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運命 もはや伝説ではない

お爺さんは止まらない。

嘘なのか本当なのかさえあやふやだ。

だがこの迫力は演技ではないだろう。

彼もまた若女将のように近づく者へ最後の忠告をする役目を担ってると見ていい。

近づくことがいかに危険でいかに間違ってるかを説く最後の砦。

我々の前に大きな壁となって立ちはだかる。


ゴボゴボ

ゴボゴボ

あまりにも苦しそうなのでミホ先生が背中をさすろうとする。

だが余計なことはするなと頑なだ。

「ですが苦しそうに見えたのでつい…… 」

「心配するな! いつものことじゃ。それよりも自分に用とは? 」

これだけ包み隠さずに告白したと言うのにシラを切る。

まさか調べがついてないとでも思ってるのか?

無駄なやり取りはこれ以上どちらにもプラスにならない。


「分かってるはずです」

「何じゃと! 」

もう寝ていられないと起き上がるが上手く行かない。

タオが手伝おうとするがそれも拒絶する。

まったく少しは善意の気持ちを受け取れよな。

まだ俺たちが信じられないのか? まさかあり得ない!

 

「分かりました。お願いします」 

もう充分用は伝えたはずだが改めて詳しくミホ先生より語ってもらう。

「はい。お爺さんが旧東境村への渡しをやっていたと聞きまして……

どうにかお願いできないでしょうか? 」


ゲホゲホ

ゴボゴボ

咳が悪化。タンが絡んで声まで擦れて来た。

お茶でも飲めば少しは落ち着くだろうがこの様子だと頑なに断りそう。

再び立ち上がろうと力むが体を支えきれずにダウン。

もう一度と繰り返すが無理のようだ。

「この通り立ち上がることさえ出来ない。どうぞお引き取り下さい」

自分一人で立ち上がることさえままならない状態。

だからってそれを理由に拒否されても困る。


「そんな…… そこを何とか! 」

粘るぞ。ここまで来てあっさり諦めて帰って堪るか!

もう少し! もう少しなんだ!

この最終関門を突破すれば見えてくる夢にまで見た旧東境村。

なぜ旧東境村なのか? どうしてそうなったかまですべて分かるはずだ。

旧東境村にはすべての答えが詰まっている。

もうただの目的地ではない。

ここまで来たらケチなことは言わない。

最後の最後。異世界まで行ってしまえ。

それが異世界探索隊だろう。


本来なら旧東境村を発見すればそれで終わりにする予定だった。

だがここまで手強いとなれば旧東境村では終われない。

これはもう彼らのせい。焦らすだけ焦らして邪魔するから闘志に火がつく。

引き寄せられてしまう自分がいる。

しかもだ。俺には抵抗できない何かがあって自分ではどうにもならない、

そんな日々の中で目指すはやはり異世界なのだろう。


「無理じゃな。お帰りくだされ」

頑なな爺さん。こっちだって粘ればどうにかなるとは思ってない。

でも俺たちの熱い想いだけでも感じてもらえたらな。


この地域の者は皆そうだ。口を閉ざしてしまう。

非協力的で噂さえ語ろうとしない。

実に排他的な世界。

そこへ行って情報を収集するのがどれだけ大変か。

一つずつ乗り越えて来て今がある。


さあおかしなことを言ってないで協力して欲しい。

それが我々の為であり最終的にはこの地域の為になる。

異世界が身近になればそれだけで観光業は潤うだろう。

何と言ってもとんでもない目玉になる。

潤沢な資金さえあればいくらでも町を良くして行ける。復興出来る。

望む望まないは関係ない。この町を良くしていくにはもうそれしか残っていない。

だから俺たちは決して間違ってない。


旧東境村はもう伝説ではないのだ。

異世界だってそれは同じ。これはもはや運命。

我々によって発見される運命なのだ。

もう腹を括ってオープンにすべきだ。


どうしても嫌だと言うならそれも仕方ない。

民の総意なら我々も受け入れよう。その覚悟はある。

俺たちだけの秘密にしておく。約束は守るつもりだ。

だからお願いだから行かせて欲しい。


「無理じゃ! そんな体力今の自分には残ってない。

立ち去れ! この集落から…… いやこの町から出ていけ!

急げ! 殺されるぞ! 」


はあはあ

はあはあ

苦しそうに息をすると今度は咳き込む。それを繰り返す。

本当に大丈夫か心配になってくる。

ミルクさんを呼んだ方が良いのでは?

「お前ら! いいか…… 」

興奮した老人は何か言おうとしたが体力の限界のようで黙ってしまった。


「ではまた明日にでも」

我々は彼の体調を考慮してお邪魔することにした。

結局逃げ帰る形になってしまった。もうこりごり。


さあこれからどうするかな?


                 続く

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