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迷い

眠れないと白々しい嘘を吐いてミホ先生に構ってもらおうとする困った生徒。

まったく油断も隙もない。ミホ先生は俺のものだからな。


「実は俺も眠れなくて」

「もう子供なんだから。私も明日が楽しみです。ふふふ…… 」

楽しいか…… ボジティブ思考は決して間違ってない。

どんな困難な状況でも明るい未来を夢見る。

それが出来たらどれだけいいか。

だが実際はそんな甘くない。異世界探索はお遊びじゃない。

アークニンでさえ成し得ないようなことをしようとしてる。

本当にそのことを理解してるのか?

まあいいさ。今は生徒にせよミホ先生にせよ夢を見させとけばいい。


「それで異常は? 」

「眠れない生徒もいますが消灯の時間なので消しておきました」

うわ…… 意外にも強引。

「あのミホ先生…… 」

「それでは明日も早いのでこれで」

「待ってください! 」

二人は見つめ合う形になった。


チャンス。

手を掴んでこのままゴールイン。

あれ? これも和製英語だよな? 確か正確には……

「もう青井先生…… 」

嫌がる素振り。やり過ぎたか? それともただ恥ずかしいだけ?

どっちだ? どっちにしろ生徒の隣で出来る訳がない。何がとは言わないが。

俺はそこまで非常識ではない。

そっちの方が燃えるって奴もいるだろうが俺は違う。

まだ辛うじて教師を捨ててない。

教師がまだ聖職者だと言う仮定においてだが。


「その浴衣本当によく似合いますね。セクシーって言うと変ですけど。

寒いですので風邪だけは引かないようにご注意ください」

常冬村と言うだけあって夜は冷える。

大体三度かそれくらいだろう。

まだ夏だからこれで済んでるが真冬にはマイナス五度にまで。

想像するだけで寒いがそれでも北国よりもはるかにマシ。

いくら降っても積もることはない。

本当かまでは長期滞在しない限り分からないが。


それしてもここが異世界への扉。まだ第一チェックポイントだからな。

これ以降何が待ち構えてるやら。ワクワクよりもドキドキが勝る。

生徒たちのように何も考えず気にもせず人任せでいられたら楽しいんだろうな。

でもそうも言ってられない。

異世界への道のりが俺の想像の遥か上を行くならどうにもらない。

どう旧東境村に続いてることやら。

いくら地図があっても。トラブルは避けられそうにない。


「ミホ先生」

早く手を掴もうとするが焦ってままならない。

情けないな俺。大事な時はいつもこうだからな。

「本当におきれいですよ。いや本当に」

ダメだこれ以上どう褒めればいいか分からない。

女性の扱いは慣れてるつもりなんだがシャレた言葉が出てこない。

思った以上に緊張する。

「ありがとうございます。どうしたんですか青井先生? 変ですよ」


「ミホ先生! 」

自然と手を取る。さあ次の段階だ。

「はい? 」

「ミホ先生! 」

「私…… 」

部屋に戻ろうとするミホ先生を強引に引き寄せる。

やはり先週泊まった時にきちんと告白するべきだったな。

だがあそこでは気分が乗らないんだよな。

前夜にお楽しみをしてる訳で。


「あの私…… 」

はっきりしない。ミホ先生も俺の好意に気づいてながら焦らす。

まさかミホ先生もあの二人と変わらないのか? 俺をからかってるだけ?

疑念が生まれる。

ここまで鈍感でいられるだろうか? 俺だって人のこと言えないが。

「良いでしょう? 子供じゃないんですから」

有無を言わせずに迫る。


「そんな言い方…… 」

まだ躊躇ってる様子の彼女。

でもこの際気持ちなどどうでもいい。

勢いに任せて行ってしまえ。彼女もそれを望んでるはずだ。

さあ長い夜の始まりだ。


「ちょっと青井先生…… 」

強引に迫ろうとした瞬間に勢いよくドアが開く。

そうここはオートロックではない。田舎の旅館だから当然そんな機能はない。

ミホ先生が戻った時に鍵を掛けなかった。

これは女性がする防衛行動の一つ。

だとすれば俺をまだ信用してないことになる。

仲のいい同僚から顧問と副顧問の関係を経て恋人になったと思ったが違うらしい。

友だち以上恋人未満ってところか?

それとも本気で弟だと思ってないか?

俺に優しくしてくれるのは愛してるからじゃないのか?


ふふふ…… 結局俺の勘違いだったらしいな。

ここはやはり潔く身を引くとしよう。

そうやって格好つけているのは真実に目を向けたくないから。

ロックされてないドア。当然その結果悲劇を生むことに。


「先生います? 」

ドアを開けたのはアイだった。

勝手に入って来る。


                 続く

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