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僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?  作者: 釈 余白(しやく)
僕が一目惚れした美少女転校生はサキュバスなのか!?【本編】
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マネージャーはトラブルメーカー?

 毎日同じメニューを繰り返す。これは食事の事ではなく練習の事だ。同じことを繰り返すことは一見つまらなそうで飽きてしまうかもしれないけど、ここで積み重ねたことが肉体と精神を鍛え、自分たちの自信につながることになる。


 野球部の練習は、前半に基礎練習を行い後半に実戦練習と前後半を明確に分けている。もちろんその間にきっちりと休憩を挟み、練習中はダラダラしないようメリハリをつけることを目的とした構成なのだ。


 その前半練習で準備運動とストレッチ、ランニングをこなした僕達は現在休憩中だった。大体このあたりで顧問の真弓先生がやってくる。


 原則として、ボールを使う練習には顧問の立ち合いが必要なのだ。これは他の学校含め年間に少なくない数の事故があり、確実な判断と迅速な対応で大事に至らぬよう管理するためとのことである。


 その顧問を待っている休憩中に木戸が口を開いた。


「なあ、今年は一年生があまり入らなかったからよ、やっぱマネージャー入れね?」


 現在、野球部にはマネージャーがいないため、当番制でお茶の用意や用具の不足破損チェック等を行っている。ほかにも投球、バッティングフォームや連携プレイのビデオ撮影をしてミーティング時にみんなで確認をすることもある。


「ベンチ入り十八人のうち三年生四人はまあ確定として、残りを二年生で埋められるか?

 二年は今十人だけど大会に向けてガチでやってるのが六人くらいだからな」


「結局入部した一年生は八人で、そのうち真剣にやろうってのが五人か。

 意外に少なかったな」


 僕は木戸に答えてから、改めてその少なさに危機感を感じた。このままだと夏で三年生が引退した後、ベンチ入りすら埋められなくなるかもしれない。


「まあ次の夏季大会はいいとしてもその後は問題かもなあ。

 マネージャーいた方が集中しやすくなるし、俺はいた方がいいと思うよ」


 どうやらチビベンも賛成のようだ。他にも頷いている部員が数人いた。


 実は、僕がマネージャーを入れることに反対しているのだ。僕達が一年生だった去年は二年生の女子マネが二人いたが、秋の大会が終わった後に二年生部員数名とと女子マネ二人で色恋沙汰のごたごたがあり、結局先輩部員たちも女子マネ二人もやめることになってしまったのだ。


 それは部の存続にかかわるほどの大量離脱であり、残された少数の二年生と僕達一年生によって春の大会へ望むこととなった。そしてその結果は二回戦敗退という散々な結果に終わった。


「もうあんなことになるのは勘弁だ、男子マネならまあいいかな。

 もちろん野球の事がしっかりわかっていないとダメなのは当然としてさ」


「先輩たちはどう思います?」


 木戸が三年生に確認した。


「いやあ、俺らは主将に任せるよ」

「うんうん、もう木戸が主将なんだからさ、自分で決めていかないとな」


 大量退部事件後に残った三年生は去年のレギュラーではなかったが、野球が好きでプレイできれば十分ということで残ってくれた貴重な部員だ。なんだかんだ言っても一年生よりは頼りになる。


