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タピタピチルチル満タイム

早めのお昼。

やっぱり電車旅と言ったら駅弁でしょう。

その中でも幕の内弁当が一番。

四人掛けのボックス席を回転させ皆で食べる。

それだけでもささやかな幸せを感じる今日この頃。

そうだな…… ミホ先生がお母さんで生徒たちが子供。

俺は子供でもいいが立場的にはお父さんかな。

傍から見ればそう見えなくもない。

ああそれには子供たちは大きすぎるか。

または俺たちが若すぎるかな。

制服さえ着てなければギリギリその可能性も。


弁当の奪い合いをしていた二人も夢中で頬張っている。

駅弁なら別に幕の内弁当でなくてもいいがどことなく風情が違う。

弁当が終わると楽しそうにお喋り。

リラックスはいいがこれは異世界旅。

そんな生ぬるくていいのか? 異世界は甘くないぞ。

 

大声が飛ぶ。

またあいつら…… どうもここ最近男の子が活発だ。

特にどちらかと言えば普通だったカズトが異世界の話になると夢中に。

部長君にまで挑発するから困っている。

どうもアークニンのところに行ってから様子がおかしい。

気のせいだとは思うがアークニンが絡んでいる以上楽観視できない。


カズトのことはミホ先生も気にしてるそう。俺は最初は全然気づかなかった。

でもミホ先生がカズトの変化を報せてくれた。

ただどこがどうとは言えないらしい。

些細な変化と言ったらおかしいが前とは決定的に違うのだけは間違いないそう。

異世界が目の前に迫って興奮するのは当然だがカズトのそれは尋常ではない。

まあ注意しておくに越したことはないな。


「ははは…… 子供たちではないですが凄くワクワクしてきましたね」

「もう青井先生ったらはしゃいで。ほらご飯粒」

素手で触る暴挙に出る。

「はしたないですよミホ先生」

「私? ご飯粒つけてる方が問題なのでは? 」

まったくそうは見えないがどうやらミホ先生も浮かれてるようだ。

ここで冷静なのはタピオカ部の二人といつも冷静なミコ。

いや違った。アイが常に浮かれている。部長がそれに合わせてる感じ。

だから冷静なのはミコだけ。


食べ終えるとミコは食後の舞と称して踊り出す。

これが彼女の日課なら止めるのは憚れる。

《カーブに差し掛かりますので揺れます。お気を付けください! 》

アナウンスが流れる。

「おいミコ! 危ないから座ってろ! 」

注意するもまったく言うことを聞かない。耳に入ってこないのか?

うわ…… ミホ先生頼みます。

男の俺では言うことを聞かない。

ここは男女関係なく生徒から慕われているミホ先生の出番だ。


「ミコさん…… うまいですね」

ミホ先生は見惚れるだけ。仕方ないやっぱり俺が。

「おいミコ危ない! やめろって! 」

カーブの揺れも構わずに舞いを続けるミコ。

夏休みであり週末でもあるので人は多い。

電車を乗り継げば乗り継ぐほど田舎で人はいなくなって行く。

とは言え踊って許されるはずがない。周りから冷たい視線を感じる。

引率の俺たちの責任だもんな。


「ミコ! 」

「そんな大声出さなくてももう終わりましたから」

いつもの冷静で無口なミコに戻っていた。

実に早い食後の舞だった。クソ! 舐めやがって!

つい怒りが爆発しそうになる。

「青井先生。抑えてください。ミコさんも悪気があったのでは…… 」

あってたまるか。神聖な儀式に文句をつけたくないが頭に来る。


「しかしですね…… 甘やかすと後が…… 」

ミホ先生の説得に加えアイまで参戦。

「ほら先生。リラックス! リラックス! 肩を揉んであげおうか? 」

美人三姉妹の一番下のアイ。

もうそんな風に呼ぶつもりはないがあの二人に言動が似てるんだよな。

ドキッとしてつい構えてしまう。

さあ弁当弁当。


「あの…… シャケいかがですか? 」

なぜか恥ずかしいそうに。

「まさかミホ先生はお魚食べれないんですか? 」

「いやそうではなくて。全部は食べきれなくて。

他にミートボールもどうですか? 」

苦手なのかな? 確か栄養はサプリで補うようなことを言ってたような。

「それでは遠慮なく…… 」

いつものお昼ではここまで親密になった試しがない。

やはり旅行での解放感が?


「きゃああ! 」

カーブではきちんと座ってないとバランスを崩すことも。

仕方なく抱きしめる。

ちょっとやり過ぎたかな? でも探索前に怪我されても困るので。

「ありがとうございます」

「いえシャケのお礼です」


「青井先生…… もういい加減放してくれますか? 」

「ははは…… 決してわざとではありません」

ドキドキしたな。

これもいわゆるつり橋効果って奴かな?

別に俺たちは付き合ってる訳でもないけどさ。


                続く

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