第一町人発見!
東常冬町に到着。
二チームに別れて旧東境村への手掛かりを探る。
アイとの恋人ごっこを終え元の教師と教え子の関係に戻る。
タピコとアイを両手に鬼退治と行きますか。
「さあ二人ともついて来い! 」
浮かれに浮かれる。おかしなテンションになってしまった。
「もう先生! 」
アイが笑ってくれた。
「ははは…… 済まん済まん」
恐怖心から無理矢理明るく振る舞っている。
そのことを二人だけでなくここの者にも決して悟られてはならない。
変な人だ!
「おい顧問に向かって…… あれ隣にいるよな? もしかしてタピコ? 」
「先生。あっちあっち」
タピコの指す方に二つの影。
まずい…… もう捕えられるのか? 嫌だなそんな人生。
「面白い格好をした兄ちゃんたちだな」
俺たちのスタイルを馬鹿にする者。さぞかし立派なんだろうな?
ついに第一村人発見! いや町だから第一町人か。
ボロボロの服を着た半袖スタイルのクソガキ…… ではなく男の子たち。
こんな寒いのになぜか暑そう。体温を感じる。まさかの異常体質?
一応は挨拶ついでに寒くないか聞いてみる。
「ああん? これが寒い? 寒いって何だ? 」
どうやら言葉が通じるらしい。その確認だけは出来た。
「俺たちは遠い国からやって来た。お前たちを食っちまうぞ! 」
さあこれくらいかまさないと奴らは本気にはしない。
「ははは…… バカだな。人食いはここにはいないさ」
小さい方がおかしなことを言う。思ってた反応と違うな。
怒って向かって来るか泣いて逃げ惑うかのどちらかだと思ってたのに。
もしかして本当にいるの?
「おいやめろって! よそ者に言うなってじっちゃんが言ってたろ? 」
不穏な話。これは触れるべきではなかったか?
ただ大きな手掛かりかもしれないのでもう少し誘導してみるかな。
「でもよう兄ちゃん」
近所のクソガキがつるんでるのかと思ったらどうやら二人は兄弟らしい。
「おいおい。まさか本気で人食いがいるってのか? 」
「それはいるさ。こんなでっかい化け物で…… 」
「うわああ! 」
無理矢理止める兄。ガードが固い。
「お前ら何者だ? この野郎! 」
ついに弟の方が怒りだした。
兄の方に怒ればいいのに。
気持ちよく話していたのを遮ったのはそこの兄の方だからな。
俺たちは大人しく聞き入ってただけじゃないか。
「これ! あんたたち何をしてるんだい! 」
ついに話の分かる者が現れた。
「怪しいね。観光客な訳ないし…… ひょっとして学生さんかい?
登山部の合宿でもしてる? 」
そうだった。設定をどうするかで迷ってたんだ。
さすがに異世界探索部と名乗れば怪しまれる。
その手の伝説や噂話ぐらいは聞いてるはず。すぐにピンっとくるだろう。
そもそも人食いの噂もある訳だしね。ああ寒気がする。
ただの登山部でいいのか悩んでいた。それでは詳しく話が聞けないからな。
「何を言ってるんです? 私たちは異世界…… 」
タピコが正直に話そうとするのでストップをかける。
少々時間をもらい二人とこそこそ話し合う。
「先生正直に言った方が得策ですよ」
「待て…… まだ信用できない。それに警戒されるだろうが? 」
「だったら二人ともいい考えがあるよ」
自信満々のアイに任せることにした。
「実は私たちこの人に誘拐されたんです! それでここで大人しくしてろと」
アイがとんでもないことを言い出す。
「ははは…… 冗談ですよ冗談。最近の生徒はすぐからかうから。ははは…… 」
とんでもなく焦ってるので怪しまれる。
「本当かい? どうも変なんだよね。部員がこの二人ってのもね…… 」
誘拐犯の方がしっくりくるおかしな状況。
まあ登山部には見えないよな。格好は本格的でもないし。
「いえ今チームごとに村を回ってるんです。いわゆる挨拶周りですね」
「何だそうかい。私もそうだと思っていたよ」
「実は…… 道に迷ってここは常冬町ですよね? 」
「ちょっと先生…… 」
アイの口を押える。気づいたタピコに目配らせ。
代わりにタピコに押さえててもらう。
「あんた何を言ってるんだい! ここは…… 教えていいのかな。
まあいいや。ここは東常冬町です。地図がないからよく間違えるのよね。
地図を作ればいいんだけど観光客を嫌がるからここの人は。
観光客が喜ぶようなものも何もないしね。
お隣と間違えて来る登山客が多いの。
あんたらも登山部だからしっかりしなくちゃね」
「失礼しました。さあ急ごう! 」
「はあ? 何を言ってるんだい! 今はもう四時じゃないかい。
少しでも迷ったり遅れたら真っ暗だよ。どうするつもりだい? 」
「問題ありません。野宿でも何でも準備は出来てます。
何と言っても登山部ですから備えはばっちりです」
二人の手を掴み走る素振りを見せる。
俺って演技派?
後は俺の演技に感動して応えてくれるといいんだが。
続く