表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/158

意外性と謎と肉じゃが

「ボランティア!?

 小町、お前今ボランティアって言った!?」


「ちょっと吉田カズ! 気安く呼び捨てにしないで貰える?

 大体前の席だからって聞き耳立ててるなんて下品極まりないわ」


 確かに僕は後ろの席が気になって仕方なかった。今朝は咲が家に顔を出さなかったし、それに…… 朝のキスもしていない。もしかしたら昨日はやっぱり怒っていたのかもと気になっていたのだ。


「別に盗み聞きしてたわけじゃないけど、真後ろでしゃべってりゃ嫌でも聞こえるよ。

 小町はどこかでボランティアしてるのか?」


「だから呼び捨てにしないでよ。

 話にも参加しないでよろしい。

 私は今蓮根さんと話しているんだから、あなたはさっさと部活へ行きなさいよ」


「いや、まあ、部活には行くけどさ。

 こ、小野寺さんとボランティアってのが意外な組み合わせだと思ってね」


 小町の素行についてはあまりいい話を聞かないのは事実だが、その噂話が事実とは限らない。それに、咲へそのボランティアの話を持ちかけている理由が知りたかった。


「私とボランティアの組み合わせが意外だからってあなたには関係ないでしょ。

 それよりも早く部活へ行かないとあのバカがここに来ちゃうじゃないの。

 うっとおしくて仕方ないんだからこのクラスへ出入りさせないでちょうだいよ」


「ああ、木戸のことか。

 なんでそんなに仲が悪いんだ?

 中学一緒だったんだろ?」


「一緒なら仲良くないといけないわけ?

 それに中学からじゃなくて保育園から一緒でもう飽き飽きしてるのよ」


 まさか保育園から一緒だったなんて初耳だ。それじゃ幼なじみと言うことになる。幼なじみと言えば仲がいいもんだってイメージしていたのでそれもまた意外な一面だった。


 これ以上ここで聞いていても怒られるだけだろうし、細かい内容は後で咲にメールして聞いてみよう。噂のように遊び歩いてる女子ってことじゃなさそうだし心配はないだろう。


「わかったわかった、盗み聞きみたいになっちゃって悪かったよ。

 それじゃ部活行ってくるさ。

 それにしても小町がボランティアかあ」


「だから呼び捨てしないでって言ってるでしょ!

 それじゃあなたは蓮根さんの事も呼び捨てにするわけ?」


 思わぬところに飛び火して、咲は一瞬目を丸くした。僕が応えに詰まって頭を掻いていると咲が言う。


「私は呼び捨てにされても構わないわ」


 ちょっと、咲はいったい何を言い出すんだ。二人の関係は秘密にしておかないといけないって言いだしたのは自分なのに、そんな馴れ馴れしくしていたらぼろが出てしまう。


 そんな心配をよそに咲は言葉を続けた。


「だって、友達やクラスメートくらいの仲ならファーストネームで呼び合うのはごく普通の事だったし。

 だから小野寺さんの事はこれから小町って呼ぶわね。

 私の事は咲って呼んでちょうだい」


「え、ええ、わかったわ。

 でも吉田カズ、あなたはダメなんだからね」


「はいはい、わかりましたよ。

 しかしなんでいつもフルネームで呼ぶんだよ……」


「なにか言いたいことでもあって?

 それともまだここで油売って、また校庭で叫びたいのかしら?」


 そうだった。遅刻することはできないから早く行かないといけない。僕はカバンを肩にかけてその場から立ち去ろうとした。


 そしてチラッと咲を見ると一瞬ウインクをしてくれた。どうやら怒っているわけじゃないみたいだ。安心した僕は上機嫌で教室を出ていった。



◇◇◇



「なあ木戸よ、なんで小町とあんなに仲が悪いんだ?

 さっき聞いたけど幼なじみらしいじゃん」


 僕は部室で着替えながら木戸へ聞いてみた。


「うーん、仲が悪いって言うより仲良くなったことは無いって感じかね?

 保育園から始まって小中高って一緒だけど、遊んだこともないし学校以外で会ったこともないくらいさ」


「へー、その割には向こうは木戸の事めちゃくちゃ嫌ってるよな。

 本当はお前の事が好きなんじゃないのか?

