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異変

列車は終点の常冬駅に着いたと思われたが……

真夏の日差しにさらされ十分以上待たされる。

そうかと思えばすぐに出発すると急かす。

訳も分からずに乗り込む。


見渡せばもう我々以外に乗客はいない。

当然だろうな。こんな田舎では観光も何もない。

俺たちはその観光客…… もっと言ってしまえば乗客とは反対に進んでいる。

いわば逆走してる訳だ。

それだけ異世界探索は孤独で寂しいもの。


これでアークニンの脅威から完全に脱した。

元から追いかけられてなどなかったと推測。

ただの恐怖から来る疑心暗鬼だったのだろう。

それでも警戒は怠らない。生徒たちには充分気をつけるように注意する。

特に後ろをつける者がいないか確認を取る。

生徒たちに先にさせミホ先生、最後に俺が。

これくらいやらねば安全は保てない。


切り離し。

ここからは運転手兼車掌のくたびれたお爺さんによるワンマン運転。

なぜこのようなことをするのか? アナウンスぐらいしてよね。

そのまま一気に終点まで行かせてくれれば楽なのに。

疑問と不満が湧く。


そんな中で能天気にまだかと問われるとイラッとする。

今どこであとどれくらいで着くのか俺にもまったく。

そこまでは調べてなかった。その必要もないと。

乗っていればいつか着くと考えていたから。

「大人しくしてろ! 」

ついイライラしてしまう。

「はい…… 」

しょんぼりする二人。これはやり過ぎたかな?


あれから一時間たっただろうか?

生徒たちが文句言うのも仕方ないこと。

それでも我慢。我慢だ! 俺だって着いたと思ったよ。でも違った。

うん? 何かおかしいぞ。違和感を感じる。

体が何か訴えている。これはどう言うことだ?


「あれ? 暑い? 暑くない? 」

女性陣も同様に騒ぎ出す。

「どうしたミコ? 」

一番早く異変に気づいたのはどうやらミコのようだ。

「暑いんです先生」

「そうだよねミコちゃん。何かおかしいよね」

部長が続く。

「車内が異常に暑いんです。恐らくクーラーが止められてるみたい」

ミコは冷静に原因を突き止める。

「我慢しろ! 我慢だ! 今が踏ん張り時だ」

どうにか気合いで乗り切るように指示する。

無茶苦茶だがこれも気の持ちよう。


「我慢って言われましてもね…… ねえ皆? 」

「暑い! 」

「クーラー! 」

暑いとクーラーを繰り返す生徒たち。大合唱で頭が痛くなる。


「車掌さんに早く! 」

なぜ俺が? 自分で言ったらいいだろうが。

しかも車掌と運転手は一緒。

言えるはずがない。運転手が対応してくれるはずないだろう?

馬鹿も休み休み言えと言うんだ。常識がないんだから。

まあ暑いよ。俺だって暑いし…… 寒い?

とにかく落ち着かせる。


「いいか気のせいだ。落ち着け! 落ち着けと言ったら落ち着け! 」

「先生が落ちついてくださいよ」

部長に言われる始末。

「うるさい! お前ら我慢と言ったろ? そんなことでは先が思いやられる。

探索がどれだけ過酷で疲れるか考えてみろ! ねえミホ先生」

同じ教師。甘えた生徒たちに喝を入れてやってほしい。

それが出来るのが真面目なミホ先生。彼女の言葉なら受け入れてくれるだろう。

「済みません青井先生。私も暑いのは大の苦手で…… どうにかなりませんか?」

頼みの綱のミホ先生が生徒側に着いた。これは裏切り行為では?


俺だって暑いよ。ついでに寒いよ。それから眠いよ。

でもそれがどうした? 気合いが足りないから弱音を吐くんだ。

アスリートを見習え。

本当に先が思いやられる。不安が大きくなるばかり。


「先生! 」

「青井先生! 」

俺に行けと願い? 命令? 好きにしろ?

「分かったよ。俺が交渉してくる。大人しく待ってるんだぞ」

生徒たちを残して一番前に。


「どうしました? 忙しいので対応できませんよ」

当然断られる。まあこれは予期してたこと。

問題はどう言えば俺が悪くない。仕方ないと言い張れるかだ。

うん? 何か奴らが騒いでるな? 

あれほど大人しく待ってろと言ったのに。世話の焼ける奴らだ本当に。


部長君とカズトがはしゃいでる。

「あれ涼しくない? 」

「本当だ。快適! 快適! 」

「先生もう大丈夫です」

アイが手を挙げる。

そうか。そう言えばさっきより涼しくなったような。

もうそろそろ夕方だし暑さも和らいだってところかな? 

だがどうも違和感があるんだよな。うーん。

涼しいと言うより寒くないか?


取り敢えず問題も解決したことだし席に戻るとしよう。


               続く

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