転生先では結ばれたい
この物語はフィクションです。
良い子も悪い子も普通の子も、まねしないでください。
『天星駅』
昨今の天体観測ブームに肖って、村おこしの一環として駅名を変えただけの、昔ながらの古い駅だった。
しかし天体観測の為に夜間運行が増発し、静かな村の夜は賑やかになった為、逆に天体観測がしにくいという矛盾にあう。
綺麗な星空と、古びた駅の雰囲気、そしてこの駅名がある噂を生んだ。
『午前0時丁度に来る、電車に飛び込むと転生できる。』
勿論、根も葉もない噂だ。誰も信じる者などいない。
そもそもこの駅で人身事故など起きた事がない。少なくとも駅名が変ってからは……。
しかし、そんな噂でも尾鰭が付いていく。
『午前0時丁度に来る、電車に飛び込むと転生できる。下り電車なら男性になれる。上り電車なら女性になれる。』
と、こんな感じだ。
勿論、誰も信じる者は……。
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とある女子短期大学の卒業式。
「アキナお姉さま、ご卒業おめでとうございます!」
在学生は卒業生にお祝いの言葉と共に花束を渡した。
「ありがとう、ハルカ。」
この二人は実の姉妹ではない。ス●ル制度を採用した、とある女子高の卒業生だ。
約四年の付き合いになる彼女達は、そんじょそこらのバカップルより熱々だった。
「アキナお姉さま。今日は卒業記念に天体観測にいきますよ?」
「ハルカの誕生日ですもの。忘れる訳がないじゃない。でも寒いからいっぱい着込んでいかないとね。」
「靴の中に使い捨てカイロを入れておくとホッカホッカしますよ?」
「足が痛くならない?」
「意外と大丈夫なんですよー」
なんて具合だ。
恋は盲目……なのかも知れない。その恋が大きければ大きいほどに。
この二人は噂を信じてしまったのだ。
二人に届いた噂は、さらに変化していた。
『午前0時丁度に来る、電車に飛び込むと転生できる。下り電車なら男性に。上り電車なら女性に。左手の薬指に赤い糸で繋ぐと来世で結ばれる。』
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『天星駅 23時59分30秒』
同時に見える、上り電車と、下り電車のライト。
「ハルカ……」
「お姉さま……」
目を閉じて口付けを交わす二人。初めてでは無いが、最後になるだろうキス。
『天星駅 23時59分59秒』
下り電車に飛び込む、アキナ(20)とフユト(22)。
上り電車に飛び込む、ハルカ(19)とナツオ(45)。
そしてホームに残ったのは、使い捨てカイロが入った二足の靴と、二本の赤い糸が絡まった4本の薬指。
無くなったのは、四つの命と、四つの魂だった。
さぁ、ハルカとナツオとアキナとフユトの転生先は如何に!!