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一箇所目 3.1
夜空を見上げると金色に輝く月が見える。
今日は月が落ちてきそうだった。
それくらい近く、大きく見える。
「月を見ながら帰る、高校生最後の夜ってのも良いかな」
神秘的な月の魅力に引き付けられたのか、そう呟かずにはいられなかった。
帰り道の途中、住宅街の看板が目に入り、妙に頭に引っかかった。
《泉区6番地》
「泉区6番地?……あ、あの紙クズの!!」
その時、何かに引き寄せられるよう振り返った。
《雑貨屋 ローズマリー》
あの胡散臭い紙に載っていた店が、ひっそりと佇んでいる。
「えっ、なんで…本当に?」
今の今まで全く気づかなかった。
急に現れたような感覚に妙な不安を感じた。
だが雑貨屋は電気が消えていて、閉まっている……?
「やっぱり、あんな広告ガセだよな。時間が戻せるわけないからね」
我ながら何に期待しているんだろうか?
そんな都合の良いことが、ある訳ない。
そう思った瞬間、頭の上から色っぽい女の人の声が聞こえた。