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第一回山登り選手権

『酒は体に毒』

今月の標語にでもしようかな。

生徒たちには下手に興味を持たれても困るので酒の危険性を説く。

納得したとは思わないが多少の注意喚起にはなっただろう。

別に俺は異世界否定派だが飲酒否定派ではない。

ただ登山で景気づけに飲むと言う発想が怖い。

足元はふらつくし目は回るし危険が増すだけ。

お酒はやっぱり室内で落ち着いて飲むのがいい。

間違っても登山中に飲むものではない。


「大丈夫か? 慌てずにゆっくりでいいぞ」

先頭に注意喚起して後方で動きの鈍い者を励ます。

登山は悪天候や視界の悪化でもない限りよく足元を見れば危険は少ない。

崖際やロープを使ったり沢渡り等の高度なテクニックを必要としない。

比較的ビギナーに優しい山。

だからって集中力を欠いたりふざけたりすれば怪我するが。

生徒たちもそんな馬鹿ではないしそこまでの精神的余裕もないだろう。

あとは雪の影響で滑りやすくなっているぐらいか。

滑落する危険性もあるがそれは登りよりも下りだろうな。

だから今のところ問題はない。


「ミホ先生は大丈夫ですか? 」

社会科見学の時はギリギリだったからな。

あれから合宿までの間に多少の体力作りをしたはずだ。

それでも実践となれば暑さで体力を奪われ……

ただここは常冬地方。暑さは大丈夫。問題は寒さだが着込めばどうにかなる。

防寒対策は万全。歩いていればその内暖かくなるさ。

それでも高山病と低体温症には注意しなければならない。

とは言え体力的にも暑さがなければ多少は限界を超えても大丈夫なはずだ。

「私は今のところ問題ありません。ただアイさんが苦しそう」

そう言うミホ先生も息が上がって苦しそうだ。

空気が薄くなってきたか?


「行けるかアイ? 無理するなよ。お前は初心者なんだからな。

歩けなくなったら俺が抱き上げてやる」

ミコはゆっくりだが疲れてる様子を見せない。

パピコはミホ先生に励まされながらどうにかついて行ってる。

「先生…… 」

「何だアイ? 」

「キモイ! 」

おいおい恥ずかしいからってそれはないだろ?

よくあの二人にも言われてたから耐性はあるけどさ。

それでも先生傷つくぞ。

さすがは美人三姉妹と言われるだけあってよく似ている。


第一回ど田舎山登り選手権。

登場選手七名による激しい戦いが繰り広げられています。

先頭は相変わらずイセタン。二位以下をドンドン引き離しております。

おっと常にマイペースを心がけたミコ選手が二位まで順位を上げました。

何と信じられませんね。壮大な番狂わせだ。

カズトが息を切らし後ろを張り付く。

これは一種異様な粘りに頑張り。凄いですね。

当初の予想通り異世界探索部のメンバーが上位を独占。

タピオカ部も頑張って欲しいですね。

四番手に人気英語教師青井サプロウタ。

手堅いですね。

そしてパピコが堂々の五位。部長の意地でしょうか?

続いて学校のアイドル的存在ミホ先生。

異世界探索の情熱に燃えてるようです。

ビリは美人三姉妹の三女。アイちゃん。

もう体力的に限界でしょうこれは。

おっと…… ハプニング発生。

何と先頭はお婆さんだ。お婆さんが一人前を歩いてます。

だがそれでも二位集団の追い上げで一気に吸収される模様です。

山登り選手権はまだまだ続く。


登山を開始してから一時間以上が経過。

最初のへばり具合から嘘のように速い展開。

なぜか速く進んでいる。

ゆっくり歩いていたつもりがなぜかスピードが速くなっている。

理由は簡単。

八月の暑い地獄のような登山ではなく雪が積もらない程度の寒さ。苦しさが違う。

問題は高山病や低体温症にならないこと。

ただ言われてるように上の方でもマイナスになるほど寒くなく防寒具で凌げる。

そう言えば昨日は終着駅近くで防寒具を着たっけな。

うん気持ちいい。多少空気が薄いが慣れれば問題ない。


予定では登り二時間、下り二時間弱に休憩一時間。

これで最低でも五時間以内に東常冬町にたどり着ける計算。

ただこれも老若男女合わせた平均の目安で。

若くて元気のいいメンバーなら三十分は早く登り切るはずだ。

だから逆算するとあと四十分もすれば頂上。

当初の予定よりも早い。

充分に休憩を取りラストスパートだ。


最後の休憩スポット。

と言っても地元の者が作ったであろう簡易的な机に岩の椅子。

そこには先客が。


              続く

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