 そんな話よくあるじゃん」


「いやいやないない。

 あいつは俺らみたいな体育会系は嫌いなんだよ。

 だからお前にもきつく当たるだろ?」


「まあ確かにそうだなあ。

 さっきもなんだか知らないけど怒られちゃったし、意味わかんないよ」


「だから相手にしないのが一番さ。

 あいつの言ってることはいっつも意味不明だからよ」


 それは木戸の理解力に問題があるような気もするが、あえてそこには触れずに着替えを済ませてからグラウンドへ向かった。



◇◇◇



 咲は目の前にいる小町が不思議だった。カズがいたさきほどまではあんなにキツイ印象だったのに、今は穏やかな顔でボランティア先の話をしている。


 どうやら近所の養護園で絵本の読み聞かせをしているようだ。その中に日本語があまりわからない英語圏の子供がいるらしい。


「それで本題なんだけど、蓮根さん、いや、咲には私が英訳したものを添削してもらいたいの。

 絵本を読んであげるとほとんどみんな喜んでくれるんだけど、日本語が苦手な子は話が分からないみたいでつまらなそうにしてるのよ」


「なるほどね。

 そういう事情ならお手伝いさせていただこうかしら」


「本当に! ありがとう!

 咲が引き受けてくれて良かったあ。

 真弓先生にお願いしに行ったら、忙しいから蓮根さんに頼んでみてって言われちゃったのよ」


「まあそんなことだろうと思ってたわ。

 彼女って人使い荒いタイプね」


「ふふ、そうかもしれない。

 それじゃこれからよろしくね」



◇◇◇



 今日の練習も好調でいい感触だった。休み明けの調子としては悪くないスタートだ。でも何か物足りないのは、咲と二人の時間がないことへの寂しさからだろうか。


 気になっていた小町のボランティアの件は咲とのメールでなんとなくわかったし、咲と小町が友達になれそうならそれもまたいい傾向だろう。


 でも最後に咲が送ってきたメールには気になる一文が含まれていた。


『やっぱりキミってモテるのね』


 なにかの打ち間違いなのかどうかわからないけど、何の脈絡もなく最後に描いてあったこの文はいったいどういう意味なんだろう。咲と小町でなにか僕の話でもしていたのだろうか。


 今日も亜美から逃れるために、走って帰るふりをしつつメールしながら歩いて来たが、間もなく家につきそうだ。


 昼過ぎにメッセージが届いていたので母さんはもう家にいるはずだ。つまり、少なくとも今週は自由に咲の家に行くのは難しい。僕は急に気分が下がってしまいとぼとぼと歩きながら玄関を開けた。


「ただいまー」


「お帰りなさい。

 疲れたでしょ? お風呂湧いてるわよ」


 玄関を入って出迎えてくれた姿を見て僕は呆然となり、カバンは肩から滑り落ちていった。


 そこには、相変わらず年甲斐もなくかわいらしいエプロンをつけた母さんがにやにやしながら立っていたが、隣にもう一人、咲も一緒に僕を出迎えてくれたのだった。


「な、なんで…… えっと蓮根さんがうちにいるの!?」


 僕が驚きつつも深くは勘ぐられないよう努めながら母さんを見ると、どう見ても何か含んでいるにやけ顔で僕を見ながら答えた。


「さっき家の前掃いていたらね、咲ちゃんから声をかけてくれたのよ。

 それからご飯の支度をするって言うから家で一緒にって誘っちゃった」


 誘っちゃった、って…… もう若くないのに女子高生みたいなしゃべり方をしてバカじゃなかろうか。咲が一緒にいるから調子に乗ってるように感じてかなり恥ずかしい。


「お母様にお刺身のお礼を言ったんだけど、そのままお呼ばれしてしまって。

 図々しくてごめんなさいね」


「何言ってんのよ、咲ちゃん。

 あのマリネ、凄くおいしかったわよ。

 教わるのは私の方かもしれないわね」


「あれ食べちゃったの!?

 帰ってきてから食べるの、楽しみにしてたのになあ」


「帰ってきてちょうどお昼ご飯だったから頂いちゃった。

 すごくおいしかったわよ」


 おいしかったと言われると余計に腹立たしい。少しくらい残しておいてくれれば良かったのに、とブツブツ言っていると咲がまた作ってあげると慰めてくれる。


 それを見ていた母さんはまた下品なにやけ顔になり僕たちを冷かした。


「でもお母様、吉田君は女の子に興味ないんですって。

 残念だけど私諦めます」


「咲ちゃん、男を繋ぎとめるには胃袋を掴めばいいの。

 だから料理の腕がしっかりしていれば大丈夫よ。

 それと私の事は香って呼んでくれればいいわ」


「わかりました。

 じゃあこれから和食をしっかり覚えていきますね。

 よろしくお願いします、カオリ」


 ああ…… なんだかわからないノリの二人だが、これが女子トークってやつなのだろうか。まったく頭が痛くなってくる。とりあえず風呂にでも入ることにしてカバンから洗濯物を出してから自分の部屋へ向かった。


 階段を上がっている途中、背後からはまだ二人の会話が聞こえてきた。どうやら今日は肉じゃがらしい。咲がこないだうまく作れなかったからリベンジするつもりなのかもしれない。


 思わぬ展開に頭が混乱しつつも、咲がうちにいることが嬉しくて、僕は部屋に入って静かにガッツポーズをした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