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東の果ての常冬村

列車は終点の西常冬駅に到着。

ついに異世界探索隊は降り立った。

当然のことながら我々七人以外乗客はいない。

ホームは寂しいもので無人駅になっている。

降りる者も迎える者もいないとどうもやる気がしない。


運転手にもっと詳しい話を聞こうと粘るも忙しいのか相手にされない。

地元民以外には優しくないのだろう。

よそ者は受け入れられないのかな?

それにしてもまさか無人駅とはな。

終着駅だと言うのにあまりにも寂しい光景。

これではバスも期待できそうにない。

そうなれば歩くしかない。

初日から苦行が始まるのか?


『ようこそ常冬村へ』

『東の果ての果て常冬村』

でっかくポスターが貼られている。

他に何もないのでかなり目立つ。


どうやら懸案事項だったバスはあるらしい。

よく考えれば地元民の足だから当然だよな。

最終のバスが来るのは後三十分後。それまでは震えてるしかない。

少しでも温まるように丸くなる。

じっとしてると熱が下がるので手足を動かす。

周りにぶつからないように気をつけながら寒さに耐える。


六時過ぎ。

辺りは薄暗くなってきた。

クッション!

ヒックッソン!

ヒーン!

独特なくしゃみをする者が一名。

「大丈夫かイセタン? 三連発は放っておけない」

「ああ気にしないでください。寒さと環境の変化に弱いだけで風邪とかでは……」

「大丈夫? 」

タピコがティッシュを渡す。

「ああ…… ありがとう」

こうして両部長が交流を深めて行く。

そう言えばこの二人俺を介してとは言えよく一緒になってたな。

まあ仲が悪いよりはずっと良いか。


真夏から真冬へ。一気に三十度も違えば体調をおかしくする者も現れる。

無理もない。放っておくと風邪を引く。

アイもミホ先生も鼻声。これは相当だな。

「大丈夫か? 」

「ふぁーい。先生こそ声が変だよ? 」

そうか…… 自分では気づかないものだな。

鼻声は女性陣には辛かろう。

ミホ先生は特に見ていて可哀想なレベル。

このままだとぶっ倒れるぞ。

早くバスが来ることを願うしかない。


最終のバスは案の定二十分遅れてやって来た。

まだいい方だろうとポジティブに捉える。

震える寒さに耐えながらどうにか持ち堪えた。


「先生今日はもう疲れたよ」

辺りは暗くなり恐怖する生徒たち。

疲れもピークを迎えただろう。

「大丈夫あと一キロ…… 」

「やった! あと一キロ乗れば」

「いや違う。バスを降りてから約一キロ歩く。そしたら恐らく旅館が見えてくる」

この辺りに旅館があると言われてるだけで予約などしてない。

休業中や潰れてれば当然泊まれずに最悪野宿になる。


「嘘? もう歩けないよ! 」

泣き言ばかり。いくら喚こうが事実は事実。何も変わらない。

これくらいのことなんでもないはずだ。

異世界はこんなものではない…… はず……


「ああん? ここで引き返すか? それでも構わないぞ」

再度意思の確認をする。これで二人以上が賛成すれば引き返す。

「それは嫌だ! 」

イセタンとカズトはワガママばかり。一体どっちなんだよ?

「だったら文句言わずに歩くな? 」

「はい。歩かせて頂きます! 」

まだやる気が感じられないが今はこれくらいでいいだろう。


「いいかお前たち。止めたければいつでも言え。その代わり泣き言を言うな! 」

少々厳しい言い方だがいちいち注意していたらキリがないからな。

ここで心構えをきっちり教える。疲れたなどと言わせない。

それにまだほとんど歩いてないじゃないか?

歩いたのは乗り換えのほんの少しの距離。これで疲れていたら世話ない。


ミステリートレインよろしく行き先を教えない。

それは生徒たちに楽しんでもらう為でもある。

だが不満が噴出してる訳だからきちんと教えた方がいいのか?


それからは騒ぐこともなく疲れたのか会話する者も僅か。

皆暖房の効いた車内で気持とよくウトウト。

登山経過のある俺でさえ隣のミホ先生につい寄りかかってしまうぐらい。


そう言えばバスの乗客っていたかな?

隣もいなければ前後左右にはいない。

丁度暇だから話を聞いても良かったが恐らく誰も居なかったのだろう。

そう言う意味では貸し切り状態だったのかな。


                  続く

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