2箇所目
ここが、聖蘭高校。
今日は、聖蘭高校の入学式だ。
人生をやり直す、あの決断から一年になる。
あの日、目を覚ますと僕は中学3年の4月へ降り立っていた。
この一年、勉強に明け暮れた。
周りが彼氏&彼女とナニした、ドコに行った。
そんな話をして色気づく中、僕は一心不乱に勉学に励んだ。
全ては、蒼ちゃんと同じ学校に入るため、彼女と同じ景色を見るため、彼女の笑顔を間近で感じるため。
結果的に、僕は聖蘭入学の切符を勝ち取った。
そして、今日。
この大きなアーチ状の校門を潜れば、僕は晴れて聖蘭の真田欧介になる。
昨日、初めて美容院で髪を切った。
とにかく、カッコ良い男の美容師さんを指名してカットしてもらった。
美容師さんは、緊張でガチガチになってる僕に男でも惚れそうな笑顔で対応してくれた。
二人で相談してキメた髪型。
出来上がりには満足している。
メガネも辞めて、コンタクトにした。
まだ、自分でも違和感があるけど…。
でも、新しい自分になれた事が心地良い。
頭が少しスゥスゥするなぁ……グェッ!!
尻に強い衝撃を感じた。
気付くと、前方に膝を付いて倒れ込んでいた。
何事かと思い振り返る。
そこには、髪の毛を真っ赤に染め上げた、僕より5、6センチは背が高い男が不満げな表情で立っていた。
「おい、お前は何だよ」
「えっ……あ、あの。」
「俺の進路を塞ぐんじゃねぇ。どけよ、邪魔くせぇなぁ!!」
「ご、ごめんなさい。」
赤毛が再び足を振り上げたので、慌てて立ち上がり道を譲った。
赤毛は、僕を睨みつけて舌打ちを残して通り過ぎていった。
ふえっ……あの人も聖蘭の人も?
あ、あんなのも入学してるの……?
ま、まぁいいか。
気にしても始まらない。
今から、新しい高校生活が始まるんだ。
さて、じゃ……潜りましょうか。
足を踏み出した瞬間、柔らかい風に包まれた。
その風は優しい香りがして、僕を和ませる。
うん。
この香りを感じるため、僕はココまで来たんだ。
香りの方へ顔を向けると、そこに蒼ちゃんが居た。
僕と蒼ちゃんは同じタイミングで、アーチを潜った。