表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/61

これが魔法?

 革の水入れが手に入ったことで確かに行動半径が広くなり、更に上の階層まで探索ができるようになった。

 レベルが上がって体力と俊敏があがることで、移動速度もスタミナも伸びており、更に上までも行けそうだ。

 また、逆方向の方にも探索を少ししており、1つ下の階層へも足を伸ばしている。


 しかし、いまだにこの洞窟の出口は見つかっていない。


 それは、水たまりから2つ上の階層を探索している時のことだった。


 何か魔物がいそうな感じはするが、周囲に特に魔物は見当たらない。

 慎重に歩を進めている銀次に、それは突然襲い掛かった。


 銀次の後脚のすぐ足元から、しっぽのすぐ後ろの地面から、前脚の左右それぞれの傍から、大きなミミズが飛び出してくる。

 さすがに銀次も、同時に4匹、さらに足元からの不意打ちに反応できない。

 なすがままに体当たりをくらったり、ミミズのくせに牙をもつ口で噛みつかれてしたりと、されるがままである。

 しかし、相変わらず特にダメージを受けていない様子にミミズ達も何かを感じたのか、地中に逃げ出していく。

 銀次も我に返り、逃がすかと慌てて前脚を振るうが、右前にいた1匹に爪が届き切り裂くことができたのみであった。


 地中に逃げられては、こちらから手を出すことができない。

 どこから来るのか周囲を警戒するが、どこから来るのか察知することができない。


 すると、かなり離れた位置に3匹のミミズが現れると、何やらウネウネとしだす。

 ミミズのいる手前の中空に、何やら模様が描かれだす。


 距離があるのであまりよく見えないが、本に書かれていた文字とも異なるようだ。

 銀次が訳も分からずにいるうちに、模様が完成したようだ。

 ミミズ達から何かの力が注がれると模様が、茶色に光り輝いて消える。

 そのとたん、ミミズ達の周囲に落ちていた石礫(いしつぶて)が宙に浮くと、銀次に向って殺到する。

 回避できる速さではないと判断し、前脚で飛んできた石礫を振り払うが、数も多くタイミングも揃っていないので、叩き落せたのは極一部で、その大半を身に受ける。

 石礫を受けた鱗を確認しても、特に傷付いたり剥がれたりはしていないが、それなりに痛みを感じたので、ダメージはあるようだ。


(これが魔法か・・・? さすがに厄介だな)


 すぐにミミズ達のもとへ全速で向かうが、間に合うはずもなくまたも地中に逃げられる。


 今度は、離れた3方向に分かれて出現し、魔法で石礫を飛ばして逃げていく。

 (らち)が明かないが、どこから来るのか分からないのでは攻撃が間に合わない。

 ミミズの魔力切れを狙うのもありかも知れないが、どの程度魔力がもつのか分からない。

 もしかしたら数時間、数日の間、枯渇せずに攻撃可能かもしれないのだ。


 なんとか次の攻撃位置が分からないかと、五感を研ぎ澄ます。

 地中を進んでいるはずのミミズ達がどこにいるのか、それを探ってみる。

 魔法を当てられてもほとんどダメージはないと割り切り、精神を集中する。


 チャイムとともに、【気配感知】を覚えたとログに表示される。

 すると、集中することでだいたいどの辺りにミミズがいるのかが、何となく分かる。

 1匹が潜んでいると思われる辺りに駆けると、勢いに任せて地面に前脚を叩きつけると、轟音とともに大きな穴が穿(うが)たれる。

 直撃はしなかったようだが、ミミズが驚き地表に飛び出てくる。

 それを慌てずに、爪で切り裂き仕留める。


 あとは、それを後2回繰り返すだけで終わりだった。


 ミミズは、ロックワームという名前で、素材になりそうな部位はなしなので、魔石のみ回収。

 肉の味は不味くはないが、おいしくないという感じで、【土耐性】のスキルを覚えられた。



 ◇ ◇ ◇



 気になるのは、ロックワームが使っていた魔法である。

 あの模様は、魔法の発動の際に見えていたので、魔法陣なのだろうか。

 メニューの魔法を確認すると、【ストーンバレット】が追加されていたが、使えないようだ。

 魔法のスキルがないと使えないのであろうか。


 ロックワームがやっていたウネウネを真似してみる。無論そんな事で魔法が使える訳がない。

 魔法陣を地面に書いてみようかと思うが、覚える暇なんかなかった。

 そもそもあれは中空に描かれたもので、地面に書いたところで意味があるのか。


(そう言えば魔石は魔力が蓄積されいるんだっけか)


