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白の魔女との旅  作者: 鶯餡
1章 旅立ち
4/4

4.旅の準備

あけましておめでとうございます!

今回のお話はだらだら系です。


 朝日が眩しい。

 空気が美味しい。この森の何処が「白濁」なのだろう。

 とても清々しい森じゃないか。


 

 よし、朝日に向かって。


「さあ!いざ旅立ちのときいいいい!」

「…………」


 空高く拳を伸ばし、声をあげる。

 そして後ろにいるシロの声は、なにも聞こえなかった。


「おいおいおい!そこは掛け声しなよ!」

「えっ、あっ、ご、ごめん、しなきゃいけないの?」

「しなきゃいけないの!意気込みなの!」

「わ、わかった!」


 ぐっ、と真剣そうに拳を丸めたシロ。意気込みにこんなにも真剣になるなんて、そんな男が魔女だといったら誰が信じるだろうか。否、誰も信じない。

 やはり幼少期から眠っていただけあって、体は成長しても心はまだまだ子供……。どこぞの名探偵アニメの主人公の逆バージョンだ。だから、旅の最中悪い大人に騙されないよう私がしっかりしなくては!



「さあ!今旅立ちの時いいいいいい!!」

「お、おお!」


 そんな異世界人と魔女の掛け声は、森の中へと消えていった。







 ___それは、私が旅立つことを決意したあの時に遡る。

 旅の準備のため今まで眠っていた屋敷をあちらこちらと周り必要なもの、準備物を取り出した。


 あ、一番大事なお金……なのだが、

『確か金庫があるはず』というシロの助言によって金庫室に来た。さすがは金持ち。わざわざ金庫室がある上に大きな金庫が立ち尽くしていた。また、厳重な魔法でのロックがされており開けることは困難……かとおもっていたのだが。



「あ」


 カチッ、と気持ちのよい音がする。シロが少し触れただけで金庫は開いたのだ。そして中から出てきたのは一生遊んで暮らせそうな金貨たち。眩しすぎて目がいたかった。


「や、やべえ……シロの家ってどれだけ大富豪なの?」


 なんて問いかければ、


「わかんない」


 と、このお家を継ぐはずだった彼はそんなことを返した。何てことだ。シロすらわからないだなんて。シロの家系って一体……。

 とりあえずその中から四分の一ほど頂くことにして、スッと金袋に保存した。そして旅で持っていく(リュックのようなもの)の奥に押し込んだ。盗まれる可能性を防ぐためだ。


「とりあえず、これでお金の面はOKだね」

「おっけえ?」

「大丈夫ってこと」


 あぁ、シロは私の世界のことを知らないから、わからないのか。あんまりそういう言葉を言うのは止めておこうかな。お話についていけないだろうし。


「あ、そうだ服!」

「服?」

「うん、こんな服じゃ動きづらいよ……」


 私が通勤途中だったため、現在着こなしているのはパリッとしたス。それにタイツ。もちろんこの服は動くために作られたわけではないので旅には不向きだ。靴はヒールではないペッタンのものを使用しているのでいいのだが……。


「どんな服がいい?」

「え?そりゃ動きやすい服……」

「これに描いて」

「紙?」


 差し出されたのは、一枚の何の変哲もない紙と羽ペン。異世界っぽいのだが、どうして差し出されたのか。

 描けって、服を描けってこと?

 え、待って私高校の頃美術とか2だったんですけど……。てか動きやすい服といえどもどんな風がいいのかな。んー。


 やっぱり素材は伸び縮みするものがいいし……、あ、ズボン。長いただのズボンは乙女的にあれだから膝下ぐらいまでのでしょ?それから……。

 美術がなんだとか言っていたわりには、結構上手く出来た。


「動きやすい服ってこういうのなんだね」


 私が描いた服を、まじまじと見つめる。

 ちょっと恥ずかしいな。


「デザイナーになった気分だよ……」

「でざいなあ?」

「ええっと、服をデザインする人。服のがらとか形とか決めるの」

「へえ」

 

 先程控えようと思っていたのにポツリと出てしまっていたようだ。


「でも、なんでこんなこと?」

「…………とりあえず見てて?」

「お、おう」


 な、なに。

 何が起きるの。

 ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、シロをじっと見つめる。

 ニヤリ、とからかい気味に口角をあげたシロは紙から手を離した。

 お、落ちるよ!?何て言う暇もないまま、シロの足元には大きな魔方陣が書き込まれていた。

 え、ど、どういうこと!?

