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ドラゴンだったらしいよ

 ステータスのサブウィンドウに、ズラズラと情報が表示される。


 名前: ???(知立 銀次)

 種族: 竜幼生

 位階: 3

 魔力: 1,260

 腕力: 126

 体力: 150

 俊敏: 22

 知力: 128

 精神: 153


 基準が分からないので、表示されている数値が果たして高いのかどうか判断がつかない。

 ネズミ達を相手に簡単に倒せていることを考えると高いのではないか、という程度だ。


(待て待て、落ち着こう。ツッコミ所が多すぎでどこからいけばいいのかよく分からないぞ、これは・・・)


 名前が???になっているのは、未定という感じだろうか。

 本名が括弧書きされているのは、本名だからだろうか。

 自分で勝手にキャラクター名を決めれば、ここに表示されるようになるのかも知れない。

 もしくは、役所みたいな所に登録すればいいのかも知れない。

 いずれにせよ、自分一人しかいない状況では、特に名前も意味を成さないだろう。


 種族ってなんだ。

 竜幼生ってなんなんだよ。

 トカゲだと思っていたが、この体は竜なのか?

 生まれたての竜ってってことか?

 竜って、つまりドラゴンだよな。

 ゲームなら後半のボスとして出てくるような強力なモンスターのはずだ。

 ただ、味方になると途端に弱くなることもあるので注意が必要だ。


 いやいや、何を注意するんだ。


 混乱のためか、自分の脳内でもセルフツッコミをしている始末の銀次。


(どう見てもトカゲなんだけどなー。竜なら翼があって飛べたりするよね?)


 既に、自分が竜であることに対してのツッコミは諦めたようで、すんなりと受け入れてしまっている。

 自分の背中を見ようと振り返るが、そこまで首が回らず首から肩、背中にかけては見ることができない。

 しかしそこに翼ガ生えているのであれば、少なからず視界に入るはずだ、と銀次は考える。


(翼のない竜なのかな? でもそれってトカゲと変わらないような・・・)


 竜とはいったい・・・うごごご!

 などと下らないことを考えながらも、もう竜について考えることはやはり諦める。


 魔力が他と比べてやけに高いのは、魔法の効果の補正ではなく、MP的な扱いなのだろうか?

 と考えていると説明文がポップアップしてくる。


 魔力:

  どれくらいの回数、魔法および魔術を使用できるかを表す。

  効果の高い魔法・魔術ほど、多くの魔力を消費する。

  時間経過とともに少しずつ回復する。


 やはりMPの認識で正しかったようだ。

 自動で回復してくれるとは、なんとも親切なシステムだ。


 しかし、この表示だと最大MPしか分からないのではないか。

 どれくらい残っているのかも表すのなら、

   1,260/1,260

のような表記でないといけないのでは。


(つまり残量は自分で管理しろってことか)


 そもそも銀次は魔法の使い方も分からないので、今は気にしなくてもいいだろう。


(MPはあるのにHPがないのは隠してあるからか?)


 体力が名前的にはそれっぽいが、数字的に違うだろう。

 隠されているのか、数値化できないものなのかも知れない。

 HPが1万あっても、頸動脈をブスリとやられた状況で、生きていられると思えないし。

 ゲームならHPがゼロになったら死んだり気絶したりするが、現実には同じ程度の怪我であっても、それを受ける場所次第では死んじゃうしね。


 他の項目の説明を見た感じ、ざっくりとこんな感じらしい。


 腕力: 物理攻撃に影響。日常では重いものを持てたりといった効果もある。

 体力: 防御に影響。スタミナ、疲労回復速度にも影響する。

 俊敏: 素早さと回避に影響。手先の器用さにも影響するらしい。

 知力: 魔法・魔術の効果に影響。理解力や判断力にも影響する。

 精神: 状況異常への抵抗に影響。焦らず落ち着いていられるらしい。


 俊敏だけ低いのは、竜が成長すると恐らく大きくなると思われるが、巨体であまりに素早いのも変だからだろうか。

 あまり高くなると、どこかの聖闘士(セイント)のように音速どころか光速を超えるとか、訳がわからないことになりかねないし。


 ステータスを見終えたので次に移ろう。

 と考えると、勝手にステータスのサブウィンドウが閉じてメニューに戻る。

 使い勝手は良さそうだが、相変わらず理論とかよく分からないUI(ユーザインタフェース)だ。


 次はスキルを見てみよう。


 スキルを選択すると、いま覚えているのであろうスキルの一覧が出てくる。


 創造神の加護

 精神支配無効

 即死無効

 生命力自動回復

 体術

 暗視


(なんかいきなり凄いものが書かれている気がする・・・)


 創造神の加護ですよ。

 たぶん創造神って一番偉い神様だよね。

 そんなのを頂いてしまって問題ないのだろうか。

 そんな神様に加護してもらえるような覚えはないんだけども。


 そもそも創造神とはなんだろう?

