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僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白(しやく)
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】
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新学期といえば転校生

 話は二週間ほど前、始業式の日に遡る。


 僕達が高校生になり一年間過ごした後に訪れた二度目の春。早々に学校を辞めてしまったヤツもいたが、残った全員が無事に二年生になった。


 今日は始業式なので校長の話や新しい教科書の受け取りくらいしかやることが無い。そのため、放課後には野球部の勧誘についての相談を部員とすることになっていた。


 三年生は春の大会が散々な結果で終わり、後は夏に向けての猛特訓と受験や就職、そもそも一番大切な卒業に向けての追い込みもあるため勧誘にはノータッチだ。


 体育館から戻ってきてクラス全員がそろった後に担任が入って来た。教壇に立った教師らしからぬ美人は、去年と同じ岡田真弓先生で野球部の顧問でもある。学生時代はソフトボールで鳴らしたらしい。


 そしてその後ろから、うちの学校とは別の制服を着た女子生徒がうつむき加減でついてきている。


 クラスの何人かが転校生だ、とか、どこの制服だろう、などとざわついている。


「はーい、みんな静かにして。 今日からこのクラスの一員となる生徒を紹介します。

 では自己紹介してね」


「はい」


 その女子生徒はゆっくりと静かに返事をした。勧誘の文言を考えていた僕も思わずかたずをのみ、期待と緊張感の混じった空気が教室を包む。


 黒板に自分の名前を漢字で書き、そして振り向いてから教室内を舐めるような視線でゆっくりと見渡してから口を開いた。


「蓮根咲です。

 みなさん、どうぞよろしく」


 なぜかわからないが妙な迫力というのか緊張感というのか、あまり感じたことの無い雰囲気だ。例えるならキャッチャーとサインが決まらず息が合わないような、そんな感じか。


 真っ黒な髪は光が反射するほどツヤツヤで、大きな瞳には何か吸い込まれそうな迫力があった。整った顔立ち、すらっとしてシャンとした立ち姿は人を簡単に寄せ付けない雰囲気を醸し出している。


 その姿は、女子が苦手な僕でさえ思わず視線を囚われてしまう。


「それでは蓮根さん、とりあえず一番後ろになってしまうけど空いている席があるからそこへ座ってちょうだい。

 明日のホームルームと一限目に席替えと委員決めやるわね」


 そこで誰かが手を上げて確認した。


「明日は授業無いんですかー?」


「授業は無いわね。

 でも二限目からは入学式の準備と各委員会があるわよ。

 お昼までなので部活の無い生徒以外はお弁当は不要ってことになるかしら」


「了解でーす」


 他の生徒がまた手を上げて発言した。


「席替えはしないでこのままでもいいんじゃないですか?」

「そうだよ、今時男女並べるとかナンセンスだよ、真弓ちゃん」

「俺ももう机にいろいろ入れちゃったよー」

「この席に飽きたら学級委員にでも言って席替えしたらいいんじゃない?」


 何人かがわいわいと勝手な事を言っている。


「あらそう? 蓮根さん、あの一番後ろの席で構わないかしら?」


 一瞬の間の後、蓮根咲は答えた。


「ええ、問題ありません」


 うちの学校は基本的には三年間同じクラスで同じ担任だし、そもそも学業レベルが大したことないということもあるからか、教師と生徒がやたら親しげに話していることがある。


 僕はどうも年上の人に馴れ馴れしくするのは苦手なので、教師にはなるべくきちんと話すようにしている。しかし全員にそれを望むのは無理と言うものだ。


 結局席替えはなく一年生の終わりと同じ配置になった。たしかこの席に決まったのは全員の希望と取り合いじゃんけんだったか。そのため不満も少ないのだろう。


 席替えがなかったことに僕は少し喜んでいた。グラウンドの見える窓際の席は気に入っていたから、というのが今までは最大の理由だった。


 蓮根咲が僕の席へ近づいてくる。空いているのが窓際一番後ろの席なので当たり前のことだ。そして僕の席はそのひとつ前である。だからと言って特別ななにかがあるわけではないが、それでも僕はこの席で良かったと感じていたのだった。


 周囲の視線を気にせずスタスタと歩いてきた咲、僕の視線はいつの間にか彼女の一歩一歩を追っていた。しかし、じっと見ているのがばれてしまうのは嫌なので、目が合う前に手元のノートへ視線を移した。


 僕の横を蓮根咲が通る瞬間には緊張が最高潮に達していたように感じる。今まで意識したことのないような感情、それは自分でも驚いたが、咲を一目見た瞬間から僕は心を奪われたようなのだ。


 その証拠に、周囲に聞こえるんじゃないかと思うくらいに心臓の鼓動が大きくなり、顔面は平熱とは思えないほどに熱くなっている。


 そこで、僕は初めての恋をしたのだと悟った。

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