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爺さんと孫娘

ミホ先生と結ばれる寸前でアイに邪魔されてしまう。

そのアイはショックで落ち込んだのかいつもの元気な姿は影を潜める。

まずいことをしてしまったかな? 

そんな最悪の状況で集落の者から話を聞くことに。


「では失礼しました」

どうにか話好きなお婆さんから逃れられた。

「もうミホ先生。なぜ間違えるんです? 」

「いえ…… 私も半信半疑でして。そもそも旧東境村の情報も本当かどうか。

では改めてお邪魔しましょう」

そう言うと恥ずかしいそうに歩き出す。


意外にもおっちょこちょいなところがある憎めない性格。

しっかりして見えても抜けてるところがあるんだよな。

まあそこがかわいいんだけどね。

俺もそうだが学校ではどうにか隠せてた部分が長い間一緒だと見えてしまうもの。

意外な一面って奴で欠点なのか個性なのかは微妙。

本人は嫌だろうが周りは気にしてないか好意的に受け止めてることの方が多い。

自分をさらけ出すことはとても勇気のいること。

だからどうしてもひた隠しにしようとする。それが人間の性。


意外な一面と言えばアイだろうな。

初日の夜に想定外の告白を受ける。

でも今は俺を避けている。口も利いてくれない。

タオ経由でないとコミュニケーションが取れない状態。

これぐらいの年の子は扱いが難しい。いくら教え子でもお気に入りだとしても。

実際アイの気持ちがよく分からないんだよな。

もちろんそれは今回みたいに俺が悪い部分が多いのだが揺れ動くからな。


ちょっと行くとお隣さんが見えて来た。

この辺りは広いので密接して建ってることはない。

今度こそ目的の場所らしい。

「お茶をどうぞ」

旧東境村を知る者はどうやら体調を崩してるようで今横になっている。

お爺さんだ。ようやく目当てのお爺さんに行きついた。


ゴホゴホ

ゴホゴホ

見ていて辛そう。何かしてやりたいが俺にはどうしてやることも出来ない。

タンが詰まるのか不快な音をずっと立てている。

一分おきにタンを吐く音と咳き込む音が混じりより一層辛そうに見える。

本当に大丈夫だろうか? この人から話を聞くの?


ゴホゴホ

ゴホゴホ

老人が伏せているので対応は孫娘のミルクさんがしてくれる。

「いつも済まんのう。ゴホゴホ…… ミルクや下がっておれ。後は自分でやる」

そう言って孫娘を退出させる。

「では何かあったら…… 」

少女は素直に従う。


「それで儂に用とは何じゃ? 」

部屋を出ていなくなったのを確認。余計な心配を掛けたくないらしい。

孫娘のミルクさんは今年十六になるそうでこの辺りでは珍しい若者である。

お爺さん思いの孝行娘だな。

「実は折り入って頼みたいことが…… 」


ゴホゴホ

ゴホゴホ

咳き込むと止まらないのか苦しそうにしている。

薬が目の前に置いてあるので飲んでるようだが一向に改善されないらしい。

これでは話が進みそうにない。


こんなボロ家では治るものも治らない。

部屋の至る所に黄ばみが目立つ。

もう洗っても落ちないのだろうな。ふすまもボロボロ。

立派なのは隣の部屋にある鏡ぐらいなものである。

建て替えを希望してるようだがその資金が捻出できなければズルズルと。

早くしないといつ壊れてもおかしくない。倒壊物件。


この辺りはどこも似た様なものだろうが災害が起きればひとたまりもない。

我々が心配することではないが部屋の中の感じでは持ってあと数年ってところか。

それまでに建て替えるか新しい住処を見つけるしかない。

孫娘のミルクさんがどうするかにもよるかな。


「済まん済まん。それで自分に用とは? 」

無理に起き上がろうとするのでそのままでいいと制止する。

「失礼しました。自己紹介がまだでしたね」

自己紹介を簡単に済ませ用件を伝える段になってためらいが生じる。

こんな年老いた病人に隠し事する必要はないと思うが念のための確認。


「ミホ先生…… 」

「はい…… 包み隠さずに話した方が良いのではないでしょうか? 」

ミホ先生は信頼出来ると判断。だが俺は違うぞ。

あの旅館の若女将だってよくしてくれた。

それでも警戒は怠らず逆に気を引き締めたぐらい。

いくら寝込んでるとは言えそれは一時的なものかもしれない。

良くなれば我々の邪魔をする一人に変身することもあり得る。

やはりここは慎重になるべきだろう。

これがただの旅行やキャンプならもっと気が楽なんだけどな。

見知らぬ土地で異世界探しだからな。慎重にもなる。


「用がないなら帰ってくれ! 自分はまだ眠い」

お爺さんは我慢出来ずに大声を上げる。

うーん。さすがにもう隠せないか。

今こそ告白する時だな。

洗いざらい話すことにした。


                 続く

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