 魔石を触ったときの感覚を思い出す。

 ロックワームの魔石を取り出し、手に持ってみる。

 何かが手に流れてくる感覚があるが、それをうまく体の中で巡らせることができないか意識を集中する。

 しばらくは魔石からの魔力の感覚で練習し、次は魔石なしで自分の中にあるはずの魔力を巡らせてみる。

 なかなかうまくいかないが、どうせ時間はあるのでと魔力を巡らせる練習を続ける。

 少しずつ魔力が体の中を動く感覚が、徐々にはっきりとしてくる。

 やがて、自分の中で魔力を好きなように動かせるようになると、今度は自分の体から外に出してみる。


 最初は、ポタポタと水漏れのような感じで少ししか出せず、出た後もすぐに消えてしまうが、徐々に自分の周囲で維持できるようになり、それも動かせるようになってくる。


 ここまでできるようになった時点で、スキル【魔力操作】を覚えた。

 覚えたというよりは、できるようになったからリストに載った感じであるが。


 次は、出した魔力を近くに落ちている石に当ててみる。

 石は重力を無視したようにふわっと浮き上がると、銀次の思うように空中を動き回る。

 仕上げに、えいっと気合を入れると、石はロックワームが使った魔法とは比べ物にならない速さで飛んでいき、岩壁に当たって爆散する。


(おお、これがストーンバレットか)


 と銀次は感動しているが、チャイムとともにログに出現したメッセージは、スキル【魔術】であり、依然として魔法リストにある【ストーンバレット】は使えなかった。


(今の自分がやったのは、魔法【ストーンバレット】ではなく、【魔術】による何か、ということなのか・・・)


 魔法と魔術の何が違うのかはよく分からない。

 だが、ロックワームが使った魔法と銀次が使った魔術では異なる点があった。

 速度や威力は、知力の影響だとしても、使った際に魔法陣が浮かぶかどうかである。


(違いはよく分からないが、似たようなことができているのだから問題ないだろう)


 銀次は、石礫を飛ばす以外のことができないか試してみる。


 まず複数の石を浮かべる事は問題なくできた。

 大きな岩の塊を浮かして飛ばすことも、少し多めに魔力を使えばできた。

 ただの丸い石を浮かべた後、形を変えて尖った(やじり)の形に変えて飛ばすこともできた。

 土属性を意識しているためか、石に対してかなりの操作をイメージ通りにできるようだ。

 大き目の石を浮かべて剣の形にした上で、空中を自在の振り回すこともできたので、イメージさえきちんとできれば問題ないらしい。


 次は、落ちている石ではなく地面の岩場そのものに対する操作をイメージしてみる。

 地面に対して魔力を放つと、そのまま地面がせりあがってきて、壁を作ることができた。

 更に、岩の分子結合をより強力にするようにイメージすると、少し壁が薄くなったが、代わりに強度がかなり上がったようだ。

 岩そのままであれば、銀次の前脚やしっぽで簡単に崩せるが、固めたあとは少し力を入れないとひびも入らない。


 再び地面に対して魔力を放つと、今度は鉄鉱石が地面からいくつか浮き出てきた。

 地面の中に埋まっている鉄鉱石だけを選んで抽出してみたのである。


 それらを混ぜ合わせて大きな塊にすると、鉄以外の不純物を除いていく。

 ただ炭素はある程度は含まれている必要があったはずなので、少し残しておくようにする。

 炭素含有率がどの程度がいいのかなどということは知らないので、勘に頼ることにするが、結果として鉄ではなく鋼として問題ない含有率であった。

 鉄塊(アイアンインゴット)を作るつもりが、鋼塊(スチールインゴット)ができてしまったようだ。


 あとは、この鋼の塊の形を変えて、ちゃんとした剣にしてみる。

 西洋剣はよく知らないので、日本刀の太刀にしてみる。

 実際には細かな造りは知らないし、なんとなくそれっぽい感じにした程度だが。


 ただ、このままでは本当は刀とは言えない。

 鍛造(たんぞう)ではなく鋳造(ちゅうぞう)しているので構造が異なるはずだし、焼入れなどの必要な処理が実施していないことになり、硬さやしなやかさが足りなく、脆いはずなのだ。

 そんな知識はないので、単に「硬くなれー!」とだけ念じてそれなりに硬くしておく。

 あと、刃は薄くするようにイメージして切れ味を出しておく。

 目の細かい砥石で砥いだ後の状態をイメージしたが、きちんとできているかは分からない。

 (つか)(つば)については、諦める。

 トカゲの皮ならあるが、うまく加工して巻くのは無理だろう。


 手に持って見たが、見た目のわりに重さは感じない。

 実際にはそれなりに重いのだが、腕力が高いのでそれを感じないのだ。


 いかんせん、人間の手指ではなくトカゲのような竜の前脚である。

 だいぶ器用に扱えるようになってきたが、ものを掴んで振り回すには不向きなのだ。

 いざとなった際に、すっぽ抜けてどこかに飛んでいく可能性は否定できない。

 それでも、小さな竜幼生の体ではリーチが伸びるのはメリットがあるので、成長するまでの繋ぎとして、ある程度使えるように練習しておいたほうがいいのかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