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消えたアークニン探索隊

サトさんは話したくて話したくてウズウズしている。

でも自分からはどうしても言えない事情があるそう。

さすがに無理矢理には聞き出せない。


アイに続いてタオが畳みかける。

「私も知りたいです。ねえ先生」

二人とも俺を巻き込む方法を覚えた。責任は俺にあると言う訳だ。

「ああ…… 教えて頂けるならぜひとも。もちろん誰にも話しません」

他言無用を約束する。

でも約束は守れないんだよな。ミホ先生には絶対知らせるから。

それ以降は関知出来ないしね。


「本当にこの人たちはうまいんだから。乗せられそうだよ」

話好きなサトさんのお陰で思いがけない貴重な情報が得られそう。

これも一つのフィールドワーク。

あとは余計なことは聞かずにただ黙っていればいい。

そこが問題。果たして俺たちに出来るか?

特にアイが心配だ。余計な一言で場の雰囲気を悪くしなければいいが。


「仕方ないね。少しだけだよ」

「やった! 」

アイが抱き着いて来る。いやそこまで嬉しいことか?

内容によるだろ? 俺たちと同じようにやって来た者の哀れな末路。

本当はあまり聞きたくないな。同じ運命を辿りそうで怖い。


「あんたらみたいにたまたま迷い込んだ登山客がいたの。

彼らは何て言ったかしら…… そうそうアークニン探検隊だわ。

その迷惑なアークニン探検隊は本当にしつこくてね。

存在もしない旧東境村や異世界について住人に根堀り葉掘り聞き回ったって訳。

挙句に家に入って盗みを働いたり畑をグチャグチャにしたり酔って暴れたり。

そうやって好き放題して町の人とトラブルに。暴虐の限りを尽くしたって訳。

歓迎していた住人も頭に来て町から出て行くように迫ったの。

この町から出て行かんかってね。おっとここまで。これ以上はダメ」

いきなり打ち切ってしまう。まずいと思ってストップがかかった?

事の顛末を聞いてから判断したかったがこれで充分だろう。


「ではこれで。ありがとうございました。さお前たち行くぞ! 」

引き際が大事。いつまでもしつこくしたら話すものも話さない。

次回にでもまた聞けばいいさ。

「ちょとまだ続きが…… 」

「もう結構ですよ。俺たち宿探しがありますんで」

少し冷たいがあっさり戻る振り。

「待ちなよ! ここからは本当に危険だよ。聞く覚悟はあるね? 」

サトは確認を取る。そして周りに人がいないことを確かめてから声を抑えて話す。

とても重要な話だと一発で分かる。


サトさんによる長い長いお話。

「追い出されたアークニン探検隊の連中はそれでも粘ったんだよ。

ただ住民の予想以上の団結で居られなくなり二、三日したら姿を見せなくなった。

めでたしめでたしなんだが一つ謎が残った」

「謎ですか? 」

「ああ謎だ。奇妙な話さ」

やはりこれ以上は聞きたくないな。何か怖そう。


「まあ聞きな。驚いたことに奴らは山を登って帰った訳ではないの。

外には見張りがついた。山の通りにも当然人が交代で見張りについた。

それは逃さない為では無く奴らが去ったことをいち早く知らせるため。

おかしなことに誰もこの山を登って帰って行くとこを見てない。

知らないうちに消えていた。忽然と消えちまった。

それはそれは住人たちに気持ち悪がられてね。

まだいるのではないかと家々を手当たり次第見て回った」

「それでそれで? 」

「ほら遮らないの! 今一番大事なところなんだからさ」

堪らずに合いの手を入れ叱られてしまうアイ。

「はーい! 」


「でも結局発見されなかった。

そこで奴らが言っていた異世界。

本当に異世界へでも行ったのではないかと噂するようになってね。

そんなはずないでしょう? 夜にでも町を後にしたんでしょう。

監視の目を掻い潜るのは難しくない。

奴らはそう言う訓練だってやってるでしょう?

たかが住民では監視にも限界がある。

トイレ行ってる間に出て行ったと言うのが有力だね。

この時お世話していた者が責任を取らされた。可哀想に結局村八分にされてね。

最終的には町を出て行っちまったよ。その後どうなったかまではね。

相当恨んでいたみたいだよ。奴らを受け入れたのは総意だからね。

これでは話が違う。

おっと話が長くなったね。これが実際に起きた奇妙な事件さ。

恥になるからね絶対に他言しないでおくれよ」

うわ…… 凄い話になって来たぞ。

聞いたことを後悔するレベル。

これは早く立ち去った方が良いな。


               続く

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