目覚め
静寂の中、偶に水滴が落ちる音が響き渡る。
俺は深い眠りからゆっくりと覚醒していくが、頭の中に靄がかかったように、ぼんやりとまどろんでいる。
どうやらうつ伏せになったまま寝ていたようだ。
そろそろ起きるかと体を起こそうとすると、いつもと違う感覚に襲われ、そのまま倒れこんでしまう。
起きようと手をついた感触と、倒れこんだ時の衝撃から、どうやら自室のベッドではなく砂地のような場所で寝てしまっていたようだと気が付く。
(・・・どこで寝落ちしたんだ俺は)
訝しみながら、うつ伏せのまま目を開けて周囲を見渡してみる。
しかし、周囲は闇に覆われており何も見えない。
(ここはどこなんだ?)
しばらく目を細めて何か見えないかと周囲を窺っていると、闇に慣れてきたのか少しずつ周囲の様子が見えてくる。
ピロン!と小さくベルが鳴るような音がするが、それを気にする余裕は既になく、自分が置かれた状況が理解できず困惑する。
闇の中から徐々に見えてきたのは岩場。
洞窟だろうか。
自分が寝そべっているのは、そんな岩出できた洞窟の中にある砂地でできた地面のようだ。
(あんなゴツゴツとした岩の上じゃなくてよかった)
そんなことを考えつつ、もう一度起き上がろうと手に力を入れようとする。
先ほど起き上がろうとした時と同じ違和感を覚える。
まるで自分の手じゃないような・・・と自分の手を見てみる。
(手が・・・ない・・・?)
いや、確かに手はある。
あるのだが、それは手というより何かの前肢のようだ。
慌てて周囲を見渡すと、右のほうに水たまりがあるのを見つける。
先ほどからしている水滴の音は、天井から落ちた水滴がこの水たまりに落ちた時に鳴っていたようだ。
水たまりの際まで急いで四つん這いのまま進み、覗き込んでみる。
すると、水たまりの中から覗き込んでいる爬虫類のような生物が見えた。
(トカゲになっている!?)
◇ ◇ ◇
俺、知立銀次は、起きる前の事を必死に思い出す。