「よおカズ、先輩もこう言ってるしよ、引き続き部員募集するのと一緒にマネージャー募集もしようや」


 僕が悩んだ素振りをしているとほかの部員から賛成との声が次々に上がり、反対しているのは僕くらいになってしまった。


「まあ仕方ないな、少ない部員が練習に参加できない時間があるのももったいないし。

 その代り男女問わず、野球知識優先が絶対の条件だからな」


「そこは俺も重視したいと思ってるから心配するなよ」


 木戸は普段は女たらしで口の達者なチャラいやつだが、野球が絡むことにはクソ真面目に取り組む男なので問題ないだろう。


 僕が心配しているのは、女子マネが入ったことで浮ついたりするような部員が現れないかということなのだ。


 そんな話をしているうちにようやく真弓先生がやってきた。


「はあい、お待たせ、遅くなっちゃったわね。

 休憩十分なら後半始めましょうか」


 今日はノック禁止なため、ネットへのティーバッティングと内外野連携を中心に行うと木戸が説明した。僕と一年生の木尾はブルペンへ向かい投げ込みをすることにした。


「チビベン、二人とキャッチボールしていてくれ、俺は真弓ちゃんと話してくるわ」


 木戸がそういって真弓先生へ駆け寄る。おそらくマネージャー募集の話だろう。


「よーし、やっかー」


 僕と木尾はチビベンへ向かって交互にボールを投げて木戸を待った。しかし僕は何となく気になったので木戸と真弓先生が話しているところへ行くことにした。


「チビベン、木尾の球を受けててくれよ、ちょっと向こうを見に行ってくる」


 そう言ってから僕は木戸のいる方へ走って行った。


「木戸、マネージャーの件か? どうなった?」


「おう、それはOKってことで部員募集ポスターに追記していいってさ。

 ハカセにまた作ってもらおうぜ」


 ハカセと言うのは同じ二年生の佐戸部博士の事だ。本当はヒロシなのだが、木戸が素で読み間違えたことからそのまま定着してしまった。


「というよりポスターとかはハカセしか作れないじゃん。

 なんでパソコンなんて使えるんだろうなあ、僕なんてスマホだってよくわかってないまま使ってるのになあ」


「スマホは女の子とのやり取りに必須だからよ、俺は頑張って覚えたぜ。

 でも情報の授業はパソコン室だから寝られなくて嫌いだわ」


「ちょっと木戸君、それが仮にも教師の前で堂々と言う台詞?

 だいたい今日だって思いっきり寝てたじゃないの」


「まあまあそう目くじら立てないでくれよ。

 さっきは真弓ちゃんの母性に負けて、つい気持ちが安らいじゃったんだよ」


「よく言うわ、明日また寝たらこの先ずっと椅子無しで受けてもらうわよ。

 昔だったら教科書の角で引っぱたいてやったのに、今は体罰だなんだってうるさいのよね」


「教科書の角じゃなくておっぱいで殴ってくれればいいのに」


 まったくこの男は…… そう思った矢先に真弓先生の手が木戸へ延び、右手でほっぺたをつまんで引っ張っていた。


「いででででええええ、まゆみひゃん、ごへんなさひ。

 たひばちゅはいけなひおおおお」


「まったくこのマセガキったら、お母さんへ言いつけちゃうからね。

 お父さんはあんなに真面目なのに何で君はそうなのよ」


「おーいて、親父も店に出てるときじゃなきゃひでえもんだぜ。

 下ネタとか平気で言うからしょっちゅう母ちゃんに引っぱたかれてら」


「えー、そうなの、ちょっとがっかりかもー」


 いい加減止めないとこの掛け合い漫才がいつまで続くかわからない。


「木戸、ピッチングやろうぜ、夫婦漫才はもう終わりにしろよ」


「そうだな、お前の調子も心配なんだった、よし、急ぐぞ」


 なんだかついでというか適当な返事だが、木戸なりに気を使ってくれているのだろう。僕はこいつのこういうところが偉いと思うし、ただ軽いだけの野球バカではないことを知っている。


「誰が夫婦よ! そんなこと言うと吉田君もほっぺたつねっちゃうわよ!」


 僕は手と顔を同時に横に振り丁重にお断りした。しかしこの二人が仲がいいのは間違いなく、一部の生徒からは嫉妬めいた話を聞くこともある。


 僕と木戸はブルペンへ向かって歩き始め、それと同時に木戸がまた余計なことを口走る。


「もし真弓ちゃんが嫁さんだったらうちの店の酒が知らんまに無くなっちゃうぜ」


「ちょっと木戸君! 今なんて言ったの!」


 真弓先生が後ろで大声を上げた。それを聞いた僕達は笑いながら肩をすくめ走り始めた。


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