最強すぎる助手のせいで命がいくつあっても足りない
ギルティア・ルンバルトは手足を縛られ石畳の上に転がされていた。目の前に迫る巨大な赤き竜。肌には竜から溢れる熱気が触れるが、死を予感した体は震えが止まらない。
「あなたも強情ですね。いつになれば白竜の稼働に協力していただけるのですか」
ユルゲン・クリフトは長髪の間から冷ややかな目をギルティアに向ける。
「ポーラは仕事の助手だ。都市の防衛になんて使わせない」
半年前に都市を最強クラスの災害竜が襲った。ギルティアの危機を察したポーラは災害竜と対峙した。ポーラが災害竜を退けたことで英雄扱いされ、様々な提案を都市の広報官クリフトが持ち掛けた。だが、平穏な生活を好むギルティアは全て断った。
その結果がこれだ。クリフトは代々伝わる宝玉を使い赤き竜を呼び出した。ギルティアを囮にしてポーラをおびき出すつもりらしい。
「助手はどちらでしょう。農業や運搬の仕事よりも白竜が活躍できる道はあります。都市の発展と住民の生活のためには白竜を操れるあなたの協力が必要なのですよ」
赤き竜が大口を開けると同時に白銀の鱗に青い目の竜が脇腹に体当たりした。駆け付けたポーラは赤き竜に長い尻尾を叩きつける。
「凄いですねこれ!この戦闘を映像に残しカッコ良く編集して全国上映しましょう」
「ふっざけんな!ポーラを巻き込むな」
ギルティアの怒りに呼応しポーラは光に包まれる。ギルティアの縄が光によって切られ自由となった右腕に光が収束する。竜同士の衝突に目を奪われていたクリフトにギルティアの左腕が掴みかかり白く輝く右腕の一振りで赤き竜を転倒させる。
「何ですかその腕は!そもそも竜は宝玉なしには制御できないはずです」
「さあな、親父がポーラを連れてきた時は親父の言うことを聞いたらしいが」
クリフトは目を見開きギルティアを突き飛ばす。
「親父、ルンバルト。あなたの父上の名はアルベルトでは?」
「なぜそれを?お前は親父の知り合いなのか?」
クリストは思案ののち宝玉を天に掲げると赤き竜を宝玉に封印した。
「今回は撤退します。だが、忘れないでください。白竜はこの都市の希望です。白竜の力を狙う人間は私だけではないのですよ」
ポーラは再び竜の姿に戻る。
災害竜のような脅威が再び都市を襲ったら再びギルティアは危険にさらされる。それ以外にもポーラを利用したい人間の魔の手はありそうだ。
ポーラは宝石のような瞳でギルティアを覗き込む。
「お前は俺の助手だろう。一緒に乗り越えよう」
なろうラジオ大賞3「助手」です。
ファンタジーを書いたことが無かったので、この機会に書き始めました。
最初に書いたときは1000文字を大きく超えてしまい、泣く泣くカットしました。
ポーラの最強描写はもっと盛り込みたかったです。
文字数制限内で綺麗に物語を書き手の方は本当にすごいと思います。
ご感想いただけると嬉しいです。