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タピコ改めタオ

東常冬町に到着。

ついに第一町人を発見した。

それはまだ小さな二人組の兄弟。

どうにか彼らの母親から話を聞くことができた。

問題は今夜の宿だな。


二人の手を掴み走る素振りを見せる。

俺って演技派?

「馬鹿! 悪いことは言わないから今日はこの村に留まるんだよ!

命の保障はないよ。ここにはね獣だっているし何て言っても人食いが現れる。

あの化け物を見たらあんたらもうお終いだよ! 」

脅しをかける第一村人の兄弟の母。見事に俺の演技に引っ掛かった?

あまりにも簡単すぎて拍子抜けするほど。ただその分罪悪感に苛まれるが。

気にしない。気にしたら負けだ。


「それではどうすればいいのでしょうか? 」

「まあいいや。立ち話も何だからそこのベンチにでも座ろうか」

あれ…… 普通は家に上げる展開のはずなのにな。これはまだ警戒してる?

俺たちを心配してくれてるとばかり思っていたがまだダメか……

信頼を勝ち取るのはそう簡単ではないらしい。

仕方なく促されるままベンチに腰掛ける。

雪のぱらつく中で楽しくお喋り。寒いよ。風邪を引いてしまうじゃないか。

いくら心で叫ぼうと決して届きはしない。


「サトって言うんだい。よろしくね」

「こちらこそお世話になります」

「ああん? 何か言ったかい? 」

サトは子供たちに家へ戻るように命じる。

俺たちとの会話を心配そうに見つめていた二人。うん可愛いものだ。

「俺は高校の英語教師の青井と言います。こいつらは教え子です」

「あれ登山部じゃないのかい? 」

訝しがるサトさん。

「実は登山部とタピオカ部を掛け持ちしてまして…… 」

正直に話してみる。明かせるところは明かし協力を求める。


「このベンチ…… 」

「ああ登山から戻った者の一時休憩所。出発の時にも使ってるようだね」

ミホ先生たちの姿はもうない。

三人で調査に取り掛かるとしよう。


続けて生徒たちを紹介する。

「こっちが元気なアイ。登山は初心者で困ってるんですよ。

それでタピオカ部の部長の何だっけ? タピコ? タピコでいいんだよな? 」

「先生本当に忘れたんですか? 最低ですね」

そう言うがずっと部長と呼んでいたから。紛らわしくないようにタピコに。

イセタンとタピコ。分かりやすいだろ? 


「タオです。初めましてタピオカ部の部長タオです。以後よろしくお願いします」

本当に真面目なんだから。少しは羽目を外していいのに。

アイと行動するようになって変わったと思ったが基本は真面目なんだよな。

だからこそ頼りがいがある訳だが。

「はいよろしくね。良い子たちだね。先生は知らんけど」

俺の正体に感付いてるとでも言うのか? 恐ろしいなまったく。


自己紹介を済ませ交渉に入る。

「いや…… 野宿が危険と言われましても…… 

どこか泊まれるところを紹介してくれませんか? 」

「ここは生憎旅館がないんだよ。さっきも言ったように観光は考えてないからね。

観光客が来ることも今の時期ぐらいでほとんど皆無でね。

観光客? 迷い客? あんたらみたいなの少しいるが村の者で何とかしてるのさ。

でも最近は警戒する住民も増えてね。なかなか泊まらせてくれないよ。

家においでと言いたいがね。身元がはっきりしないとどうも薄気味悪いと言うか。

悪いね。それに亭主が物凄く嫌がるし部屋だって狭いしね。

近所の者だって黙ってない。村八分にされたら敵わないからね。

ほらあの時だって…… 」

サトさんはまずいと表情を変える。


「何かあったんですか? 」

アイが興味を示す。

「おい失礼だろ? これ以上はやめておけ」

「でも…… 面白そうだしさ。先生もそう思わない? 」

アイはもう止まらない。興味津々だ。

俺だって立場がなければ喰いついていただろう。

でも俺はこいつらを引っ張て行く指導者であり隊長だ。

情けない真似はできない。


「でもねこれは村のことだから…… 」

これ以上は無理だと頑な。

しかし鼻をひくひくさせている。

これは言いたくて堪らない様子。

背中を押してやれば何でも吐きそうな勢い。

意外にも秘密を秘密にしておけない性格なのかもしれないな。

こちらにとっては好都合ではあるが。


                 続く

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