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僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白(しやく)
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】
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小さな犬との出会い

 いつものように朝五時のアラームで目を覚ました僕は、寝る直前まで握りしめていたスマホに来ていた最後のメールを確認した。


(おやすみなさい、愛しいキミ)


 どうやら自分でメールを送ったところで力尽きてしまい、咲からのメールが来る前に寝てしまったようだった。


 とりあえず電池が切れそうになっているので、スマホを充電器につないでから洗面所へ向かった。父さんはすでに起きていて寝間着のままでストレッチをしている。


「父さんおはよう、ランニング行かないのに随分早いね」


「まあな、一応少しは体動かさないと調子が出ないしよ。

 コーヒーお願いできるか?」


「うん、顔洗ってくるから待ってて」


 僕は返事をしてから洗面所で顔を洗い、台所へ行ってコーヒーメーカーをセットした。自分ではほとんど飲まないコーヒーも、今では手際よく淹れることができるようになっている。


 部屋に戻りジャージに着替えた僕は玄関先で父さんに声をかけてから表へ出た。今日は一人だけどランニングを欠かすわけじゃない。一通りストレッチをしてから僕は走り出した。


 防災公園まで早いペースで走ってきた僕は、公園の芝生の上をゆっくりと歩いていったんクールダウンする。防災公園にはこんな早朝から何人もの人たちが犬の散歩やウォーキングに来ている。


 うちにはペットがいないので犬の散歩をする習慣はないが、こんな朝早くから散歩をするなんて結構大変なんじゃないかといつも思っている。


 ほぼ全力で走ってきたので息を整えながら屈伸をしていると、犬を連れた子供が近づいてくる。ダボダボのパーカーを来てフードを深くかぶったその子は、僕のすぐそばで足を止めた。


「あの…… おはようございます、吉田先輩ですよね? 二年生の……

 私、一年の若菜、若菜亜美といいます」


「一年生ってナナコーの? 新入生ってこと?」


 若菜亜美と名乗ったその女子はゆっくりと頷いた。どう見ても小学生か、いいとこ中学生くらいに見えたその小柄な子は、驚くことに僕の一つ下で高校の後輩らしい。


 深々とフードをかぶった奥からは、おどおどして目線を合わさないようにしているような雰囲気を感じる。


「おはよう、若菜さんって言うのか、僕の後輩なんだね。

 こんな朝早くから犬の散歩してるのか」


「はい…… 先輩も毎日ランニング、お疲れ様です。

 今日はおひとりなんですね」


 この若菜さんという女子は毎日散歩に来ているらしいが全然気が付かなかった。というか一年生女子に知ってる子なんてほとんどいないのでそんなの当たり前の話だ。


「いつもは父さんと一緒なんだけど、今日は仕事があるから僕一人なんだ。

 若菜さんも一人? この近所に住んでるのかな?」


「はい、私はいつも一人で散歩に来てます、この子と一緒に。

 防災公園までは家から五分くらいなんです」


「へー、犬のことはよくわからないけどずいぶん小さい犬なんだね」


「はい、私もよくわからないですけど…… 雑種ですし……

 でもおとなしくてかわいいんですよ」


「確かに吠えたりしないね、僕は結構犬に吠えられるたちなんだけどな」


「えへへ、先輩のことが気に入ったのかもしれませんね」


 若菜亜美の足元でおとなしくお座りをしている小さな犬はすごいスピードでしっぽを振っている。どうやったらこんな動きができるのだろうかと僕は不思議な思いで覗き込んだ。


 そんな会話をしていて僕はハッと我に返った。初対面の女子とこんな風に話している自分に驚いたのだ。もしかして段々と女子に慣れてきたのかもしれない。


 それともう一つ気になったのは、なんで若菜亜美は僕のことを知ってるのだろうか。練習を見に来ている女子の中にいたのかもしれないが、そんな取り巻き連中に興味のない僕が気が付くことはない。


 若菜亜美がおとなしくて話しやすいだけかもしれないが、かといって親しくなりたいと思うわけでもない。あまり話し込んでる時間もないので僕はランニングの続きをするからと言ってその場を去ろうとした。


 その時フードの奥で若菜亜美がつぶやく。


「先輩…… また明日もここへ来ますよね?」


「ん? 雨じゃなければ毎日来てるけどそれがどうかした?」


「いいえ、なんでもないです、練習頑張ってください」


「ありがとう、それじゃね」


 僕はぺこりと頭を下げた若菜亜美に背中を向けて走り出した。なんだかあの小さい犬と似てる気がして、飼い主と飼い犬が似てくると言うのは本当なのかもしれないと感じた。


 もう何年もここへ走りに来ているけど誰かに話しかけられたのは初めてだ。しかも同じ学校の後輩女子がいるとは思いもしなかった。


 というか、ここから五分くらいのところに住んでいるということは、もしかして中学も一緒だったのかもしれない。


 まあ接点がなかったから今まで知らなかったわけだし、同じ学校と行っても人数が多い学校で早々会うこともないだろう。


 犬に興味のない僕は、さっき若菜亜美の言っていたことを気にもせず復路を急いだ。


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