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第七話:シリアスそろそろ終わろうよ!!



「純、戻りましょう?触れられなければ、同じ空間にはいられるでしょう?ね?」


芽のその一言で戻ることを決めた僕は、思い足取りでゆっくりと薄い浅葱色の校舎へ向かってゆく。その両隣を護るように固める芽と桜井。豹変さえしていなければ昌吾はとてもいい仲間なのだ・・・と、思いたい。


「純、なんでキング・・・新のことを嫌ってるんや??」


本当に恐る恐るといった感じで問いてくる昌吾に芽が睨みを効かすが“大丈夫です”と一言言うと、引いていった。


「ごめんなさい、まだ詳しいことは言えないんです。彼が僕の秘密・・・トラウマを刺激してしまったからという事だけしか教えられないんです」


昌吾は小さく呻いてから“そうなんか・・・”とそれ以上追求することはなくなった。



校舎まではまだ遠い。

無言の道中というのもなかなか悲しいですね。






・・・秘密なんてなければよかったのに。





 ◇


無駄に豪華な扉を開けようと一歩前に出ようとすると両脇の二人がそれを止めた。


「ちょっと待ってね♪」

「多分おもろいもんが見れるぞ」


にやりと意地の悪い笑みを浮かべる二人に苦笑。扉から少しだけ身を引くと、昌吾が小さく扉を開けてからそっと中に入っていく。多分滅茶苦茶質のいいこの扉はちょっとやそっとじゃ音を立てない。なのに昌吾はわざと扉を蹴って音を立てて入ってゆく。


「純!!!!」


新の声。それと桜井の“ぐえっ”という苦しそうな声。芽は閉まった扉を少しだけ開けて手招きをするので、寄って見に行く。


「じゅん、純純!!!ごめんっごめんな本当に!!俺が悪かった、本当に悪いと思ってんだ!原因は分からないけど俺の所為なんだよな!本当にごめん!!直すからっ全部直すから、俺のダメなとこ全部言ってくれよぉ!!!じゅんーっ」


ところどころに昌吾の“おいっ”とか“新、俺や俺!!”とか言う声が挟まっているが、彼は全く気にしない・・・じゃない気がつかない。

しがみ付いてちょっと泣きながら頬をぐりぐりと押し付けるその姿は・・・なんていうかちょっと幼い。


「ね、おかしいでしょ?」


見入っていた僕の隣で芽がクスクスと笑う。小さく頷くとまた彼女は楽しそうに笑う。

普段の凛とした態度とは全然違う彼に戸惑うばかりだった僕だけど・・・成る程、確かに面白い。


「こーなるとね、羽交い絞めにしてビンタするまで正気に戻らないのよ♪」


想像するとそれもまた笑える。きっと数人掛かりで抑えてるんでしょうね。


「ね、あなたの秘密を知っているのはきっと私だけなのよね。でも、キングとの間に何があったかは知らないの。あぁ、それは教えてくれるまで待つわよ?」


にこりと笑って後ろ手にそっと扉を閉める。

頬を両手でそっと包み込まれて上を向かされる。でもそれは優しい強制で、決して苦ではない。目があった彼女は優しい表情で微笑んでいた。


「これだけは言えるわ。ここにいる全員は貴方が大好きよ。愛の形や表現はそれぞれ違っても、貴方を護りたいという気持ちは皆一緒よ」


きゅっと優しく抱きしめられてぽんぽんと背中を軽く叩かれる。少し涙が出そうになったけど、ぐっと我慢した。伝えなければならないことがある。


「芽、ありがとう。僕・・・行って来ます」


ニッコリと・・・うまく笑えてるかは分からないけど、僕の出来る限りの笑顔で。






新とは会いたくなかった。


会って、向き合って、もし彼が思い出して・・・また(・・)嫌われたらと思うと、怖くてたまらなかった。



だけど、会わないといけないんですね。


思い出して嫌うような人じゃないって忘れていた。ただ目の前の恐怖に怯えるだけだった。

あんな人が・・・そんなヒドイことするはずないじゃないですか!!




勢いよく扉を開けて教室へと入ってゆく。








「新!!こっちですよ」



キチンと謝ろう。今まで避けていてゴメンなさい、と。





「・・・じゅ、ん?」


腕に抱いていた昌吾と突然現れた僕とを何度か見比べてはっと意識が覚醒した様子。


「しょ、昌吾!?いつの間にっ」

「いや(はな)っからおったから・・・」


抵抗し続けた昌吾は何処となくぐったりとしていて、“はよ放してくれや・・・”との望んだ。そっと彼を解放してから僕と向き合う新。


「純・・・その・・・だ、大丈夫か?」


心配そうな瞳。というか彼も怖いのだと思う。僕に、拒絶されるのが。

僕だって怖い。だけど、乗り越えないと・・・この学園での安楽はきっと訪れない気がする。


口の端を無理矢理上げて笑顔を作る。きっと凄くブサイクな顔だっただろう。



「新」


口から出たのは彼の名前。





「僕、やっぱりまだダメみたいです」



意識が遠のいてくのを感じながら地面にキスした。














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