 日本の神道なら天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)伊邪那岐命(イザナギノミコト)伊邪那美命(イザナミノミコト)とかが該当するのだろうか。

 仏教には創造神の概念はなかった気がするが、宗派による差異もあるかも知れないし、元々のインドでの教えの内容なぞ銀次は知らない。

 いずれにせよ、日本であれば創造神といった表現はしないだろう。

 と言うことは、ここはやはりゲームのような仮想世界なのか、それとも他国や異世界のような所なのだろうか。

 メニュー画面が日本語で出ているので、何らかの形で日本の影響のある場所なのだろうが。


 そのような事を考えながら、創造神の加護を注視すると、やはり説明がダイアログで出てくる。


 創造神の加護:

  創造神アスシアルフにより祝福を受けたものが得られる加護。

  全てのステータスに大幅なプラス補正がかかる。

  同時に精神支配と即死に対する耐性を得る。


 はい、来ました。

 創造神アスシアルフ? 当然聞いたことがありません。

 今までにプレイしたゲームなどでも、聞いたことがない名前だ。


 知らないものは知らない、という事で割り切る事にする。

 知らない神様からの加護とか、罰当たり(ばちあたり)も極まりないと思うが、ありがたい効果のようなので見知らぬ神様に感謝をしておこう。

 高いステータス値と、スキルにあった精神支配と即死の無効化は、この加護の効果であったようだ。


 即死はともかく精神支配とはなんだろう、と説明を出してみる。


 精神支配無効:

  精神に作用する状態異常を完全に無効化する。

  対象:恐怖、混乱、痛痒、魅了、隷属


 創造神の加護を得て強大な力を持つものが、他者に操られたりするなよ、と言う事であろうか。

 加護により力を得た人を利用して、悪事が働けないようにする、という保険なのかも知れない。


 生命力自動回復は、時間で怪我が癒える効果のようだ。

 恐らく、この生命力ってのがHPなのだろう。

 これも、この先大いに助けられることになりそうなスキルだ。


 しかし、わざわざこのようなスキルがあると言うことは、魔力と異なり生命力は自動で回復しない、と言うことだろう。

 普通に考えたら、自然治癒を超えた範囲で勝手に傷が治るとかあり得ないだろうし。


 体術は、格闘攻撃の攻撃力や命中率に補正がかかるスキルのようだ。

 確かにネズミ相手に、体当たりや爪、しっぽでの攻撃をしていたが、そういった攻撃をうまく扱うためのスキルなのであろう。

 魔法がある設定の世界ならば、剣とか槍とかもあるのだろうけど、残念ながらそれらの武器を扱うスキルは、自分にはないようだ。

 この先手に入れることがあれば、試してみても良いかもしれない。

 この竜の体で扱えるならば、だが。


 スキルに関する表示や説明文にも、スキルレベルのような表記はないので、スキルのレベルが上がることで勝手に強くなる、と言った便利な仕様ではないようだ。


 暗視は、その名の通りに暗い場所でも見える事。夜目が効くと言う事だろう。

 これを覚えていなかったら、この暗い洞窟ではどうしようもなかったところだ。


 そう言えばログには、暗視と生命力自動回復は後から覚えたもののようだったが、内容を見ても特にその条件が思い付かない。

 いずれ何かしら分かるだろうと、スキルの確認はこれで切り上げる。


 次は戦技。

 名前からして、戦闘用のスキルかな。

 強い戦技や魔法でバッタバッタと敵をやっつけたり、と言うのはやはり男の子なら憧れる。

 中身は元おっさんの竜幼生だが。


 戦技を開いて確認すると、一つしか登録されていなかった。


 ワイドスラッシュ:

