがこれも彼らの為。
反省してるなら当然これくらい受け入れるべき。俺は甘くないぞ。
異世界探索部と言いながらどこを探索してやがるお前たちは?
二人行動はもう危険だとよく分かった。だから二度とさせない。
「そんな…… 疲れたよ」
「先生! 腹が減った! 」
懇願する二人。俺だって鬼じゃない。
「お前らが問題を起こすと他の者にまで被害が及ぶ。
迷惑ではなく被害だ。ここではそれが命取りになりかねない。
そのことをお前たち二人はきちんと肝に銘じておけ! 」
罰は受けた。だがまだ説教が残っている。
今回の騒動で予定が狂ってしまった。
敵に正体をさらすきっかけになったのも否めない。
これは二人だけの問題じゃない。
団体行動を守れない奴は隊に必要ない。
「青井先生! 少し厳し過ぎますよ。
ほら二人とも。私が作ったおにぎり食べる? 」
まったくすぐ甘やかすんだから困るよなミホ先生は。
こいつらが反省せずに悪い心を持ったらどうする?
おかしなことに傾倒したらどうする?
これでは俺たちの子供も甘えて育ってしまうではないか。
まあそうなった時はそうなった時か。
「やった! ありがとうございます」
元々二人の為に握っておいたのだが厳しくしてやるのが優しさかな?
厳しく出来ないミホ先生。これではチーム行動の時が思いやられる。
本当に大丈夫かな?
おにぎりぐらいいいか。
誰も食べなければ腐って無駄になってしまう。
それではもったいない。ただもったいないからと腐りかけを食うのはダメだ。
別にミホ先生のが腐ってると言いたいのではない。ただのサバイバル術。
「お前らちゃんと反省しろよ! 」
「はい先生! これ戦利品です」
うわその言い方だとかなりのお宝。期待するぞ。
まさかまた盗んできたんじゃないだろうな?
ポケットからガサガサしてるところを見ると嫌な予感しかしない。
でも待てよ。奴らはあのビキニ相撲には参加してないよな……
カズトはポケットから取り出したコインを投げる。
そしておにぎりにかぶりつく。
何て豪快なカズト。ワイルドだな。俺は絶対に真似できない。
二人は合計六つあったおにぎりを一瞬にして消滅させてしまった。
若さとはすごいな……
それにしても戦利品はまさかのコイン。イントコインはもういいだろ?
「先生残念そうですね。まあそんなに気を落とさないで」
タオは分かってくれる。そうだよな俺のことを一番理解してるのはタオだよな。
本来はミホ先生だがお宝関係に興味ないからなこの人。
「先生残念ですね。好物のこれじゃなくて」
そう言ってアイが自らの下腹部を触り笑う。
これでは天使の微笑みと言うより悪魔の嘲笑。
見かねたミホ先生が注意を与える。
そうかアイの奴…… あの時の経緯を美人三姉妹の上二人から聞いたな。
まったく先生を脅かそうなど馬鹿には出来るものじゃない。
あいつらみたいになっても知らないからな。
続く