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僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白(しやく)
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】
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パンの山と決意表明

 今日は珍しく、午前の授業が始まっても眠くならずに僕としては真面目に受けていた。特に現国は咲に聞かれるかもしれないと思い真剣にノートを取っていたが、これは入学以来初めての出来事かもしれない。


 しかしそれも最後までは続かず、四限前の休み時間で僕の記憶は途絶えていた。次に僕の視界に入ったのは木戸、それに神戸園子だった。


「あれ? 僕寝てたのか? もしかしてもう昼休み?」


「何やってんだよ、そんなんじゃ留年しちまうぞ。

 今日もどうせ購買だろうけど、俺は行かねえからいつもんとこへ先行ってるからな」


「木戸が早弁しなかったなんて珍しいな、なにかあったのか?」


「いや、今日はパン子が差し入れ持ってきてくれたからさ

 結構たくさんあるからお前も弁当少な目にしておけよ」

 マルマンも今日から弁当二つ持ちだってよ、小遣いピンチらしい」


「じゃあ購買組は僕くらいか、さっさと行ってくるよ。

 神戸さん、僕もいただいちゃっていいの?」


「ええいいわよ、お父さんに木戸君の話したら昨日の売れ残り全部持っていけって持たされちゃったのよ」


 園子はそう言いながら手に持ったコンビニ袋を広げて中を見せてくれた。そこには確かに大量のパンが入っている。


「こんなにあるなら弁当買わなくても済んじゃいそうだよ」


「それでも良ければどうぞ、じゃあフリースペース行きましょうか」


「しかしよ、こんなに売れ残ったんじゃ商売あがったりじゃねえか?

 店大丈夫なのかよ」


「心配なら帰りにでも寄って買って行ってくれていいのよ?

 でも確かに売り上げは落ちてるでしょうね、この数年は近所にスーパーやハンバーガーショップが出来たりしてるものね」


「木戸のうちもだけど商売屋は大変だね

 うちの父さんはサラリーマンだから気楽かもなあ」


「サラリーマンも大変だと思うぜ、嫌でも頭ぺこぺこ下げたりしてさ。

 うちの親父なんて気に入らねえ客がいたら追い出しちゃうからな」


「ごっさん亭は今でもいつも混んでるのか?

 お前だって毎日店の手伝いしてるんだろ?」


「おうよ、大体二十時過ぎからは満員だな。

 俺は二十二時には引き揚げてるけどその後も結構遅くまで入ってるわ。

 ほとんどが親父の知り合いばっかだから、めちゃくちゃ売上があるわけじゃないだろうけど有難いよ」


「それも木戸君のお父さんの仁徳よ、きっとね」


 確かにそれはあるだろう。何度か話したことがあるが、乱暴に思えなくもない口調とは裏腹に結構細かなことに気を遣う方だった。それは木戸にも受け継がれているように感じる。


 三人で話しながらフリースペースについた時には丸山とハカセが弁当を食べている途中だった。そこにチビベンの姿はない。


 僕達が席に近づくと、弁当箱ではない大きな密閉容器に入った弁当を食べている丸山がこっちを向いた。


「よお、早かったな、カズは手ぶらかよ。

 飯はちゃんと食わねえと力が出ないぞ」


「今日は神戸さんが差し入れ持ってきてくれたから、それをごちそうになるんだよ」


「マジか、俺の分もあるかな?」


「おいおいマルマン、お前そのデケえ弁当今日二個目だろ?

 それなのにまだ食えるのかよ、恐ろしいな」


「お弁当二つ目なの!? 丸山君って体格通りよく食べるのね。

 持って来たパンは沢山あるから、まだ食べられるようならどうぞ」


 園子はそう言ってテーブルの上に持って来たパンを山積みにした。いざこうやって見ると相当の量に圧倒される。


「ありがてえ、甘いのが食いたいところだったんだ。

 このメロンパンもらうぜ」


「この! そのメロンパンは俺が狙ってたのによ、こっちのクリームパンにしとけよ」


「お、クリームパンもあったのか、じゃあそっちにするわ」


 丸山が弁当二個目だと言っている木戸もすでに自分の弁当は食べ終わっているはずで、さらにパンを選んでいるんだから、まったくこの二人の食欲はどうなっているんだろうか。


 僕はコロッケパンとコーンマヨを貰って食べ始めた。さすがにサクサクではなかったが、昨日の残り物とは思えないおいしさだ。


「神戸さんちのパンおいしいね、ありがとう」


「どういたしまして、気に入ってもらえたならまたもってくるわね。

 残り物はうちの朝食になって、私は毎日お昼の分も持たされてるのよ、いい加減飽きちゃうわ」


「確かに毎日同じものじゃきついかもしれないね」


「そうなのよ、だから食べてもらった方が助かるってわけ。

 今日はそのつもりだったけど、久しぶりにご飯のお弁当持ってこられてうれしいわ」


 家庭の事情とは言え毎日同じものじゃ嫌になってしまうのも頷ける。と言っても僕はほとんど毎日シャケ弁を食べているのだが、それはあえて言わなかった。


 パンを二つ食べた後、まだ残っている山の中からもう一つ、今度はアンパンを手に取ってから僕は丸山へ話しかけた。


「そういえばチビベンは食べ終わってどっかいったのか?

 いくらなんでも早いけど何かあったのかね」


「おうそうだ、実は昨日さ……」


 僕の問いかけに丸山が応えようとしたその時、背後から走りながら叫ぶ声が聞こえてきた。その声に僕はあえて振り向かない。その行動を予想もしていたし誰だかもわかっているのだ。


「せんぱーい! せんぱーい!」


 さすがに名指しじゃないだけマシだが、何事かと大勢の生徒が振り向いている状況は正直恥ずかしいものだ。


「お昼まだ終わっていませんか? 私もご一緒したいです!」


 声の主であるマネージャーの由布は、そう言ったか言わないかのうちに空いている席へ座ってテーブルの上に弁当箱を置いた。


「ダメって言う前に座ってんじゃん、さすがマネちゃん。

 この堅物に取り入ろうってならそのくらいの図々しさが必要だわな」


「なんでお前はそうやってけしかけるんだよ、マネージャーが本気にしちゃうだろ。

 男子みんながお前みたいに軽いと思うんじゃないよ」


「やっぱり吉田君て堅物なんだね、ずっと冗談かと思っていたけどどうやら本当なのね。

 でもそういうところが女子から見るとかわいいのよ、母性本能くすぐるわ」


 なぜか園子が話に加わってきた。木戸のせいでなんだかややこしいことになりそうだ。


「おもしれえだろ? もうさ、ストイックなんて通り越して変人だよ、変人。

 パン子も覚悟しておけよ、攻略難易度は高いぞ」


「そうかもしれないわね、とりあえず明日からもお昼はご一緒させてもらうことにするわ。

 図々しさで一年生に負けていられないものね」


「ちょっと? 僕を置き去りにしてどういう話になってるわけ?

 理解がついていかないんだけど……

 何となくいい話じゃないのだけは分かるけど……」


「カズ、ホントお前は鈍いんだな、パン子はお前のこと好きなんだよ」


 木戸が僕にそう言った瞬間、神戸園子と掛川由布がお互いを見つめ、視線の中央で火花が散っているような気がした。


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