  広範囲に横薙(よこなぎ)に斬りつける攻撃。射程と攻撃力にプラス補正。

  利用可能武器種: 片手剣、大剣、大斧、大刀


 説明を見る限りでは基本的な剣技のようだ。

 でも銀次は剣は持っていない。

 爪の切り裂き攻撃も、剣と同様の扱いと言うことだろうか。


 試しに、右前脚の爪を横に払うように振ってみる。

 何回に一回は、爪の先に射程を伸ばす効果があると思われる白い刃が出ている。

 戦技名を叫んだり、メニューから選んだりしなくても使えるようだ。


 どうやって覚えるのか、使う条件があるのか等、まだ不明な点もあるがとりあえずは置いておこう。


 次にワクワクしながら魔法を選んで見る。


(おおう・・・)


 最初から四足歩行なので変化はないのだが、気分的にはorzのポーズである。

 期待して開いたのに、魔法のウィンドウは空っぽであった。


 レベルが上がれば覚えるのかも知れないし、魔法を覚えるためのスクロールやオーブが必要事項なのかも知れない。

 今後に期待しておくことにしよう。


 次のアイテムも残念な結果だった。

 当たり前だが、銀次は竜として生まれてそのままなので、何も持ち物を持っていない。

 リストが空っぽというのが、当然の状態である。

 肉とか持ってたら表示されるのかな、と捌いたネズミ肉を手にしてみるが特に変化はない。

 両手で抱えてみたりしても変わらない。


 何が表示されるのだろうと、メニューのアイテム欄を意識してみると、例の説明文が出てきた。


 アイテム:

  アイテムストレージに収納されているものの一覧を表示する。

  ソートや表示条件の指定が可能。

  選択することでアイテムストレージから取り出すことも可能。


(アイテムストレージってなんだよ・・・)


 確かにRPGでは、バカでかいと思われる鎧や木材はおろか、コテージとか船までアイテムとして持ち運んでいたりして、理不尽だと思ったことはある。

 それらは、手持ちではなくストレージと言うところに入れて持ち運ぶということなのだろう。


しかし入れ方が分からない。


「キューキュ、キュ!(アイテムストレージオープン!)」


 ・・・


 特に変化はない。

 キュとしか泣けない竜幼生が使うことは想定していない、という仕様バグじゃないだろうな、と不安になる。


 アイテムストレージ!

 ストレージオープン!

 開けゴマ!


 色々と試してみるが、アイテムストレージとやらが開くことはない。


(いい加減、そろそろストレージにこの肉を入れさせてください・・・)


 と疲れてきた銀次が念じると、手に持っていたネズミ肉がフッと消える。


(お? おお?)


 慌ててメニューのアイテム一覧を確認してみる。


 マイティラットの肉

  魔物マイティラットを捌いた肉の塊。

  手に入れやすいがさっぱりしていて美味。

  少し血抜きに失敗したため品質が少し落ちている。


 ちゃんと入っていた!

 しかも地抜きに失敗したことまで分かる。

 血抜きした本人としては、余計なお世話だと思わないでもない。


 しかし、お陰でネズミの名前はマイティラットだと判明した。

 弱かったのにマイティ、つまり力強いとか名前負けしてませんかね?

 普通のネズミに比べたら遥かに強いんだろうから、それでだろうか。

 しかも、魔物とか書かれている。

 ただの野生動物かと思ったけど、何が違うのだろうか。

 とりあえず考えても仕方ないので、ストレージの検証に戻る。


 リストにある肉を選んで、出ろ!と念じると消えた肉が突然地面に現れる。


(これは凄い)


 先程捌いた肉を、ストレージにほいほいと放り込んでいく。

 手に持たなくても、直接触れて念じることでストレージに入れることができるようだ。

 ストレージから出す時も、メニューから開かなくても、何を取り出したいかきちんと特定出来れば取り出せるようだ。

 指定したものが複数ある時は、入れた順にとりだされるらしい。

 これは、捌いたマイティラットの肉の中に、血抜きに成功して高品質と書かれたものも混じっていたため判明したのだ。

 アイテムストレージの検証のついでに、血抜きの方法があってたことも分かって満足している銀次であった。


 残るメニュー項目は称号である。


 称号を開いて表示されたものは、ただ1つのみであった。


 創造神の使徒


 どうやら創造神様から加護を賜り、何かの使命を負ったものということらしい。


(ついさっきまで創造神を知らなかった自分が使徒って・・・それでいいのか?)


 不安になりながらも、気にしても仕方ないか、と割り切る銀次であった。


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