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無能な騎士が、罠に引っかかって痺れていたが、美人の冒険者はそれに上手く対応できた件について

「お前は副村長!俺が勇者と知ってのことか!」


 アレクは必死に立ち上がろうとするが、既に身体のしびれは全身に回っており、動くこともままならない。

 副村長は、アレクを温泉におびき寄せ、そして、機会をじっと待っていたのである!


「元々、私は悪の道から足を洗い、陰謀・計略・謀略を生業とし、《漆黒の烏》の一人として働いていたものです。しかし、もう歳も歳ですから、田舎暮らしで 《すろーらいふ》ということで、のんびりした生活を送っておりました」


 アレクは痺れをなんとか我慢しつつ、立ち上がろうとして、なんとか見栄えのするポーズを取ろうとする。

 しかし、手足が震えて、上手く構えることが出来ない。


「そんな折、 《漆黒の烏》の部下から連絡がありまして、この村にやってくる自称勇者だと言い張っている奴の一行を待ち伏せして欲しいと言われまして……私としては『自称・勇者?なんだそれ?』という感じだったのですが、組織の掟は依頼の散策を下手にやらないこと。ただただ、伝えられた内容を実行するのみです」


 プルチェとしては、悪の組織に属していた人間も、都会の喧騒を離れて田舎で 《すろーらいふ》 を送るのか……と思って、恐怖で震えた。

 そして、痺れが強くなり、とうとう立ち上がることすらできなくなっていった。

 副村長は笑みを浮かべ、そしてアレクへ近づいていく。


「さて冥途の土産に貴方が狙われたことについて説明させて頂きました。さあ、ここで死んでもらいましょう!」


 そう言いながら、副村長は緑色の液体が滴るナイフを取り出し、アレクに襲い掛かろうとする。

 ……だが。


「 《氷の刃》 !」


 ガキン!と、ナイフが氷に弾かれる。


「何!?」


 副村長は驚き、アレクの後ろを見る。

 するとそこには、杖を構えていたカノンがいたのである!


「やはり、温泉の罠は貴方の仕業でしたか」


 そう言いながら、カノンは副村長を睨む。


「な、何故、お前はピンピンとしているんだ……!?」


 カノンは呆れた顔をして、副村長に説明する。


「何故って……普通の冒険者だったら、あんな液体が置いてあったら罠だと思うでしょう……。もっとも、罠だと思わなかった人もいますが」


 チラッっとアレクを見る。

 アレクは痺れを我慢するのに必死で、どうやら話を聞いている余裕は無さそうだ。


「何はともあれ、罠にホイホイ引っかかってくれる勇者さまがいてくれて助かりましたね。こうやって、貴方たちが何を企んでいるかわかったわけですから」


 そして、カノンは杖を振りかざし、そして氷の刃を放つ。

 副村長は老体でありながらも、それを華麗に避ける。


「小娘、私が老人だからといって舐めるんじゃないぞ!元 《漆黒の烏》 の副村長の力を見せてやる!」


 そして、副村長は腰に付けていたナイフをカノンに投げつける。

 その速度は速く、常人ならば避けられないだろう。しかし……。

 カノンは冷静にナイフを杖で撃ち落とす。


「クッ!なぜ、魔法使いの癖に、ナイフに反応できるんだ」

「これですね」


 そう言うと、キラキラと光るスライムを取り出した。


「これは……まさか神経に作用する毒に、温泉と神経を活性化させるポーションを混ぜて……!?」

「さすが、副村長ね。毒には詳しいようですね」


 そして、カノンはスライムを副村長に投げつける!

 副村長は避けようとするが、老体なのか、反応が遅れてしまい、そのスライムを浴びてしまう。


「し、しまった!」


 アレクもなんとか動けるようになり、ほぼ壊れかけている棍棒を片手に、村長に向かっていくが、足並みはフラフラとしている。


「ここはいったん引こうじゃないか……だが、この借りは返させてもらおう」


 そう言うと、副村長は老体とは思えないスピードでその場から消えたのであった。


 「ふぅ、なんとかなったわね」


 カノンは安堵のため息をつく。

 そして、アレクは痺れたまま、地面に這いつくばっていた。


「アレクが覗きみたいな不埒なことを考える余裕がないうちに温泉を堪能しましょう」


 そう言うと、アレクを温泉のロビーへ乱暴に放り投げると、カノンとルルゥの二人はそのまま温泉を堪能するのだった。

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