妄想ぐらいしたっていいじゃないか!
まだ冷たい。舌がどうにかなりそう。
ドライアイスを使っての趣向を凝らした料理。
あまりに独創的で俺の口には合わなかった。
それでもどうにか食べきって風呂へ。
よし誰もいないな。これならゆっくり出来る。
うーん気持ちいい。ふう本当に疲れた。
生徒の手前泣き言は言えない。
これはもうミホ先生に癒してもらおうかな。
へへへ…… それかタピコに乗ってもらうかアイに頬を張られるか。
うわ…… 俺って変態じゃないか。
まあこれくらいの妄想いいよね?
それにしても明日からどうする?
第一チェックポイントの常冬村に入ったが手掛かりらしきものがない。
あってイントぐらいか。
まあ考えていても仕方ないかな。
うん気持ちいいな。へへへ……
いきなり扉が開いたと思ったら例の二人組。
「うわ先生が笑ってる。気持ち悪い! 」
せっかくリラックスしてるところに邪魔が入る。
まったく風呂ぐらい静かに入れないのか?
「先生。妄想はいけませんよ」
普段生徒には絶対見せない裏の顔を晒す。
「見たな! ってお前たちだって似た様なものだろ? 俺は知ってるんだぜ」
脅しをかけ仲間に引き込んでしまえばいい。
「嫌だな先生。俺たちは別に…… 」
「うん。至って普通ですよ」
カズトはそう言うが至って普通の男子高校生なら妄想はするだろう。
何を言い訳にもならないことを言ってるんだ。
「それでイセタンは異世界行ったら何がしたい? 」
「まだ…… 見つけるのが夢でしたからそれ以上はちょっと」
尻をかく。そこは頭を掻くところだろうが。早く体洗って風呂に入れっての。
「だったらカズトお前は? 」
「異世界人に会ってみたいかな」
「おいおいそんないるかも分からないのにか? まあいいや」
カズトはちょっと太り気味の見た目や大人しい性格から女子から相手にされない。
それが悩みだとミホ先生に打ち明けていた。
今回の旅で少しは改善されたかな。
「そう言えばお前たちミコについて何か知ってるか? 」
あそこまでミステリアスだと気になるんだよな。全然ミコ情報が入ってこない。
「いや無口で異常に異世界に興味を示すぐらいしか」
「部長はまだいいよ。俺なんかほぼ無視だぜ。大体二人で話してるからな」
ミコについて何か分かると思ったが俺と大差ないか。
それにしてもカズトはミコにまで相手にされてないのか?
何だか可哀想になって来るな。
「それで先生は何してるんです? 」
「ただボーっとしてただけだよ。良いだろそれくらい」
そろそろ移動するか。立ち上がって生徒たちに背を向ける。
「どこへ? 」
「露天があるって聞いたんだがお前たち知らないよな? 」
二人は首を振る。まあ二人とも俺と似た様なものだからな。当たり前か。
「よし思い切って行ってみるか! お前たちはどうする? 」
ついでだから誘う。裸の付き合いって奴だ。
「せっかくですが次の機会にお誘いください」
イセタンが上手くかわす。
「そうか。残念だよ…… 」
「先生本気で行くんですか? 」
「ああそこに露天風呂がある限り行くのだ」
大浴場から繋がる雪道。
歩けばすぐのところに露天風呂はあるそう。
だが誰も入らないのと行くまでが異常に冷えるので脱落者が……
しかし今挑戦しないでいつやる?
では一歩。未知の世界へゴー!
うわ無理だ。これは寒過ぎる。
踏み入れて一分でリターン。
無理はするもんじゃないな。風邪を引く。
風呂を終え生徒たちを部屋に呼ぶ。
明日の予定の確認と今日の反省会。
「あのご飯美味しい」
「そうそうふっくらしていて」
他愛もない会話でリラックス状態のメンバー。
うんまだ余裕があるな。これが何日続くかな?
お食事とお風呂の話で盛り上がる。
だが俺はどちらも不満だったので何とも。
「先生露天風呂行ったの? 」
「ああでもすぐに引き返したぞ。行く奴いるのか? 」
「朝ご一緒しましょうか? 」
ミホ先生からの大胆発言。これは誘ってる?
「それからさ…… 」
ダメだ。誰も俺の話を聞いてない。
まったく何を考えてるんだだろう。
「眠いよ…… 先生早くして! 」
「まだ? お肌が荒れちゃう」
「ミホ先生。シャンプーありがとうございました」
「はいはい」
「暑いよ! 」
暖房のお陰で暑いらしい。まったく贅沢な奴だ。
「先生温度上げて。寒い」
慣れないのか冷え性なのか女性陣は寒そうにしてる。
さすがに浴衣ではどうしてもはだけるからな。それが良いところでもあるのだが。
それに対して暑がりなのは男たち。二人が文句を言う。
俺も汗が出る。気持ちは分かるぜ。
でもここは我慢。我慢のしどころだろう。
一つ咳払いをしてから始める。
続く