表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

町内ノラネコ会議

作者: 若松ユウ

 半世紀前、高度成長期の集大成ともいうべきイベント、万国博覧会が大阪で開催されようとしていた直前、老人と子供がポルカに乗せてやめてケレと訴えたのは、ゲバ、ジコ、ストでした。

 これを現在の世界情勢に置き換えるなら、さしずめデモ、サギ、テロといったところかしら。

 ともかく、時代の急速な変化に押し流されて犠牲になりやすいのは、いつだって声の小さな力の弱い立場だということに変わりはないでしょう。


 さて。

 そんな私たちの不可思議な生態を、野良猫たちは、どういう目で見ているのでしょうか。

 日も暮れた夜の空き地で、人間の耳にはニャオニャオウーウー言っているようにしか聞こえない彼らの会話を、ちょっと翻訳してみましょう。


「やぁ、靴下くん。ご機嫌いかがかな?」

「なんだ、ハチワレか。今日は満足に昼寝できなかったから、ちょいと睡眠不足だ」

「縄張り争いでもしたのかい? それとも、変な物でも食べたとか?」

「そんなんじゃねぇよ。俺を何だと思ってやがるんだか。ほら、最近、詐欺に注意しろだの、不審者に気を付けろだの言って回ってる車が増えただろう?」

「あぁ、あのパトロール隊だね。たしかに、僕も少し迷惑してるよ。日中に身体を休めなきゃいけない立場が、まるでわかってないから困る」

「あら。何が迷惑なんですの?」

「おっ、今度は三毛か。なぁに、こうるせぇ野郎が増えたなぁって話さ」

「あぁ、そういうこと。そうね。ここのところ、なんだか騒々しいわ。たしか、一昨日のことだったかしら。駅前で、差別を無くそうって演説をして、居丈高なお巡りさんに止められた人間が居たじゃない」

「その話なら、僕もサビさんから聞いたよ。ひと悶着あって、取っ組み合いになったんだってね」

「おぉ、そいつは物騒だな。勇気を出して声を上げたってのに、ねじ伏せられちまったのか。かなわねぇな」

「可哀想なことだわ。通りすがりの小さい子たちが、変なトラウマを覚えなきゃいいけどねぇ」

「そうだね。差別に抗議して暴徒と化しても、差別は無くなるどころか、より強固なものになるばかりだ。賢くならなきゃ」

「もっともだな。差別している側からすれば、差別されている奴らの訴えに耳を傾けるよりも、そうした一部の狼藉者を見て、やはり鎮圧しないと駄目なのだと再認識してしまう方が多いだろうからな。こんな簡単なことも分からないなんざ、人間って奴は大バカ者だ。フア~」

「あらあら、靴下くん。まだ宵の口なのに、おねむなのね」

「満足にお昼寝が出来なかったんだってさ。そっとしておいて、場所を変えようよ」

「まぁ、そうだったの。それじゃ、お寺の縁の下へでも移動しましょうか」


 ハチワレ猫と三毛猫は、靴下猫を土管の中に残し、ヒョイと竹垣の上に飛び乗ると、そのまま夜の町へと消えていったのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっとブラックな猫ちゃん……! 
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