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旅立ちの朝に

旅立ちの朝に。

異世界探索隊ついに旅立つ。


八月上旬。土曜日早朝。

気持ちよく寝ているところを叩き起こされる。

「まだ眠いよ…… もう少し。もう少しだけ…… 」

「おーい先生。起きて。起きて。朝だよ」

猫なで声で起こしてくれる美人三姉妹の長女。つい甘えてしまう。

「へへへ…… もう少しだけ。どうせ雨だろ? 」

「残念でした。晴れてるよ」

二女は今日も元気らしい。この子の方がまだどうにかなりそう。

ただ気をつけないといけないのは本気で怒った時だ。

キレたら手がつけられない。怖いんだから。

静の長女と騒の二女。

そして二人が組むと隙がなくなる。

ターゲットは堕ちて行くしかない。


うわ眩しい……

雨だったら中止だったのにこの日差しだもんな。

快晴だよな。あーあ本当についてないぜ。

「早く行って! 」

冷た過ぎる。昨夜のことがなかったかのよう。なぜここまで出来る?

金曜日と土曜日にこれだけの違いがあるなんて俺には信じられない。

昨夜あれほど楽しんだのに二人は関心を示さない。

特に長女が顕著で二女はそれに付き合ってる感じ。

いつのものことだからもう慣れてるがもう少し何とかならないかな?

先生悲しいよ。


「遅れるよ先生! 遅れるって! 」

「分かったよ。行くよ行く」

「ほらこっち見ない! 」

「それよりお前たちもどうだ? 今からだって大歓迎だぞ」

二人が合宿に付き合ってくれたら俺だって元気が出る。

顧問の俺のやる気が出なければ異世界探索は失敗に終わるだろう。

いくらミホ先生や部長が張り切っても俺が沈んでれば見つかる物も見つからない。


別れ際の今が一番やる気が出ない。もはや腑抜け状態と言ってもいい。

それなのに彼女たちときたら寂しがる素振りも見せない。

それは実にご立派ではあるものの俺には耐えられないんだ。

今まではそうかもしれないが今回は特別なんだぞ?

月曜日には会えないんだ。それでも寂しくないのか?

合宿は長い。四泊以上することになっている。

もしかしたら今週は会えないかもしれない。お前たちは耐えられるのか?

今生の別れになるかもしれない。


「はいはい。興味ありません。早く行ってください! 」

まさかまた新しい男を連れ込む気か? ここは俺の家なんだが……

もう俺が邪魔になったか? 随分扱いが雑だな。

俺を嵌めてまでこの関係を続けたのに捨てる時はバッサリ。

ああ辛い。辛すぎる。

「そう言わずに楽しいぞ」

「しつこい! 」

イライラ気味の長女。これは来週は無理そうだな。


「だったらお前はどうだ? 」

二女をロックオン。

「先生…… 私虫苦手なの。知ってるでしょう? 」

知るかそんなこと。苦手なものまで把握できるかっての。

まだ可能性のあった二女の苦手なものが虫とは絶望的だぜ。

「虫か…… たぶん出ないよ」

「嘘はいいです」

冷静な二女。


「だったら三女はどうだ? 来るって言ってたか? 」

タピオカ部の者には最後まで参加を促した。

もちろん予定が入ってる者は除外。決して無理にとは言わない。

「来る訳ないでしょう! 馬鹿なの先生? 」

二女にまで馬鹿にされる始末。やってられない。


「やっぱり二人とも来てよ。寂しいんだ」

懇願する。少しはその気になったか?

「はいはい。私たちも先生に会えなくて寂しいです」

あれ? 意外にも素直だ。

「だったら…… 」

「興味ありません! 」

うわ悪趣味。期待させるだけさせて突き放しやがった。

性格が悪いからな。それを補うだけの美貌が備えられてるから虜になる訳だが。

それにしても本当にどうしようもない奴らだな。


「だったらもう一回だけ? 頼むよ! 」

「しつこい! 」

「これだけが楽しみだったのに…… 」

「ふふふ…… また今度ね」

機嫌が直った長女。これで来週も問題ないだろう。

「そうだよ。また今度ね」

「約束だからなお前ら! 」

「分かったよ先生」


「それでお前らついて行くか? 」

「だからしつこい! 」

「見送りぐらい良いじゃないか。先生泣いちゃうよ…… 」

同情を誘う演技で二人の気を引く。少々情けないがこれも手。

「しょうがないなあ先生は。見送りぐらい行くよ」

粘った甲斐があった。


こうして二人を同伴して駅に。


                 続く


カウント 2

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