 風が吹き、シロを見つめる目が細くなる。目元に手を当てながら、彼を見つめていた。


 …………まさか、魔法!?


「“ーーーーーーーー!ーーーーーー!”」

 

 彼は魔法の呪文を唱えているのだろうか。にしても呪文の言葉がわからない。まさか、魔女特有のやつとか。

 呆けていた私だが、気づけば風は止み魔方陣は消えていた。ぱちくり、と目を瞬かせると、私は紙で描いた服を装っていた。


 シンプルな白い長袖シャツには、両手が開くリュック。膝下までのズボンに、ペタンとしたいつもはいている靴。靴下は汚れてもいいよう黒色に。

 できるだけ動きやすい素材を……とは描いたが、ここまでとは。

 はじめてみる魔法に感動してしまった。


「どう?上手くできた?」

「うん!めちゃめちゃ上手くできてるよ!すごい!」

「…………えへ」


 シロは、どうやら褒められたのが随分と嬉しかったようで、白い頬をぽっと桃色に染めながら、照れ臭そうにはにかんだ。

 か、かわいい……!弟ができていたらこんな感じだったのかな!めっちゃ撫でてやりたくなる……!なんかほんわかするって言うのかな!とにかく可愛い!!


「小さい頃は褒められたくて、すごく魔法の勉強してたんだ」

「おぉ、偉いねぇ」


 私なんて小さい頃は勉強大嫌いすぎていつもお母さんに迷惑かけていたっけなあ。結局テストはいつも赤点で……。あのとき勉強を怠ってたから今、ブラック会社に入ってしまったんだろうけど。

 褒められたいよねえ。大人になっても褒められたいよ。


「よし、これでまあまあ準備はできたのかな?」

「そうだね、アイカが誘ってくれたから、旅がどんどん楽しみになってきたよ」

「……いやいや、そ、そんなこと……」


 照れる照れる。照れるぞ青年。

 最終的にはシロが後押ししてくれたんじゃないか。

 もう。シロって天然たらしなのかな。だとしたら街中で無闇にナンパしないように私がしっかり見張っておかないと。


「でも、旅をして知識を増やすーって言うのはいいけど、まずはどこにいく?」

「んー、とりあえずまずはこの森から近い町にいきたいんだけど……」

「僕の生きていた時代には、この森、白濁の森の近くには一つだけ村があったかな」

「お、ほんと?」

「うん、今はもうあるかわからないけど……」


 いやでも、これはいい情報だ。

 一か八か、そこにいって情報収集するしかないだろう。

 旅、といえば国中ならばよいのだが、海外へいくにはどうしたらいいのだろうか。てかこの国って何国?名前も知らないんだけれど……。


「シロは他の国にもいきたい?」

「僕?」

「うん」



「僕は、アイカと行ける場所ならどこへでも行くよ」



 この美青年め!大人を誘惑しやがって!けっ!めっちゃかっこいいよ!!

 にっこりと笑うシロに裏では悪態という名の褒め言葉を告げて、私は考え込む。


「まあ、他の国にヒントがあるならいきたいね」

「そうだね、僕も本だけでしか知らなかったし、国名とか色々変わってるだろうし……フフ、楽しみだなあ」


 シロはクスクスと微笑む。その笑みに、私も自然と笑顔になれた。

 この一晩、私はシロと旅について話し合った。

 部屋などはシロが用意してくれたし、翌日出発という手筈になった。

 旅が楽しみだなあ、なんて思っていたら、全然眠れなかったけれど。

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