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一枚の紙

「もうそれくらいで」

何回やっても結果は同じ。

諦めが肝心だ。無理なものは無理に決まってる……

そんな風に考えてはいけない。

テストや受験では諦めた者から脱落していくのだ。

絶対に諦めてはいけない。

ネバーギブアップ!

そう生徒たちに言ってる手前教師である俺が諦めてなるものか。


でもそれにも限度ってものがあるだろ?

もういい加減嫌になるぜ。

いくらミホ先生と秘密の特訓をしてるにしても。

彼女は真面目だからちっとも俺の誘いに乗ってこない。

お預けを喰らい続けるなど拷問に等しい。

あまりに昨夜とは違い過ぎる。

金曜日と土曜日ではこうも違うものなのか?


「よく見てくださいミホ先生。すべて紙です。

同じ紙に書かれています。分かりますか?

黄ばんでますがシミも虫食いの痕も。うわ汚ねえな! 」

まずい。つい下品な言葉を吐いてしまった。

ミホ先生は驚かれただろうか?

だが何事もなかったように紙の束に目を落とす。


「同じ紙なのは私も確認しました。

恐らく何か暗号みたいなのが書かれているのでしょう。

しかし素人の私の目からはただの白紙。余っただけに見えます。

それをただまとめただけ。

だからアークニン博士も気にも留めずにゴミだと判断したのかもしれませんね」

ミホ先生の見解には俺だって同意してる。


「アークニンの奴こんなものを掴ませやがって! 何を考えてやがる?

スケルトンより性質が悪いぜ! 」

怒りを紙束にぶつける。

だがそれではまったく手ごたえを感じない。虚しい限り。


「スケルトン? 確か前顧問でしたよね」

すべての元凶であるスケルトン。

奴さえいなければ…… 俺を誘わなければもっと穏やかな学園生活を送れたはず。

「はい。俺にタピオカ部と異世界探索部を押し付けた元凶。

留学して海外に逃げたスケルトンですよ」

恨みは忘れない。でも今は少し感謝している。

美人三姉妹のこともある。ミホ先生との関係も深まった。


そうだ。ミホ先生には引き受けた経緯を語っていなかった。

だからまだ俺を責任感の強い熱心な教師だと思ってるだろうな。

でも実際は美人三姉妹の魅力に惹かれて。

アークニンに騙されたと言うか唆されたが正しいかな。


「まあそんな言い方されなくても。

お陰で楽しい毎日を送れてるんですから。私も青井先生も」

常に信じる。人を疑うと言うことを知らないのだろうか?

他の人だとこうも違うもの?

「ミホ先生はポジティブでいけない。騙されますよ。

俺はネガティブだからどうしても…… まあいいか」


「もう遅いですね。そろそろお終いにしましょうか? 」

「そうですね…… うん? 」

眠くて一瞬記憶が飛んだような気がした。

ミホ先生の頑張りに何とかついて行こうとするがさすがに眠くて眠くて。

体力の限界。どうにか瞼を開いてるが限界。

早く眠ってしまいたい。

そんな風に考えてた。ははは…… もう投げやりだな。

紙束など実際どうでもいい。


うん? もしかしてこれは?

突如閃光が走り一つの発見をする。

煌めいたのだ。だがそれも僅かの間。

一瞬だったので覚えてるのかも疑問。

あれ…… 一体何を閃いたんだ?

まるで夢を見たような感じ。


「青井先生! 何か? 」

「それが…… おかしいな思い出せない」

「青井先生! 早く思い出してください! 」

「ああ…… そうだそうだ。もしかしたら…… 」

「どうしたんですか? 」

期待のまなざし。俺に縋るかのよう。

ここで少々無理を言っても聞いてくれそう。

やり過ぎなければ恐らくは。おっと俺は何を考えてるんだ?


「青井先生? どうされました? 」

「もしかしたら…… 」

「もしかしたら何です? 」

喰いつきの良いミホ先生。

やはりこれくらい喰いつきが良いとからかいたくなる。

「そうだこれこれ」

一枚の紙をつかみ取る。

「一つだけ他の紙とは違ってるんです」

厚さって言うか手触りがどことなく違うんです。

何で今まで気づかなかったのか不思議なくらい」

「本当ですか? 」

「はい恐らく何らかの手掛かりになるはず」

束から一枚を抜いて他の紙は別の場所に。


「これです。この紙には何か手掛かりが! 」

「大発見じゃないですか! 」

ミホ先生は嬉しそうに私の腕を掴んだ。

これはまさかの二人による最初の共同作業? 

興奮状態でなかなか手を放してくれない。

このままの状態でベッドインと行きたいが残念ながら我が家は布団である。

それにベットインは和製英語。

英語教師が安易に使ってはいけない。


                 続く


カウント 5

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