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僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白(しやく)
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】

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幼き君との出会い

 咲の向かった方向から何かを用意している音が聞こえ、しばらくすると小さな白いワゴンを押して戻ってきた。


 ワゴンから白い皿に乗った料理を取りテーブルに並べている。まるでレストランのようだ。肉汁の香りがここまで漂ってきてハーブティーの香りを打ち消した。


「お待たせ、用意できたわよ。

 お口にあえば嬉しいのだけど、ちょっと不安ね」


 僕はソファから立ち上がりテーブルへ向かい促されるままに椅子へ座った。目の前から立ち上るいい香りが僕の鼻を直撃し、思わずおなかが鳴ってしまった。


「うふふ、もういい時間だしおなかすいたわよね、いただきましょう」


 目の前に置かれた大きめの白い皿には、焼きたてで湯気を立てているハンバーグに付け合わせの野菜が乗せてあった。手元にはフォークとナイフ、それに箸が用意されていた。


 向かい合って座った二人の間のかごにはパンが何種類か入れてある。ハンバーグのほかにカップに入ったコンソメスープ、それとソースが入った小さな器が二つ置いてあった。


「すごいね、これ全部自分で作ったの?」


「パンは買ってきたものだけど、それ以外は一応私が作ったものよ。

 でも作ったって言えるのはハンバーグくらいね」


「十分すごいよ、僕は冷凍食品とカップラーメン位しか作れないからなあ」


「ナポリタンとかね。

 ほら、冷めないうちにどうぞ、褒めて貰えるのは嬉しいけど食べて味を確かめてからでいいわ」


「うん、いただきます」


 今日は朝の遅刻から始まって散々な日かと思ったけど、最後にこんな喜びが待っていたなんて。まったく起伏にとんだ一日だ。


 ハンバーグは肉汁たっぷり、柔らかくて程よい味付けの絶品だった。咲に勧められてつけてみた黄色いソースはマスタード入りのようで、肉の味にいいアクセントを与えてくれる。


 パンは見たことのない黒っぽい奴を選んだ。これはライ麦パンというらしく、歯ごたえのある固さが不思議な感触だった。


 僕は練習後でおなかが空いていたこともあって、出された料理をすべて平らげてしまいパンを三つも食べた。咲はそんな僕に時折目をやり優しく微笑んでくれる。


 こんな幸せな気持ちになれるなんて、あの階段での出来事からは想像もつかなかった。


「はああ、おなか一杯、すごくおいしかったよ、ごちそうさま。

 なんだか心まで満たされた気持ちになったなあ、ありがとう」


「どういたしまして、心まで満たされたなんて、あの秘密の成分が効いたのかしら」


「えっ!?」


「うふふ、冗談よ、でも愛情は込めたつもりよ、愛しいキミのためにね。

 今紅茶入れてくるからソファで待っていてちょうだい」


 嘘かほんとかわからない冗談は心臓に悪い。咲なら一服盛ったとしても不思議ではない雰囲気だからなおさらだ。そんなことを考えながら僕はソファへ座って部屋を見渡しながら待つ。咲は食器をワゴンに乗せて奥へ運んで行った。


 部屋の周囲にはいくつもの絵がかけてあり、今座っているソファの真横にも一枚かけてある。座ったままではよく見えないので僕は立ち上がり振り返るようにその絵を見た。


 そこには大きくてまん丸い目をした幼い少女が芝生に座っている絵だった。黒い髪を頭の上二か所で結び、前髪がきれいに切りそろえられたその姿に僕は見覚えがある気がした。


「あら? その絵が気になるの? かわいいでしょ」」


「うん、絵の事は全く分からないけど、目を見てると吸い込まれそうな魅力を感じるね」


「それパパが描いたのよ、この家にある絵は全部そうだけどね。

 モデルは私らしいけどとても小さなころだから覚えていないのが残念だわ」


「そうか、これは君、えっと蓮根さんがモデルなのか。

 道理でどこかで見たことのある子だと感じるわけだ」


「そうね、見たことあるのかもしれないわね」


「えっ? それはどういう意味?

 まさか昔会ったことがあるということ?」


「朝も言ったでしょう? 現実世界だけが全てじゃないのよ。

 この世に生まれ落ちたその瞬間から出会い結ばれることが運命づけられている、そんな関係が存在するの」


「えっと、精神のみの世界、だっけ?

 全然意味が分からないんだけど、そういうのってオカルトめいてて僕は苦手だよ」


「いいのよキミが苦手でも、私がちゃんと導いてあげるわ。

 さあ、熱いうちにどうぞ」


 隣を見ると、咲の両手にカップを持たせたまま話をしていたことに気がついた。なんだか申し訳ない気持ちになりながら僕はソファに戻り、目の前に置かれる紅茶を目で追った。そしてその僕のすぐ隣にためらいなく咲が座る。


 自分の家なのだから遠慮などしなくて当然なのだが、お互いの体が触れ合うほど密着して座ってきたことに戸惑い、かといってそれ以上避けようもない状況に、僕はどうしていいかわからず緊張し体をこわばらせるしかなかった。


 咲が紅茶を一口飲んでからふうっと軽く息を吐いた。僕も同じようにカップに口をつけたが、緊張のせいなのか、それとも熱さのせいなのか、今はその味がさっぱりわからなかった。

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